【完結】宙を舞うヒーローにときめいています

夏目若葉

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「音羽、今のめちゃくちゃ背の高いイケメンはどなた?」

 水のペットボトルをふたつ手にして戻ってきた宏美が、目をハートにしながら尋ねてくる。
 そうだった。初めて晴瑠を目にした女の子は、たいていこういう反応になるのを忘れていた。
 彼女は大学で仲良くなった友だちだから、私と晴瑠のことをあまり知らないのだ。

「中学からの同級生で……私がバレー部のマネージャーになるきっかけを作った人。今はVリーグのバレー選手
「あぁ! 前に音羽が話してた初恋の人だ!」

 宏美は私の説明に納得するようにうなずいた。
 軽い足取りで駆けていく晴瑠の姿を見送りつつ、彼女は私の隣に静かに腰をおろす。

「初恋、かぁ」
「違うの?」
「……そのとおりだよ。晴瑠は中学のときからバレーの天才だったもん」

 自分のことでもないのに、私は学生時代の彼の様子を自慢げに話し始めた。
 晴瑠がどんなにすごい逸材なのかをほかの人にもわかってほしくて、語りだしたら止まらなくなってしまう。

「高二のときに“春高”で準優勝したんだけど、そのあと全日本ユースのメンバーに選ばれたの。高三ではキャプテンだったし、インターハイで優勝した」

 “春高”とは“春の高校バレー 全日本バレーボール高等学校選手権大会”の通称で、毎年一月に全国から予選を勝ち抜いた高校が集まって試合が行われる。
 冬の春高、夏のインターハイ、秋の国体。これがバレーの三大大会だ。

 全日本ユースは全国で将来有望なトップレベルの選手で結成されるチームのことで、晴瑠が選ばれたと連絡が来たときには、バレー部全員で拍手喝さいをしてよろこんだ。

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