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本編

40. 殺戮者

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「…全ての理よ、正しき道を辿る未来を新たに創り出し、その未来を今この瞬間、実現せよ。〈未来改変〉」

«…クル?クルルルル»

「これで神の命令からお前達は外れた。さあ、元ある本来の場所へ戻ろう」

«クルゥ»

『なんと!あれも時間の魔法の1種なのか!』

『…違うよ…あれは…ただの人間は取得も無理だし、そもそも使えない…よ』

『能力?ってことは、スキルでもねぇのか?』

『能力は、私やクロノス、カオスとかは持ってるけど…他はまだ持っていないんじゃないかな?
彼が使ったのは、〈未来改変〉
この能力は…私の能力よ』

『てことは…輪廻の能力も持ってるってことか?』

「輪廻?違うな、俺がしたのは近い未来を破壊し、そこに新しい未来を埋め込んだだけだ」

『…力技で未来を変えるなんて聞いたことない』

「出来るんだから仕方ないだろ」

『むぅ、能力の意味がなくなる』

「…その能力ってのが何かは分からねぇが、違う所といえばそうだな…その能力は、未来を変える能力ではないってところだろ。
その能力は、同じ時を過ごす別の世界…つまり、パラレルワールドを創り出す能力だ。結局、ここでその能力を使って俺と同じように神獣を助けても、そこから生まれたパラレルワールドでは別の未来が起きている」

『…自分の理想を見たいが為に崩壊する世界を創り出す呪われた能力、それくらい私も分かってるわよ。私が…いや、私達がこの能力を使ったのは過去未来含めて1度だけ、その時は私達の感情が能力を暴走させたからか、運良く未来だけが変わり、パラレルワールドは作られなかった』

「…さて、あいつはどこに行ったんだろうな。〈全能:千里眼〉」

すぅぅ…

「あのクソ野郎、やりやがったな」

『神界を破壊するではない』

「うるせぇ、クソ野郎共が。そもそもなぁ…神の王であるてめぇがきちんと部下を見てねぇからこれが起きたんだろうが!」

『なっ!神の王になんという口を!』

「あ?てめぇは黙ってろ、時の神のなりぞこないが」

『〈輪管者〉〈時の神〉〈創造神〉〈破壊神〉を入手しました。
超越者の称号が〈超越王〉に進化しました』

「あいつを殺したら次はてめぇらにも不始末の罰を付ける。覚えておけよ」

『むぅ…事実だから何も言い返せん』

『フフフ…貴方はこの方達を攻撃…え?』

「…殺す」

『〈狂気〉が付与されました。
相手に〈恐怖〉が付与されました』

「お前だけは…殺す!俺の命と引き換えにしてでも殺してやる!〈時間:消失した永遠〉」

『『『なっ!待て、それは…』』』

「お前は…自分の過ちをまだ理解していないようだ」

『何故…何故人間の身でそんな力を…』

「さあ、世界がふっかつ復活する時、
お前という存在はこの世界からは魂ごと消え去る。だが、それだけじゃあ生ぬるい…四肢をもぎ落とし、その脳に
永遠の恐怖を与え、精神が狂ってもまた戻る呪いを掛け、地獄の最下層に送り込んでやる。
〈呪詛:永遠の生命〉〈破壊:崩壊する肉体〉〈呪詛:悪魔の幻影〉〈地獄門:指定:最下層〉」

…うん、ちょっとはスッキリ出来た。熊さんたちは取り敢えず元いた所に戻して…あ、種族も戻しておこうか。さて、もう終わりの時間かな。

「〈時間:消えぬ絆の想い〉」

『…む?先程…時間を消失させたはず…』

「…あいつは、もう二度とこちらへ戻ってくることはない。肉体が崩壊して魂がこちらへ来ようとしても、あいつの魂を地獄に鎖で幽閉した」

『元々、あの魂は消す存在。復讐ならば私は許すよ』

「復讐…いや、復讐ではない…かな。例え、俺の種族が原因でこの事態が起きていたとしても…俺の元いた場所に居る彼らを助けない道は多分なかっただろうな」

『この後はどうするの?』

「勿論、お前らに罰を与えるんだが?そうだな…破壊神は協力してくれたから許すとして…残りの奴らはどうするか。
いや、輪管者は魂以外に干渉はダメとかあったっけ?」

『うーん、基本的には?話したりは出来るかな。
でも、直接手を加えることは出来ない。
輪管者は、罪人であってもそれが魂なら正しい道標を創り出す存在だから、私は魂の道標以外は干渉出来ない。
例外はあるけど』

「なら…この2人だけか。うーん、どういう罰にしようかな…そうだ、確か…原初神ってさ。不器用だったよね」

『ん?原初神様は不器用じゃないぞ?人間を作れるほど繊細なんだから』

『う、うむ。その通りだ』

『馬鹿言ってないで素直に認めなよ。人間を作る時、貴方は設計図通りに力を加えただけじゃんか。
設計図自体は私が作ったし、そもそもそれですら何度も失敗したんだから』

「うーん、そうだな…なら、神界の…この城で良いか。魔法を使わずに隅々まで掃除をしようか。勿論、何か壊したら手作業で新しい物を作ってもらうよ」

『…魔法は良いか?』

「…〈呪詛:封印〉…これで、力は使えなくなったよ。終わったら解除してあげる。
時の神の方はそうだなぁ…〈創造:服〉
これ着て神全員に挨拶回りしてきて?」

『なっ!こ、こんな服でか!?』

「…頑張れ!」

『如月君、この後君はどうするんだい?』

「そうだね…あの大陸の一部を貰って、誰にも干渉されずに静かに隠居生活でも送るよ。こんな種族になってしまった以上、もう帰れないから」

それに…から。

「…じゃあ、いつかまた会おう。輪管者」

『…』
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