7 / 17
ウッシー。
しおりを挟むそして、迎えの飛行特化の移動用召喚獣、体長三メートル以上のテラツバメが即応科長の屋上へと到着し、立川駅徒歩15分の所にある関東庁即応科から、千葉の幕張貨物専IC中継地点へと向かった。
そして、中継地点上空へと到達した時点で、テラツバメのモフモフの胸毛に包まれていた即応科の管理官たち一行は、シートベルト兼クッション材になっていた胸毛から離され、上空数百メートルから自由落下した。
「ーーーー・・わあぁぁぁぁぁーー!......っ、うぅ....え、生きてますか?!私生きてますか?!」
「はい、大丈夫ですよー」
「.....っ...む」
一番最初に落ちて、シゲモチさんでクッション材を展開していた汐留は髪の毛が逆立って猫耳をたてている時雨を持ち上げ、回収し一拍した後、若干緑鱗で無い衝撃を吸収した玄道が落っこちてきた。
「あら、玄道さん。信用なりませんか?」
「....念にはなんとやら」
シンプルに高い所が苦手なだけだったのだが、汐留への信頼がないみたいになっていた。
「......っ、スゥ....で、状況は?」
最後に落ちてきた才亮は慣れた感じでシゲモチの上で受け身をとって、そのまま事案を初動認知した警察官の方へと向かった。
「木更津署の佐藤です!牧場から家畜の召喚獣が突然逃げ出して、今現在、無人貨物道路にて、ここ幕張へと北上してます。」
「生け取りの方針か」
対召喚獣武器で脳天を撃てばそれで済む話であるが、そうはせずに幕張中継地点で先回りしている辺り、待ち構えて捕獲するようだった。
「はい!原因究明のため、生け取りで行きます。」
「....妥当であるな」
水を飲んで落ち着いた玄道は、日本国の輸出産業の大きな柱の一つでもある家畜召喚獣の生産体制に、ヒビを入れる原因が顕在化しているため、天秤計算は正確だと理解した。
「作戦は?」
「....貨物道路の封鎖を上申してるのですが、国交省からの許可が滞ってまして...」
「時間は、持って数十分か...」
携帯画面に映る地図上で、加速しながら北上して来ている召喚獣の到着時間は24分であり、予測時刻はもっと早まりそうだった。
「...ここから責任は俺が取る....ん...ふっ...今から他の戦略へ舵を取るぞ」
「っ...了解しました!」
携帯から今一度、今回の召喚獣の風貌を一瞥し、髪型を整えながら汐留と話している時雨を見据え、才亮はニヤリと口角を上げた。
ーーーー京葉総合貨物運搬専用道路。
元来、ここは陸上での貨物運搬を担っていた貨物用召喚獣リクウビ(蛇型で全長数百メートルに及ぶ個体もいる、背中の逆鱗が線のように連なっている)専用の道路であり、貨物列車のような運用がされていた。
しかし、タービンとピストンの登場から、化石燃料を燃やしたエネルギーで稼働する自動紡績機などが登場する中で、大型貨物の運搬を担っていたリクウビは仕分け作業の短縮や、稼働時間の短さからそれらに置き換えられ、現在ではエネルギー導体を変化させ、道路から供給される電気で24時間365日稼働し続ける全自動貨物車専用の道路となっていた。
「よし..佐藤っ!分岐線をシャットアウトしろ!」
「はいっ!」
佐藤は才亮からの指示から猛進している召喚獣が通ったのを確認し、本線からの幕張中継地点まで分岐点を閉じた。
『...モォォヒヒィィィー!!!』
「...いやぁぁぁーっ!!」
どちらも前へ進むしかない中、完全に性欲に一途になっているウッシーは、赤いフェロモン液でビシャビシャになりながら踊り狂っている時雨に数メートルまで迫っていた。
そして、完璧なタイミングで才亮は合図を出した。
「....やれ、玄道。」
「了解.....ぬんっ!!!」
彼の合図を信じて、赤いフェロモン液でビシャビシャになりながら踊り狂っている時雨の前の地面に擬態し、緑鱗を全身に纏ったフルアーマー玄道は、ウッシーの重心に鱗の盾を据えて空へとぶちあげた。
『...ムヒィィっ?!』
フェロモンだくだくの番に後一歩で会えそうだったウッシーの視界は黄昏初めている空に切り替わった。
生まれてこの方、だだっ広い牧場でのんびり牧草食べたり、たまにミネラルたっぷりのおやつを食べて、だいたいその数日後に雌牛と交尾する平和な日常を過ごしていた、ウッシーは経験したことのないこの浮遊感に困惑していた。
『...む...ムォ...』
『.....自由になりたいか?』
ただ、それでも、突然牛舎に現れたあの人間から変な注射を打たれ、何十世代にもわたって押さえつけられてきた本能のままに、牧場の芝生よりも硬くとも真っ直ぐな道を思うのままに走った。
その爽快感は、いいものだったなぁ....
本来なら言葉にして考えられる筈のないウッシーは、走馬灯のように今日の自由を振り返り終えた、その時ウッシーのの位置エネルギーが頂点に達し、空中で静止した。
「.....捉えた。」
ーーーー.....シュンっ!
その針の穴を通すように瞬速の槍がウッシーの腹部に接着し、展開される糸に巻きつかれながら薄黄緑色のクッション材の元へと自由落下した。
そうして、ウッシーを捕獲した後、建設召喚獣と建設作業員による無人貨物道路の復旧整備が開始され、才亮と玄道は念の為、佐藤とともに牧場への事情聴取と調査の同行した。
また、汐留と武田だけになっている即応科棟へと戻る事となったのだが、主に一人だけが捕獲成功の代償を負い、そのせいで迎えに来たテラツバメさんは踵を返して帰ってしまった。
そのため、公共機関で立川まで帰らないといけなくなったため幕張駅へと行く道中、汐留が4回ほどシャワーを浴びた時雨の首元を匂っていた。
「....スンスン...全然変な匂いしますね」
汐留は顔色ひとつ変えずに、ありのまま嗅いで得た事実を伝えた。
「いやぁぁぁぁー!」
作戦成功後の現場収拾に手一杯だった作戦立案者である才亮は、時雨と汐留に帰還令を行って牧場へと向かってしまったため、彼女の悲痛の叫びは明日まで届く事はなかった。
「クゥさんも、そのせいで呼んでも出てきてくれませんしぃ!!モォォォー!」
「あら....少し、ウッシーさんが感染してますね。」
「いやぁぁーー!!」
(((...一体、なんの話をしてるんだ...)))
時刻は19時30分を回ったところで、時雨の取り乱し具合と汐留の会話内容から、周囲の人たちは変に興味を持っていた。
「まぁまぁ....お詫びかわかりませんが、私たちは明日全休ですし、才亮さんから焼肉優待券もらったので、美味しいお肉食べ行きましょ」
「っ....お肉...牛...やぁぁぁー!」
才亮から詫び品として貰い受けたアメは、時としてムチになるのであった。
ーーーーあとがきーーーー
玄道フルアーマーver
ドテツマグロ。
茨城沖でよくとれる鉄の強度を持つ鱗に覆われたマグロ。
進路上の対象がなんであれ貫通してでも通る。ただ、真っ直ぐにしか進めないため、放置罠の網で簡単に獲れる。ただ、群集化してると網ごと突破する
ウッシー(オス)
赤身が多く、筋肉質。しかし、家畜化されているため大人しい個体が殆ど。
ブランド化された家畜召喚獣であり、病気に強く餌もなんでも食べるため量産しやすく、古くから人々や召喚獣の腹を満たしていた。
ウッシー(メス)
体高はウッシーよりも大きく、尺度的には成人男性から見た八尺様くらいの高さ。
ただ、実際は首が上に少し伸びているためオスと体長はそこまで変わらないが、オスから見たら大きく見えている。
赤い液体について
雌牛のフェロモン、時雨をメス牛としてみて彼女のダンスを求愛行動だと思った雄牛は、バチばちに興奮して直進してきた。
0
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
