27 / 68
第二章 ナミュール城主編
第2話 ミシェルとの再会
しおりを挟む
俺たちがナミュール城についてからしばらく経った。毎日のように鬼教官ナルディアの訓練がおこなわれており、その一方でハンゾウたちも謀略部隊としての立ち回りをしっかりと部下に教え込んでいる。それぞれが果たすべきことを果たしており、順調な滑り出しといえよう。俺がムネノリと共に執務室で事務仕事を片付けていると、扉が勢いよく開けられた。ノックもしないで開ける無礼者は誰かと目を向けると、そこにはミシェルが立っていた。
「はーい、ジーク。久しぶりね。ねー聞いたわよ。あなた、ナルディアと結婚したんだって?」
いきなり核心を衝いてきた。俺はもうこの時点でミシェルのペースに巻き込まれていた。
「や、やあミシェル。久しぶりだね」
「もう、ちょっとは私のことを待ってくれてもいいのじゃなくて?国王から結婚したと聞いて驚いちゃったわよ。あとでナルディアにきっちり聞くことにするわ。それで、ナルディアはどこにいるの?」
ミシェルは妖艶な笑みを浮かべる。
「あ、ああ、いまは練兵場にいると思う」
「わかったわ。ありがと」
そういうとミシェルはスタスタと出ていった。嵐が過ぎ去ったかのように執務室は静まり返った。
「あの、先生・・・いまのは?」
「あ、ああ、あれはミシェルと言ってツイハーク王国の女王アスタリアの妹だ。この前の旅行で仲良くなってな」
「そういうことでしたか・・・にしても嵐のような方でしたね」
「まったくだ・・・何事もなければいいがな」
俺は大きくため息をつく。
ーーーーー
練兵場ではナルディアとキキョウが兵士の訓練をおこなっていた。
ナルディアは手に持つ旗をさっと右に振る。すると兵士たちは右へ走り始めた。
次に旗を左へ振る。兵士たちも左へと向きを変え、走り始める。
「そこっ、遅れておるではないかっ!」
方向転換についていき損ねた兵士に檄が飛ぶ。そんな中、ナルディア目がけて円月輪が飛んでくる。クルクルと回転しつつ、凄まじい勢いで迫る。
カーンッ
ナルディアはとっさに旗を捨て、片手に持つ槍で刃を弾く。甲高い金属と金属がぶつかる音が鳴り響いた。
「何者じゃ!余をナルディアと知ってのことか!」
ナルディアを注視している兵士やキキョウも突然の出来事に固唾を呑んで見守る。
「ええ、もちろん知ってのことよ」
そういいながらゆっくり歩いて現れたのはミシェルである。
「おぬし・・・来ておったのか。にしても趣味の悪い挨拶じゃの」
「あら、私のできる最高の挨拶よ?気に入らなかったかしら?」
「ふ、ふふふ・・・ミシェル、余はここで戦っても良いのじゃぞ?」
すっかりミシェルのペースに巻き込まれたナルディアは眉間に皺を寄せ、いますぐにでも怒りだしそうな状態である。
「ねえナルディア、あなた結婚したんですって?ここは素直におめでとうと言っておくわ」
自分から火種の原因をつくったミシェルはというと、ナルディアの殺気を意にも介さぬ様子で笑顔で結婚を祝福する。突然の祝言にナルディアはすっかり毒気を抜かれた。
「う、うむ。感謝する。おぬし・・・わざわざそれを言いに来たのか?」
「もちろんそうよ?ナルディアなら避けられるとわかって円月輪を投げたのよ」
ミシェルは手をフリフリとしながら当たり前でしょと笑う。
「そこまでわかっててやったのか・・・ふむ、まあよい」
もし避けられなかったらどうするつもりだったのか・・・。ナルディアはボソッとつぶやく。そんなナルディアを気遣う様子もなくミシェルは再び火種を投下する。
「あ、私、ジークの愛人でもいいのよ?」
「まったく・・・おぬしというやつは・・・」
ミシェルの軽口にナルディアはすっかり呆れていた。そして二人はすっかりいつも通りの調子に戻っていた。お互いにぷっと噴き出し、あはははと盛大に笑っていた。
「おぬしとゆっくり話していたいところじゃが、いまは見ての通り訓練中じゃ。終わったらゆっくり話そうではないか」
ナルディアは地面に落とした旗を再び手に持つ。
「ええ、それで構わないわ。またあとでね」
「うむっ」
ーーーーー
ミシェルは伝言通りにナミュール城へ来てみたものの、ジークとナルディアはまだ仕事中ですっかり暇を持て余していた。政治的な意味でも話すことは山積みなのだが、仕事を妨げるほどのものではない。しばらく城内を見て回ることにした。町の作り方も国によっていろいろあるようで、自国とも違えばサミュエル連邦で見てきた町並みとも違う。ミシェルは興味深く見て回り、時間を潰すのであった。
陽が傾き始めた頃、城へと向かう。城館に戻ると訓練を終えたナルディアが廊下を歩いていた。こちらの姿を捉えたようである。
「おお、ここにおったか。探したのだぞ」
「あら、悪いわね。暇だったからナミュールの町並みを見ていたのよ」
「ジークは執務室におるが、どうする?」
「うーん、そうね、先に面倒な話を片付けちゃいましょうか」
こうして二人はジークのいる執務室へ向かい、まもなく執務室に着いた。ナルディアがノックすることなく扉を開ける。
「お前らってほんとにお似合いだよな・・・」
ノックをせずに入ってくるという共通点を見て、俺は思わず声に出してしまった。
「うむっ、余とミシェルは友じゃからのう」
「ねえナルディア、きっと褒めてないわよ・・・」
ミシェルにだけは俺の呆れている感情が伝わったようだ。
「なんじゃ、そうであるかジークよ?」
「ああ、ミシェルは意味が分かったようだけどな」
むうとナルディアが拗ねる。ほんとにこういう素直なところは可愛いのだ。
「ジークはもうお仕事終わりかしら?ちょっと3人で話さない?」
俺と一緒に仕事をしているムネノリも察したのか進んで部屋を出ていく。どうやら大事な話があるようだ。仕事机から応接用の椅子に場所を移す。
「出ていった彼には少し申し訳ないことをしたわね」
「あまり他言したくない話があるんだろう?それなら仕方ないことだ」
ミシェルなりに気を遣ってくれているようだ。
「ええ、国王にも申し上げたけど、サミュエル連邦が動いたわ」
シリウスによる通貨供給量の調整によりベオルグ公国でなにが起こったのかを丁寧に説明してくれた。うちの情報網はサミュエル連邦のみを対象としていたので、この情報は初耳であった。とはいえ、ベオルグ公国の顛末に驚きはない。金の力がどれほど強大かということは俺もよく知っている。不正会計、粉飾決算といった世間を賑わす会計不祥事もいわば金のためにおこなわれているものである。
「そんなすぐに滅んだのか」
「ええ、おそらく間者か何かを紛れ込ませて扇動したとみて間違いないわね」
「それで流民が多く発生してツイハーク王国も困っているというわけか」
「そうよ。けど、セオドールっていううちの丞相が手を打ってくれたから特に問題はないわ」
なるほど、流民が近寄らないよう武力による威圧をしたわけか。良心の痛む話だが、国を守るためだから仕方ない。綺麗事を言えるような状況ではないのだ。
「もしもの話じゃが、サミュエル連邦が流民による弱体化を狙っていたとして、それが効果ないと知ったら次は何をするかのう」
懸念していたことをナルディアが口火を切る。
「そう、そこが問題なのよ」
ミシェルも我が意を得たりとばかりに身を乗り出す。
「私の推測なら、封鎖していた国境を開放して、行き場のない流民を取り込むんじゃないかって思うわ。その次に、軍を進めてベオルグ公国の各城を落として回るではないかしら?」
ミシェルの言うことはもっともだ。俺も同様の展開を思い描いていた。問題は、より巨大になったサミュエル連邦相手にツイハーク王国がどう立ち回るかという点にある。
「ツイハーク王国はどうするんだ?サミュエル連邦に対抗できる何かがあるのか?」
俺の質問にミシェルは苦い表情をしている。
「それがね、うちの国は戦いに向かないのよ・・・」
「「・・・・・・」」
俺とナルディアは言葉を失う。
「えっ、あ、まあ、得意不得意は仕方ないでしょ?」
ツイハーク王国の滅亡も時間の問題かもしれない。それを俺は強く理解した。
「それにほら、もしうちに攻めてきたら、出来る限りの抵抗はするつもりよ」
「はあ・・・」
俺は盛大にため息をつく。
「もう、ちょっと何よ。本当に弱いのだから仕方ないじゃない」
俺はツイハーク王国に対して何かをする義理はない。だが、ツイハーク王国を助けることがサミュエル連邦の力を削ぐことになるなら話は別である。ミシェルが俺たち夫婦の友人だからというのも多少はあるが・・・。
「なあミシェル、俺に一つ考えがあるんだが、聞いてみるか?」
ミシェルの目が今日一番の輝きを放つ。
「もちろんよ!ほんとっ頼りになるんだから。お願い、教えてちょうだい」
俺が対サミュエル連邦用に取っておいた秘策の一つを教えることにした。どんな地形でも有効かつ高威力の秘策である。ミシェルに説明すると、納得したようであった。
「驚いたわ。これならうちでも反撃することができるわ。少なくとも時間稼ぎにはなるわね」
「ああ、ただし使えるのは一度きりだ。相手がよほどのバカでない限り2度は通用しないだろう」
「もちろんわかっているわよ。いやー今日はここまで来てよかったわ。ほんとっありがとう。ねえ、もしもの時は二人を頼ってもいい?」
「ミシェルは余の友だからな。余をいつでも頼るがよい」
ナルディアが気持ちを代弁してくれたので、俺も頷いて賛意を示す。
「まあ嬉しい。そうならないといいけれど、いざという時は頼るわね。っくぅーなんか安心したらお腹が空いてきたわ」
ミシェルは背伸びしながら満足そうな表情を浮かべている。
「よし、それじゃご飯にしようか。ミシェルをもてなすためにご馳走を用意してくれていると思うぞ」
「それは楽しみね。おいしい食事は心の潤いよ♪」
こうして俺たちと食事を共にし、一泊したミシェルは翌日帰国の途に就くのであった。別れ際、ミシェルはとても物騒な一言を残していった。
「あ、そうそう、あなたたちの鍛えている部隊、よく訓練されているわね。私がナルディアに襲っても右往左往していないのだから大したものよ」
ナルディアを襲った!?
俺は初耳でびっくりしていたが、隣のナルディアは自慢げな態度である。一体何が起こったというのだろうか。まあ、聞いたところで物騒な話が飛んできそうだから、あえて触れないでおく。
「はーい、ジーク。久しぶりね。ねー聞いたわよ。あなた、ナルディアと結婚したんだって?」
いきなり核心を衝いてきた。俺はもうこの時点でミシェルのペースに巻き込まれていた。
「や、やあミシェル。久しぶりだね」
「もう、ちょっとは私のことを待ってくれてもいいのじゃなくて?国王から結婚したと聞いて驚いちゃったわよ。あとでナルディアにきっちり聞くことにするわ。それで、ナルディアはどこにいるの?」
ミシェルは妖艶な笑みを浮かべる。
「あ、ああ、いまは練兵場にいると思う」
「わかったわ。ありがと」
そういうとミシェルはスタスタと出ていった。嵐が過ぎ去ったかのように執務室は静まり返った。
「あの、先生・・・いまのは?」
「あ、ああ、あれはミシェルと言ってツイハーク王国の女王アスタリアの妹だ。この前の旅行で仲良くなってな」
「そういうことでしたか・・・にしても嵐のような方でしたね」
「まったくだ・・・何事もなければいいがな」
俺は大きくため息をつく。
ーーーーー
練兵場ではナルディアとキキョウが兵士の訓練をおこなっていた。
ナルディアは手に持つ旗をさっと右に振る。すると兵士たちは右へ走り始めた。
次に旗を左へ振る。兵士たちも左へと向きを変え、走り始める。
「そこっ、遅れておるではないかっ!」
方向転換についていき損ねた兵士に檄が飛ぶ。そんな中、ナルディア目がけて円月輪が飛んでくる。クルクルと回転しつつ、凄まじい勢いで迫る。
カーンッ
ナルディアはとっさに旗を捨て、片手に持つ槍で刃を弾く。甲高い金属と金属がぶつかる音が鳴り響いた。
「何者じゃ!余をナルディアと知ってのことか!」
ナルディアを注視している兵士やキキョウも突然の出来事に固唾を呑んで見守る。
「ええ、もちろん知ってのことよ」
そういいながらゆっくり歩いて現れたのはミシェルである。
「おぬし・・・来ておったのか。にしても趣味の悪い挨拶じゃの」
「あら、私のできる最高の挨拶よ?気に入らなかったかしら?」
「ふ、ふふふ・・・ミシェル、余はここで戦っても良いのじゃぞ?」
すっかりミシェルのペースに巻き込まれたナルディアは眉間に皺を寄せ、いますぐにでも怒りだしそうな状態である。
「ねえナルディア、あなた結婚したんですって?ここは素直におめでとうと言っておくわ」
自分から火種の原因をつくったミシェルはというと、ナルディアの殺気を意にも介さぬ様子で笑顔で結婚を祝福する。突然の祝言にナルディアはすっかり毒気を抜かれた。
「う、うむ。感謝する。おぬし・・・わざわざそれを言いに来たのか?」
「もちろんそうよ?ナルディアなら避けられるとわかって円月輪を投げたのよ」
ミシェルは手をフリフリとしながら当たり前でしょと笑う。
「そこまでわかっててやったのか・・・ふむ、まあよい」
もし避けられなかったらどうするつもりだったのか・・・。ナルディアはボソッとつぶやく。そんなナルディアを気遣う様子もなくミシェルは再び火種を投下する。
「あ、私、ジークの愛人でもいいのよ?」
「まったく・・・おぬしというやつは・・・」
ミシェルの軽口にナルディアはすっかり呆れていた。そして二人はすっかりいつも通りの調子に戻っていた。お互いにぷっと噴き出し、あはははと盛大に笑っていた。
「おぬしとゆっくり話していたいところじゃが、いまは見ての通り訓練中じゃ。終わったらゆっくり話そうではないか」
ナルディアは地面に落とした旗を再び手に持つ。
「ええ、それで構わないわ。またあとでね」
「うむっ」
ーーーーー
ミシェルは伝言通りにナミュール城へ来てみたものの、ジークとナルディアはまだ仕事中ですっかり暇を持て余していた。政治的な意味でも話すことは山積みなのだが、仕事を妨げるほどのものではない。しばらく城内を見て回ることにした。町の作り方も国によっていろいろあるようで、自国とも違えばサミュエル連邦で見てきた町並みとも違う。ミシェルは興味深く見て回り、時間を潰すのであった。
陽が傾き始めた頃、城へと向かう。城館に戻ると訓練を終えたナルディアが廊下を歩いていた。こちらの姿を捉えたようである。
「おお、ここにおったか。探したのだぞ」
「あら、悪いわね。暇だったからナミュールの町並みを見ていたのよ」
「ジークは執務室におるが、どうする?」
「うーん、そうね、先に面倒な話を片付けちゃいましょうか」
こうして二人はジークのいる執務室へ向かい、まもなく執務室に着いた。ナルディアがノックすることなく扉を開ける。
「お前らってほんとにお似合いだよな・・・」
ノックをせずに入ってくるという共通点を見て、俺は思わず声に出してしまった。
「うむっ、余とミシェルは友じゃからのう」
「ねえナルディア、きっと褒めてないわよ・・・」
ミシェルにだけは俺の呆れている感情が伝わったようだ。
「なんじゃ、そうであるかジークよ?」
「ああ、ミシェルは意味が分かったようだけどな」
むうとナルディアが拗ねる。ほんとにこういう素直なところは可愛いのだ。
「ジークはもうお仕事終わりかしら?ちょっと3人で話さない?」
俺と一緒に仕事をしているムネノリも察したのか進んで部屋を出ていく。どうやら大事な話があるようだ。仕事机から応接用の椅子に場所を移す。
「出ていった彼には少し申し訳ないことをしたわね」
「あまり他言したくない話があるんだろう?それなら仕方ないことだ」
ミシェルなりに気を遣ってくれているようだ。
「ええ、国王にも申し上げたけど、サミュエル連邦が動いたわ」
シリウスによる通貨供給量の調整によりベオルグ公国でなにが起こったのかを丁寧に説明してくれた。うちの情報網はサミュエル連邦のみを対象としていたので、この情報は初耳であった。とはいえ、ベオルグ公国の顛末に驚きはない。金の力がどれほど強大かということは俺もよく知っている。不正会計、粉飾決算といった世間を賑わす会計不祥事もいわば金のためにおこなわれているものである。
「そんなすぐに滅んだのか」
「ええ、おそらく間者か何かを紛れ込ませて扇動したとみて間違いないわね」
「それで流民が多く発生してツイハーク王国も困っているというわけか」
「そうよ。けど、セオドールっていううちの丞相が手を打ってくれたから特に問題はないわ」
なるほど、流民が近寄らないよう武力による威圧をしたわけか。良心の痛む話だが、国を守るためだから仕方ない。綺麗事を言えるような状況ではないのだ。
「もしもの話じゃが、サミュエル連邦が流民による弱体化を狙っていたとして、それが効果ないと知ったら次は何をするかのう」
懸念していたことをナルディアが口火を切る。
「そう、そこが問題なのよ」
ミシェルも我が意を得たりとばかりに身を乗り出す。
「私の推測なら、封鎖していた国境を開放して、行き場のない流民を取り込むんじゃないかって思うわ。その次に、軍を進めてベオルグ公国の各城を落として回るではないかしら?」
ミシェルの言うことはもっともだ。俺も同様の展開を思い描いていた。問題は、より巨大になったサミュエル連邦相手にツイハーク王国がどう立ち回るかという点にある。
「ツイハーク王国はどうするんだ?サミュエル連邦に対抗できる何かがあるのか?」
俺の質問にミシェルは苦い表情をしている。
「それがね、うちの国は戦いに向かないのよ・・・」
「「・・・・・・」」
俺とナルディアは言葉を失う。
「えっ、あ、まあ、得意不得意は仕方ないでしょ?」
ツイハーク王国の滅亡も時間の問題かもしれない。それを俺は強く理解した。
「それにほら、もしうちに攻めてきたら、出来る限りの抵抗はするつもりよ」
「はあ・・・」
俺は盛大にため息をつく。
「もう、ちょっと何よ。本当に弱いのだから仕方ないじゃない」
俺はツイハーク王国に対して何かをする義理はない。だが、ツイハーク王国を助けることがサミュエル連邦の力を削ぐことになるなら話は別である。ミシェルが俺たち夫婦の友人だからというのも多少はあるが・・・。
「なあミシェル、俺に一つ考えがあるんだが、聞いてみるか?」
ミシェルの目が今日一番の輝きを放つ。
「もちろんよ!ほんとっ頼りになるんだから。お願い、教えてちょうだい」
俺が対サミュエル連邦用に取っておいた秘策の一つを教えることにした。どんな地形でも有効かつ高威力の秘策である。ミシェルに説明すると、納得したようであった。
「驚いたわ。これならうちでも反撃することができるわ。少なくとも時間稼ぎにはなるわね」
「ああ、ただし使えるのは一度きりだ。相手がよほどのバカでない限り2度は通用しないだろう」
「もちろんわかっているわよ。いやー今日はここまで来てよかったわ。ほんとっありがとう。ねえ、もしもの時は二人を頼ってもいい?」
「ミシェルは余の友だからな。余をいつでも頼るがよい」
ナルディアが気持ちを代弁してくれたので、俺も頷いて賛意を示す。
「まあ嬉しい。そうならないといいけれど、いざという時は頼るわね。っくぅーなんか安心したらお腹が空いてきたわ」
ミシェルは背伸びしながら満足そうな表情を浮かべている。
「よし、それじゃご飯にしようか。ミシェルをもてなすためにご馳走を用意してくれていると思うぞ」
「それは楽しみね。おいしい食事は心の潤いよ♪」
こうして俺たちと食事を共にし、一泊したミシェルは翌日帰国の途に就くのであった。別れ際、ミシェルはとても物騒な一言を残していった。
「あ、そうそう、あなたたちの鍛えている部隊、よく訓練されているわね。私がナルディアに襲っても右往左往していないのだから大したものよ」
ナルディアを襲った!?
俺は初耳でびっくりしていたが、隣のナルディアは自慢げな態度である。一体何が起こったというのだろうか。まあ、聞いたところで物騒な話が飛んできそうだから、あえて触れないでおく。
0
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる