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イッカクウサギ
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時は遡ること、12時間前。
時間通りに出勤した才亮は即応科棟へと向かうと、時雨や汐留、玄道らが何やら携帯に映された映像を見て盛り上がっていた。
「・・ほら、これフェイクじゃないですよー!」
「うーん....新種ですかね...」
「ウサギ型は種類が多いからな。」
「ん...何見てるんだ?」
時雨の後輩的な可愛さもあり、すっかり即応科の一員となったのを微笑ましく思いつつ、才亮は彼らが見ている映像を見ると、そこには学校の屋上の貯水塔の上で歪に成長した一角を持ったウサギ型召喚獣が月光浴をしている様子だった。
「ん....これと、これは同じ個体なのか?」
SNSでの比較動画へスワイプすると、才亮はツノの部分に違和感を覚えた。
「そうですね....これが撮られた場所は同じ八王子市ですし...どうなんでしょう」
「ソロ行動ですかね.....普通、草食系、それもウサギさんは群れで動くはずなんですが....変ですね。」
「レンズの問題もあるが....あるいは....っ...悪い、電話だ。」
それぞれの考察を交えていると、才亮のもとにタイムリーな電話が来た。
廊下へ出て電話にでると、相手は八王子市警察署からでSNSで話題になっているウサギ型召喚獣に関する調査協力要請を受けた。
その後、調査資料とSNSからの情報と件のウサギ型召喚獣の出所から考えるに、西八王子第一レベルアップ場に目星をつけた。
そして、玄道と武田は熊谷での事案処理に向かった事から、汐留と時雨どちらかを連れて行こうとしたが、汐留は夜の駐勤に、時雨は定時で帰らされる事となった。
「・・ウサギさん見たいですー!」
『んんぁー』
「一年目は夜勤だめなんですよ。」
「うぅ...わかりました。今回は引きます。」
「いや、来年度まで原則ダメですから....」
時雨とよくわからず一緒に講義しているクゥさんは汐留に帰らされてしまった。
「.....あら、才亮さん。」
プンスカしながら帰る時雨を見送った汐留は、丁度出発の準備ができた才亮に向き合った。
「おぅ、夜の駐勤いつもすまないな」
いつも鋭い目つきで捕縛対象の召喚獣や、容疑者に向かっているが、こういった時間の即応科のメンバーへ向ける労いの言葉は優しい声音をしていた。
「っ...いえ、まぁ...そこは、ありがとうでいいんですよ。」
管理官の服を着ていなければ派手な人と見られやすいが、こういった気配りや心の隙間を優しく埋める彼のこういった所はドキッとする事が多く、汐留は気恥ずかしそうにしながらも笑顔で応対した。
「ふっ....そうだな。ありがとな。」
そして、なんかいい雰囲気になりそうな所だったが、汐留は早々に仮眠室へと行き、才亮がレベルアップ場へと行こうとしたその時、整備科の方から白い繋ぎをきた青年が走ってきた。
「才亮さぁぁぁん!...はぁ...はぁ...よかったぁ.....」
「ん、どうした?定時過ぎてるぞ」
整備科も男しかいないという点以外ではホワイトな職場であり、定時過ぎての仕事の話は珍しかった。
「その、修理頼まれた携帯槍今週一杯かかりそうで....それを伝えに」
「ん、わかった。向かわないとだから、じゃ...」
「ちょっ...その、代わりのもので科長が作ったものなんですが...試作品で...副作....っ」
『....プラプゥー!』
「おう、サンキュ。じゃあな」
「あっ...ちょ....」
駆け足で受け取った才亮は、時間通りに迎えに来てくれた陸上移動用のラプトル型召喚獣に乗って颯爽と駆けてしまった。
「あぁ...行っちゃった....まぁ...才亮さんなら大丈夫か...」
諸々説明する必要があったが、これまで科長が作った装備を真っ先に試用してきた彼なら...と要らぬ心配を喉に飲み込んだ。
八王子警察署へと寄り、西八王子第一レベルアップ場の責任者と改めて話をしてパスキーを取得した頃には、時刻は10時を回っており、目撃時間がピーク時に設定した予定通りの12時にレベルアップ場に到着した。
初めの1時間は大した変化はなく、ただの夜の散歩みたいになっていた。
(なんか、変態みたいだな....)
などと、深夜の空気に揺らされていると、一直線にこっちに向かってくる足音が聞こえた。
「....ん....あ?」
「はぁ...はぁ...っ..」
腕に巻き付いたイッタンモンメンを少し緩めて戦闘体制を取ったが、その正体は学生くらいの歳のスポーツマンだかインテリだかわからないメガネ坊主だった。
「おい...お前...」
「北東に...やばいウサギが!!」
「...っ!」
互いに不審者であるのはともかくとして、坊主から出た単語は目当てのものだった。
そして、即座に坊主はレベルアップ場の警備員の方へと向かわせ、彼の証言を信じて北東へ向かうと一角のツノを持ったタンカクウサギが、他の個体らを一斉に学生二人とダウンした召喚獣らへ熱殺蜂球が如く突撃させようとしている場面だった。
センサーとして張らせていた糸をそこへ展開させて、突撃したタンカクウサギらを糸でぐるぐる巻きにして無力化した。
『ーーーーーっ!』
枯れ木の上で、その様子を見下ろしているウサギは人間には聞こえない鳴き声を出して、茂みに待機していた他の個体を呼び出した。
「っ...やろう...コロニー化してたか....」
一人のイッカクの角を持った長の号令で、上下左右と各々攻撃が被らない立ち位置で整列したその光景は、群れという枠から外れ文明の黎明に迫っていた。
「....とりあえず、これそいつらに飲ませとけ」
「...は、はい!」
持っていた回復薬をまだ動けそうな木刀を持ったガタイの良い学生へ渡した。
「っし...お前らは俺の後ろに、そいつらは意識を取り戻しても、寝かせてろ」
才亮はポケットから出した黒いグローブをハメながら、ジリジリと間合いを詰めてきているウサギどもを見据え、短く指示を出した。
「はい!」
「....スゥ...」
ガタイの良い学生がとりあえず応対は出来るくらいは正気なのを確認した才亮は10体以上のウサギ型召喚獣タンカクウサギを前にして、ボクサーのファイティングポーズを取った。
『『『....キィィ!!』』』
「....ツゥ!」
先手に走った三体のウサギを最小限の動きで両手で向かって掴み、残った一体をサンドイッチにして、糸を巻いた。
『『....シィー!!』』
「...っ!...スゥ...」
茂みの木の上から加速して不意打ち狙ったウサギ2体を手でキャッチし、糸で巻いて無力化した。
『『『....ッ!』』』
「.....」
『....ンイィ!!』
そして、地面から飛び出てきた3体のウサギは才亮らをスルーして空中に舞い、後ろ足を斜めにこちらに向け、位置エネルギーがピークになったところで枯れ木の頂上で鎮座していた長のウサギは彼らの間を縫うように突進を始めた。
他のウサギたちの後ろ足で長のウサギの後ろ足の踏み込みをサポートし、さらに加速する。
その反作用で、サポートしたウサギたちの後ろ足は大臀筋あたりにめり込み、場外へと吹き飛ばされた。
「.....シッ!」
『.......ンイィィ!!』
ーーーーーーー.....
替えのきくウサギたちを犠牲に加速した長のウサギは、最も自信のあるそのイッカク角を一点に、才亮の右拳と衝突した。
『....ッ?!』
しかし、衝突音は聞こえず、長ウサギはどちらにもダメージが入っていないのに困惑している中、才亮は優しく糸で包んで無力化した。
「....スゥ...副作用なんざ、ないじゃねぇか...」
長を捕まえられて恐れおののいた他のタンカクウサギらは後退りして散っていく中、才亮は携帯槍の代用として渡された試作品らしい黒グローブをワシワシさせて、謎に脅かされたのを愚痴っていると、グローブの色が白黒に点滅しながら電池が切れる前の音が鳴り始めた。
ーーーー....ぴぴっ...ぴ...ぴーっ
「....ん....っ!?」
ーーーーーーーバァァァぁんっ!!!
寸前で脱いで空の上に投げた黒グローブは、月が綺麗に浮かぶ夜空に花火を灯し、才亮の夜のお散歩は終わりを告げた。
「....ま、マジかよ...」
時間通りに出勤した才亮は即応科棟へと向かうと、時雨や汐留、玄道らが何やら携帯に映された映像を見て盛り上がっていた。
「・・ほら、これフェイクじゃないですよー!」
「うーん....新種ですかね...」
「ウサギ型は種類が多いからな。」
「ん...何見てるんだ?」
時雨の後輩的な可愛さもあり、すっかり即応科の一員となったのを微笑ましく思いつつ、才亮は彼らが見ている映像を見ると、そこには学校の屋上の貯水塔の上で歪に成長した一角を持ったウサギ型召喚獣が月光浴をしている様子だった。
「ん....これと、これは同じ個体なのか?」
SNSでの比較動画へスワイプすると、才亮はツノの部分に違和感を覚えた。
「そうですね....これが撮られた場所は同じ八王子市ですし...どうなんでしょう」
「ソロ行動ですかね.....普通、草食系、それもウサギさんは群れで動くはずなんですが....変ですね。」
「レンズの問題もあるが....あるいは....っ...悪い、電話だ。」
それぞれの考察を交えていると、才亮のもとにタイムリーな電話が来た。
廊下へ出て電話にでると、相手は八王子市警察署からでSNSで話題になっているウサギ型召喚獣に関する調査協力要請を受けた。
その後、調査資料とSNSからの情報と件のウサギ型召喚獣の出所から考えるに、西八王子第一レベルアップ場に目星をつけた。
そして、玄道と武田は熊谷での事案処理に向かった事から、汐留と時雨どちらかを連れて行こうとしたが、汐留は夜の駐勤に、時雨は定時で帰らされる事となった。
「・・ウサギさん見たいですー!」
『んんぁー』
「一年目は夜勤だめなんですよ。」
「うぅ...わかりました。今回は引きます。」
「いや、来年度まで原則ダメですから....」
時雨とよくわからず一緒に講義しているクゥさんは汐留に帰らされてしまった。
「.....あら、才亮さん。」
プンスカしながら帰る時雨を見送った汐留は、丁度出発の準備ができた才亮に向き合った。
「おぅ、夜の駐勤いつもすまないな」
いつも鋭い目つきで捕縛対象の召喚獣や、容疑者に向かっているが、こういった時間の即応科のメンバーへ向ける労いの言葉は優しい声音をしていた。
「っ...いえ、まぁ...そこは、ありがとうでいいんですよ。」
管理官の服を着ていなければ派手な人と見られやすいが、こういった気配りや心の隙間を優しく埋める彼のこういった所はドキッとする事が多く、汐留は気恥ずかしそうにしながらも笑顔で応対した。
「ふっ....そうだな。ありがとな。」
そして、なんかいい雰囲気になりそうな所だったが、汐留は早々に仮眠室へと行き、才亮がレベルアップ場へと行こうとしたその時、整備科の方から白い繋ぎをきた青年が走ってきた。
「才亮さぁぁぁん!...はぁ...はぁ...よかったぁ.....」
「ん、どうした?定時過ぎてるぞ」
整備科も男しかいないという点以外ではホワイトな職場であり、定時過ぎての仕事の話は珍しかった。
「その、修理頼まれた携帯槍今週一杯かかりそうで....それを伝えに」
「ん、わかった。向かわないとだから、じゃ...」
「ちょっ...その、代わりのもので科長が作ったものなんですが...試作品で...副作....っ」
『....プラプゥー!』
「おう、サンキュ。じゃあな」
「あっ...ちょ....」
駆け足で受け取った才亮は、時間通りに迎えに来てくれた陸上移動用のラプトル型召喚獣に乗って颯爽と駆けてしまった。
「あぁ...行っちゃった....まぁ...才亮さんなら大丈夫か...」
諸々説明する必要があったが、これまで科長が作った装備を真っ先に試用してきた彼なら...と要らぬ心配を喉に飲み込んだ。
八王子警察署へと寄り、西八王子第一レベルアップ場の責任者と改めて話をしてパスキーを取得した頃には、時刻は10時を回っており、目撃時間がピーク時に設定した予定通りの12時にレベルアップ場に到着した。
初めの1時間は大した変化はなく、ただの夜の散歩みたいになっていた。
(なんか、変態みたいだな....)
などと、深夜の空気に揺らされていると、一直線にこっちに向かってくる足音が聞こえた。
「....ん....あ?」
「はぁ...はぁ...っ..」
腕に巻き付いたイッタンモンメンを少し緩めて戦闘体制を取ったが、その正体は学生くらいの歳のスポーツマンだかインテリだかわからないメガネ坊主だった。
「おい...お前...」
「北東に...やばいウサギが!!」
「...っ!」
互いに不審者であるのはともかくとして、坊主から出た単語は目当てのものだった。
そして、即座に坊主はレベルアップ場の警備員の方へと向かわせ、彼の証言を信じて北東へ向かうと一角のツノを持ったタンカクウサギが、他の個体らを一斉に学生二人とダウンした召喚獣らへ熱殺蜂球が如く突撃させようとしている場面だった。
センサーとして張らせていた糸をそこへ展開させて、突撃したタンカクウサギらを糸でぐるぐる巻きにして無力化した。
『ーーーーーっ!』
枯れ木の上で、その様子を見下ろしているウサギは人間には聞こえない鳴き声を出して、茂みに待機していた他の個体を呼び出した。
「っ...やろう...コロニー化してたか....」
一人のイッカクの角を持った長の号令で、上下左右と各々攻撃が被らない立ち位置で整列したその光景は、群れという枠から外れ文明の黎明に迫っていた。
「....とりあえず、これそいつらに飲ませとけ」
「...は、はい!」
持っていた回復薬をまだ動けそうな木刀を持ったガタイの良い学生へ渡した。
「っし...お前らは俺の後ろに、そいつらは意識を取り戻しても、寝かせてろ」
才亮はポケットから出した黒いグローブをハメながら、ジリジリと間合いを詰めてきているウサギどもを見据え、短く指示を出した。
「はい!」
「....スゥ...」
ガタイの良い学生がとりあえず応対は出来るくらいは正気なのを確認した才亮は10体以上のウサギ型召喚獣タンカクウサギを前にして、ボクサーのファイティングポーズを取った。
『『『....キィィ!!』』』
「....ツゥ!」
先手に走った三体のウサギを最小限の動きで両手で向かって掴み、残った一体をサンドイッチにして、糸を巻いた。
『『....シィー!!』』
「...っ!...スゥ...」
茂みの木の上から加速して不意打ち狙ったウサギ2体を手でキャッチし、糸で巻いて無力化した。
『『『....ッ!』』』
「.....」
『....ンイィ!!』
そして、地面から飛び出てきた3体のウサギは才亮らをスルーして空中に舞い、後ろ足を斜めにこちらに向け、位置エネルギーがピークになったところで枯れ木の頂上で鎮座していた長のウサギは彼らの間を縫うように突進を始めた。
他のウサギたちの後ろ足で長のウサギの後ろ足の踏み込みをサポートし、さらに加速する。
その反作用で、サポートしたウサギたちの後ろ足は大臀筋あたりにめり込み、場外へと吹き飛ばされた。
「.....シッ!」
『.......ンイィィ!!』
ーーーーーーー.....
替えのきくウサギたちを犠牲に加速した長のウサギは、最も自信のあるそのイッカク角を一点に、才亮の右拳と衝突した。
『....ッ?!』
しかし、衝突音は聞こえず、長ウサギはどちらにもダメージが入っていないのに困惑している中、才亮は優しく糸で包んで無力化した。
「....スゥ...副作用なんざ、ないじゃねぇか...」
長を捕まえられて恐れおののいた他のタンカクウサギらは後退りして散っていく中、才亮は携帯槍の代用として渡された試作品らしい黒グローブをワシワシさせて、謎に脅かされたのを愚痴っていると、グローブの色が白黒に点滅しながら電池が切れる前の音が鳴り始めた。
ーーーー....ぴぴっ...ぴ...ぴーっ
「....ん....っ!?」
ーーーーーーーバァァァぁんっ!!!
寸前で脱いで空の上に投げた黒グローブは、月が綺麗に浮かぶ夜空に花火を灯し、才亮の夜のお散歩は終わりを告げた。
「....ま、マジかよ...」
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