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第1章
11 ティアとリエル
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次に意識が戻った時それなりに大きな町が見える丘の上の草原に立っていた。
「らっしゃい、らっしゃい!」
街へ入ると景気のいい掛け声が聞こえてくる。
「ここは鉄鋼の街ハンフルク、近郊でとれる石炭と鉄鉱石で
魔王軍と戦うための武器防具を生産する一大拠点だ。」
リエルはティアに自慢げにそう語る。
「ここではな最近になって石墨を輸入して、鉄の強化版ともいえる
鋼鉄も生産しているんだ。」
「4大天使の中で我、ウリエルは炎をつかさどる。こいつらは我の敬虔な
信徒というわけだ。」
「すごいですねー。私の住んでいた魔界の村は木製の鍬しかなくて
お金持ちの魔族は鍬の先に鉄の刃を付けて耕していたのですが
それが、うらやましくて仕方なかったです。」
ティアは目をまん丸くして鍛冶屋の様子を穴があくほど凝視していた。
「ふむ、だが大量の鋼や鉄を作るには設備が足りていないな。」
「魔王軍が迫っているのに、何を呑気にしているのだ。」
リエルはよほど魔王軍のことが気になるらしく、
不安を抱えているようだ。
「魔王様はそんなに悪い人ではないですよ。もともとは吟遊詩人で
歌と踊りでMPを回復させる組織を作ったのが、魔王軍の
始まりですから。MPは魔族にとっての食糧ですし。」
「いや、この世界は2000年以上、王朝が新興の宗教の反乱で
破綻し、戦国時代になることが幾度となく起こっている。
見過ごすわけにはいかないのだ。」
「それに魔族を殺したコアは人間に移植すれば魔法を使えるようになるのだ。」
ティアは悲しそうに言った。
「魔族死んでしまいますよね。」
「それがどうした。悪魔だぞ。コア、人間でいうところの肝臓は
魔力を操作するために重要、殺してでも大量に入手しなければ
天界も人間も困る。」
「フム、領主の館に行かねばならぬな。ここの領主は下級天使でな、
私が行けば、指示どおり行動するだろう。」
ティアとリエルは小高い丘の上にある領主の屋敷にやってきた。
「カマエルよ。我である。門を開けよ。」
「そこの兵士、人間か。」
リエルは虫でも見るような眼で兵士を睥睨すると
領主を呼びつけるように言った。
「なんだ、貴様は。ブランデンブール公を呼びつけるなど
命だけで済むと思うなよ。」
兵士は職務に忠実らしくリエルの前に立ちはだかる。
リエルは兵士の頭をつかむと、魔力を凝縮させ、太陽のような
灼熱の炎を生み出した。
兵士の頭は燃えることもなく一瞬で気化して消滅した。
「我、ウリエルに逆らった罪、地獄で贖うと良い。」
「ううゎぁぁぁ、」
もう一人の門番が必死の形相で領主のもとへ走って行った。
領主に殺されるよりも、リエルのほうが怖かったようだ。
なぜか領主の寝室に通された私たちは大天使カマエルこと
ブランデンブール公爵と話していた。
「カマエルよ。鍛冶屋で石炭を燃やして鋼を作るのは良い。
だが貴様は効率というものを知らんのか。」
叱責するリエルに対し、ブランデンブール公はただ頭を下げ
真摯に聞いていた。
「いかようにもお命じください。」
「ウム、巨大な溶鉱炉を作りありったけの石炭をくべろ。
もはや役に立たない勇者など必要はない。
鋼鉄の剣と鋼鉄の鎧を作り、重装歩兵を作りだすのだ。」
「かしこまりました。」
そういうと、ブランデンブール公は人間を集め巨大な
溶鉱炉をいくつも作りだした。
それから2カ月ほどたったころ、
「魔王軍が毒を撒いている。」
「魔王軍が川に毒を入れた。」
という風説が流れていた。
街の周辺は濃い霧がかかり、白い洗濯物が乾くころには
真黒になるレベルだ。
呼吸困難で死ぬものが大量に出ており、
日に日に魔王軍への怒りと憎しみは募っていった。
川の魚は腹を見せて浮かんでおり、それを食べた物は
ひどい苦痛のもと死んでいった。
「どうだ、ティア。この状況を見てまだ魔王軍は悪くないとでも
言うつもりか。」
得意げにセラフであるウリエルは私が間違っていることを突き付けてきた。
「申し訳ありません。魔王軍が戦闘員でない一般の民衆を苦しめていることは
知りませんでした。同じ魔族として慙愧に堪えません。」
「フム、この近くに魔王軍の幹部、魔将軍ディアボロスの城塞があったな。
私が自ら赴いて消滅させてもよいのだが、単独では無理だろう。」
「ウリエル様、私に策がございます。」
ブランデンブール公、大天使カマエルが自信ありげに笑っていた。
「ホウ、人間をけしかけるか。」
「いえ、大地の下には井戸水のもととなる地下水脈がございます。
今人間は、魔王軍が川に毒を流したため、飲み水がなく
地下水を大量に汲み上げています。」
「魔将軍ディアボロスの城塞は強固、しかし相当な重量でございます。
このまま地下の水脈がなくなれば、大地が沈没し
城塞は崩れ去るでしょう。」
「また、あれだけの鉄の塊に押しつぶされれば、魔族とて
まず即死でしょう。」
リエルはカマエルを讃えるかのように、大きくうなづいた。
「そのために、魔王軍に鉄材を横流ししていたのですから。
もちろん、鋼 は渡しておりません。」
「大量の魔族の臓器が手に入るな。これは僥倖だ。」
そう言うとリエルとカマエルはにこやかに握手を交わしていた。
ティアもこの状況を見れば理解できるな。
「はい、魔王軍は悪です。野菜を食べているだけかと思っていましたが、
こんなことをするなんて、幻滅しました。」
「魔王は、歌と踊りでMPを回復させる仙人などではない、
悪魔の王なのだよ。」
私とリエル、ブランデンブール公の重装歩兵、重装騎兵は
魔王軍の城塞を検分するためにそこへ向かった。
だがそこにあったのは死屍累々たる残骸だった。
人間の兵士は嬉々として魔族の肝臓、魔力のコアを取り出し
回収していった。
私はまだ生きている魔族の悲鳴と撒き散らかされる青い血を見て
吐きそうだった。
また、多くの魔導師が生み出されるだろう。
そして勇者も。
「らっしゃい、らっしゃい!」
街へ入ると景気のいい掛け声が聞こえてくる。
「ここは鉄鋼の街ハンフルク、近郊でとれる石炭と鉄鉱石で
魔王軍と戦うための武器防具を生産する一大拠点だ。」
リエルはティアに自慢げにそう語る。
「ここではな最近になって石墨を輸入して、鉄の強化版ともいえる
鋼鉄も生産しているんだ。」
「4大天使の中で我、ウリエルは炎をつかさどる。こいつらは我の敬虔な
信徒というわけだ。」
「すごいですねー。私の住んでいた魔界の村は木製の鍬しかなくて
お金持ちの魔族は鍬の先に鉄の刃を付けて耕していたのですが
それが、うらやましくて仕方なかったです。」
ティアは目をまん丸くして鍛冶屋の様子を穴があくほど凝視していた。
「ふむ、だが大量の鋼や鉄を作るには設備が足りていないな。」
「魔王軍が迫っているのに、何を呑気にしているのだ。」
リエルはよほど魔王軍のことが気になるらしく、
不安を抱えているようだ。
「魔王様はそんなに悪い人ではないですよ。もともとは吟遊詩人で
歌と踊りでMPを回復させる組織を作ったのが、魔王軍の
始まりですから。MPは魔族にとっての食糧ですし。」
「いや、この世界は2000年以上、王朝が新興の宗教の反乱で
破綻し、戦国時代になることが幾度となく起こっている。
見過ごすわけにはいかないのだ。」
「それに魔族を殺したコアは人間に移植すれば魔法を使えるようになるのだ。」
ティアは悲しそうに言った。
「魔族死んでしまいますよね。」
「それがどうした。悪魔だぞ。コア、人間でいうところの肝臓は
魔力を操作するために重要、殺してでも大量に入手しなければ
天界も人間も困る。」
「フム、領主の館に行かねばならぬな。ここの領主は下級天使でな、
私が行けば、指示どおり行動するだろう。」
ティアとリエルは小高い丘の上にある領主の屋敷にやってきた。
「カマエルよ。我である。門を開けよ。」
「そこの兵士、人間か。」
リエルは虫でも見るような眼で兵士を睥睨すると
領主を呼びつけるように言った。
「なんだ、貴様は。ブランデンブール公を呼びつけるなど
命だけで済むと思うなよ。」
兵士は職務に忠実らしくリエルの前に立ちはだかる。
リエルは兵士の頭をつかむと、魔力を凝縮させ、太陽のような
灼熱の炎を生み出した。
兵士の頭は燃えることもなく一瞬で気化して消滅した。
「我、ウリエルに逆らった罪、地獄で贖うと良い。」
「ううゎぁぁぁ、」
もう一人の門番が必死の形相で領主のもとへ走って行った。
領主に殺されるよりも、リエルのほうが怖かったようだ。
なぜか領主の寝室に通された私たちは大天使カマエルこと
ブランデンブール公爵と話していた。
「カマエルよ。鍛冶屋で石炭を燃やして鋼を作るのは良い。
だが貴様は効率というものを知らんのか。」
叱責するリエルに対し、ブランデンブール公はただ頭を下げ
真摯に聞いていた。
「いかようにもお命じください。」
「ウム、巨大な溶鉱炉を作りありったけの石炭をくべろ。
もはや役に立たない勇者など必要はない。
鋼鉄の剣と鋼鉄の鎧を作り、重装歩兵を作りだすのだ。」
「かしこまりました。」
そういうと、ブランデンブール公は人間を集め巨大な
溶鉱炉をいくつも作りだした。
それから2カ月ほどたったころ、
「魔王軍が毒を撒いている。」
「魔王軍が川に毒を入れた。」
という風説が流れていた。
街の周辺は濃い霧がかかり、白い洗濯物が乾くころには
真黒になるレベルだ。
呼吸困難で死ぬものが大量に出ており、
日に日に魔王軍への怒りと憎しみは募っていった。
川の魚は腹を見せて浮かんでおり、それを食べた物は
ひどい苦痛のもと死んでいった。
「どうだ、ティア。この状況を見てまだ魔王軍は悪くないとでも
言うつもりか。」
得意げにセラフであるウリエルは私が間違っていることを突き付けてきた。
「申し訳ありません。魔王軍が戦闘員でない一般の民衆を苦しめていることは
知りませんでした。同じ魔族として慙愧に堪えません。」
「フム、この近くに魔王軍の幹部、魔将軍ディアボロスの城塞があったな。
私が自ら赴いて消滅させてもよいのだが、単独では無理だろう。」
「ウリエル様、私に策がございます。」
ブランデンブール公、大天使カマエルが自信ありげに笑っていた。
「ホウ、人間をけしかけるか。」
「いえ、大地の下には井戸水のもととなる地下水脈がございます。
今人間は、魔王軍が川に毒を流したため、飲み水がなく
地下水を大量に汲み上げています。」
「魔将軍ディアボロスの城塞は強固、しかし相当な重量でございます。
このまま地下の水脈がなくなれば、大地が沈没し
城塞は崩れ去るでしょう。」
「また、あれだけの鉄の塊に押しつぶされれば、魔族とて
まず即死でしょう。」
リエルはカマエルを讃えるかのように、大きくうなづいた。
「そのために、魔王軍に鉄材を横流ししていたのですから。
もちろん、鋼 は渡しておりません。」
「大量の魔族の臓器が手に入るな。これは僥倖だ。」
そう言うとリエルとカマエルはにこやかに握手を交わしていた。
ティアもこの状況を見れば理解できるな。
「はい、魔王軍は悪です。野菜を食べているだけかと思っていましたが、
こんなことをするなんて、幻滅しました。」
「魔王は、歌と踊りでMPを回復させる仙人などではない、
悪魔の王なのだよ。」
私とリエル、ブランデンブール公の重装歩兵、重装騎兵は
魔王軍の城塞を検分するためにそこへ向かった。
だがそこにあったのは死屍累々たる残骸だった。
人間の兵士は嬉々として魔族の肝臓、魔力のコアを取り出し
回収していった。
私はまだ生きている魔族の悲鳴と撒き散らかされる青い血を見て
吐きそうだった。
また、多くの魔導師が生み出されるだろう。
そして勇者も。
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