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第二章 ナミュール城主編
第12話 新しい戦
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ツイハーク王国からところ変わって、シャルナーク王国では、ジークがナミュール城を出発した。その目的はアンドラス城の奪還である。
「ジーク様」
どこからともなくハンゾウが現れる。どうやら何か報告があるようだ。
「なにか掴んだか?」
「はっ!アンドラス城に向かって約10万の援軍が向かっているようです」
こちら側の動きを察知したサミュエル軍が援軍を差し向けてきたようだ。俺から見て驚くべき情報はない。
「そうか・・・それで、大将は誰だ」
「ガルヴィンです」
敵将はガルヴィンか・・・。俺にとっては多少因縁のある相手だ。前回は完膚なきまでに叩いていることから、敵は警戒していると見て間違いない。もし援軍が到着したら、堅く守られることになるだろう。戦を長引かせないためにも援軍が到着するまでに陥落させる必要がある。
「ありがとう。引き続きよろしく頼む」
「はっ」
俺は近くにいた兵にナシュレイを呼ぶよう命じる。ナシュレイはあまり間を置くことなくやって来た。
「殿下、お呼びでしょうか」
「わざわざ申し訳ない。
さっき、ガルヴィン率いる10万が援軍に向かっているという報告があった。
俺としては、援軍が到着する前にアンドラス城を落としてしまいたいと思うが、何か考えはないだろうか」
「やはり援軍が・・・」
ナシュレイが考え始める。
「城の弱点なんかはないのか?」
俺の問いかけにナシュレイはそういえばという表情に変わる。
「アンドラス城の南側の少し離れたところに丘があるそうでございます」
「城の中が見通せる高さか?」
「はい」
南側に丘か・・・。少し離れているらしいが、城内を覗ける高さの丘は何かと都合がいい。本陣はそこに構えることにしよう。
「いい情報だったよ。ありがとう。ほかにはないか?」
「申し訳ございません。これ以上はなんとも」
「わかった。ありがとう」
弱点は弱点だが、俺の欲しい情報ではなかった。つまり、目立った弱点のない城なのだろう。
「誰か、ナルディアを呼んできてくれ」
まもなくナルディアが到着する。
「どうかしたのかの」
「わざわざ悪い、ちょっとナルディアの知恵を借りようと思ってな」
援軍が向かっていること、アンドラス城に目立った弱点がないかもしれないことをナルディアに話す。俺の話を聞いたナルディアは喜色満面である。
「なるほど、それで余を呼んだというわけじゃな。うむっ、うむっ、おぬしのその判断は大正解じゃ」
ナルディアなら突拍子もない策を思いつくかもと期待して呼んだわけだが、どうやら正解だったようだ。
「なにか考えがあるのか?」
「おぬし、なんのために鉄砲があると思うのじゃ」
鉄砲・・・。俺も鉄砲を使う作戦は確かに考えたが、有効な策がなかったのだ。どういうことだろうか。
「おぬし、弾の原料のブラックパウダーなるものは持ってきておるか?」
ブラックパウダーとは黒色火薬のことである。硝石に木炭と硫黄を混ぜて作成する火薬の一種だ。なにかしら用途があるだろうと弾とは別に持ってきている。ナルディアがわざわざそれを聞いてくるということは・・・なるほど、火薬を使うということか。なんとなく読めてきた。
「もちろんだ」
「それを門の前にばら撒いて爆発させるというのはどうじゃ?」
どうやら火薬の力で城門を破壊しろと言いたいらしい。
「そうか、発破の要領か!!」
「う、うむ・・・ハッパ?」
「ああ、悪い悪い、俺の住む世界ではよく使われていた方法なんだ。
なるほど、その手があったか」
俺はナルディアの策に賛同しているが、ナルディアは腑に落ちないような反応をする。
「う、うむ。よくわからぬが・・・そう言うことじゃ」
「さすがはナルディアだ。ありがとう!」
「くふっ、もっと褒めてくれても良いのだぞ・・・?」
ナルディアは上目遣いで恥ずかしそうに俺を見上げている。俺は頭をわしゃわしゃとなでる。幸せそうな笑顔は、さながら戦場の女神である。まあ、その女神がとんでもない策を思いついているわけだが・・・。
アンドラス城に着いた俺は早速その策を実行することにした。
「ハンゾウはいるか」
「ここにおります」
ハンゾウが静かにやって来る。俺に気配を悟らせないのはさすがと言うほかない。
「夜にこれを城門とぴったりくっつくように置いて来てくれないか」
俺は目一杯の火薬を詰めた樽をハンゾウに渡す。本当は導火線を付けたいところだが、材料がない。そのため、火矢で発火させるのが最善だろう。
「承知いたしました」
「いいか、これは火に触れたら大変なことになる。もし、城門へ行くまでに敵にばれたらすぐ戻ってこい」
ハンゾウはなぜ大変かを理解していないようだが、俺の表情を見て気を引き締めてくれたようだ。詳しい説明を省略した。次は城門を破った後のことである。
「ナシュレイ」
「はっ」
「俺の指示があったら南側の城門へ向けて火矢を放ってくれ。それで城門が爆発するはずだからそのあとに総攻撃をしかけてほしい」
「城門が爆発するのでございますか?」
「ああ、見ていればわかるさ」
ナシュレイは不思議そうな顔をしている。
「殿下の戦い方は、それがしの想像を遥かに超えたところにございます。承知いたしました。兵の準備を整えておきます」
ナシュレイはそれ以上詳しいことを聞かずに去っていった。俺を信頼してくれているようで、少し嬉しい気分になる。あとはハンゾウたちに任せるだけである。
ーーーーー
夜になり、ハンゾウは数人の黒焔隊を率いて樽の設置に向かっていた。濃紺の忍び装束により夜の闇と完全に同化している。敵兵に見つかることはまずありえない話だった。
「門の中央に樽を設置しろ」
「へい」
ジャンとその手下たちが運んできた樽を城門に置く。
「よし、それでいい。戻るぞ」
ハンゾウはジャンたちを引き連れて本陣へと戻ってきた。
「ジーク様、終わりました」
「よくやった」
ハンゾウからの報告を受けたジークは、本陣に集めた諸将を見回す。ナルディア、キキョウ、ナシュレイら将軍クラスに隊長クラスが出席している。
「これから総攻撃をおこなう。その前に、見てもらいたいものがある。ナシュレイ、火矢を頼む」
「はっ」
俺が本陣のテントの外に出ると、諸将も続いて外に出る。
「師匠、なにが始まるんです?」
キキョウの問いかけにナルディアは笑って答える。
「あやつが前に新しい戦になると言っておってな。これから起こることは、きっとそういうことなのじゃろう」
「新しい戦?」
キキョウが首を傾げて考える。
「ちなみにこれから起こることは余が考えたのじゃ」
「え、そうなの!?師匠凄いね!」
考えることをやめたキキョウは、ナルディアに褒め言葉を贈る。ナルディアも得意げである。そんな遣り取りをしていると、ナシュレイの声が響いた。
「射ち方、構えい!・・・・・・放てっ!」
城門目掛けて多くの火矢が飛んでいく。それを受けた敵兵は敵襲に対処するべく目まぐるしく動きが変化していた。と、その時、この世の音とは思えないほどの爆音が響く。
ドバーン
「「「きゃっ」」」
「「「うわっ」」」
シャルナーク軍の一同が驚きの声をあげる。俺も脈が異常に早くなっていた。初めて見た大爆発に興奮しているのだろう。
城門のあたりには白煙が立ち込めていてよく見えない。城壁の松明がうっすらとしか見えないことから、相当な量の煙が上がっていた。
しばらくしてようやく煙が薄くなってくる。煙によって隠されていたその光景は、まさに目を疑うものだった。ブラックパウダーは城門どころか周囲の城壁まで吹き飛ばしていたのである。目一杯詰め込んだ火薬の分量が多すぎたのかもしれない。
「ジークよ・・・」
その光景に恐怖の色を浮かべているナルディアは俺の袖をぎゅっとつかむ。その隣にいたキキョウはナルディアに抱きついている。シャルナーク軍屈指の将軍がこの様子なのだから、兵士レベルではもっと驚いていることだろう。現に想像を超えた光景に腰を抜かす者もいた。
「のう・・・本当にあれはブラックパウダーが起こしたものなのじゃな?」
ナルディアは真剣な表情で聞いてきた。さっきまでの余が考えたのだーとか誇らしげに言っていた時と大違いである。
「そうだ。ブラックパウダーを樽に詰めて爆発させたものだ」
俺の答えにナルディアは急に考え込む。そして、小さな声でこう漏らした。
「余は、時代の変わる瞬間を目にしたのだな・・・」
ナルディアのいうことはもっともである。もしこの世界に軍事史というものがあるなら、間違いなく転換点となろう。軍事兵器としての火薬の登場である。
「総攻撃を仕掛けろ!降伏する者には手出しするな!」
俺の号令で気を持ち直した諸将が攻撃を仕掛ける。味方の兵は混乱しながら出撃していったが、敵は完全に茫然自失となっていた。爆発によって破片が身体に刺さる者、吹き飛ばされる者、火だるまになる者・・・と、この世の光景とは思えないものが広がっていたからだ。
味方部隊が城内に乗り込むと、敵兵の多くは武器を置き、座り込んでいた。それはアンドラス城を守る将官も例外ではなかった。まもなく、敵兵全員が降伏することとなり、アンドラス城攻略戦は樽爆弾による死者のみと少ない犠牲で攻略することができた。
ーーーーー
「大将閣下、申し上げます。アンドラス城が陥落した模様です」
「なんだと!?もう陥落したのか!」
マクナイトの後任として大将となったマクナイトは強い衝撃を受けていた。アンドラス城が一日も持たずに陥落したというのである。
「なんでも突然城門が火を噴いたとのことです」
「城門が火を噴くだとお?そんなもの聞いたこともないぞ」
伝令兵に八つ当たり気味になるガルヴィンがふと我に返る。
「敵の総大将は誰だ」
「ジークと言う国王の娘婿だそうです」
「・・・やはりあの男か」
ガルヴィンは、変な戦い方をする将に心当たりがあった。忘れもしないクヌーデル城での話である。名もなき将の火計により兵のやたら多く失ったばかりかアインタール城まで失った。自身に屈辱的な大敗をもたらした将である。
「我が軍はハルバード城へ向かう!」
ガルヴィンはアンドラス城の救援を諦め、次に攻めてくるであろうハルバード城へ進路を変更する。無意識にこれから恐ろしいことが起こるのではないか。ガルヴィンの馬の手綱を持つその手は、かすか震えていた。しかし、そのことにガルヴィン自身は気づいていなかった。
「ジーク様」
どこからともなくハンゾウが現れる。どうやら何か報告があるようだ。
「なにか掴んだか?」
「はっ!アンドラス城に向かって約10万の援軍が向かっているようです」
こちら側の動きを察知したサミュエル軍が援軍を差し向けてきたようだ。俺から見て驚くべき情報はない。
「そうか・・・それで、大将は誰だ」
「ガルヴィンです」
敵将はガルヴィンか・・・。俺にとっては多少因縁のある相手だ。前回は完膚なきまでに叩いていることから、敵は警戒していると見て間違いない。もし援軍が到着したら、堅く守られることになるだろう。戦を長引かせないためにも援軍が到着するまでに陥落させる必要がある。
「ありがとう。引き続きよろしく頼む」
「はっ」
俺は近くにいた兵にナシュレイを呼ぶよう命じる。ナシュレイはあまり間を置くことなくやって来た。
「殿下、お呼びでしょうか」
「わざわざ申し訳ない。
さっき、ガルヴィン率いる10万が援軍に向かっているという報告があった。
俺としては、援軍が到着する前にアンドラス城を落としてしまいたいと思うが、何か考えはないだろうか」
「やはり援軍が・・・」
ナシュレイが考え始める。
「城の弱点なんかはないのか?」
俺の問いかけにナシュレイはそういえばという表情に変わる。
「アンドラス城の南側の少し離れたところに丘があるそうでございます」
「城の中が見通せる高さか?」
「はい」
南側に丘か・・・。少し離れているらしいが、城内を覗ける高さの丘は何かと都合がいい。本陣はそこに構えることにしよう。
「いい情報だったよ。ありがとう。ほかにはないか?」
「申し訳ございません。これ以上はなんとも」
「わかった。ありがとう」
弱点は弱点だが、俺の欲しい情報ではなかった。つまり、目立った弱点のない城なのだろう。
「誰か、ナルディアを呼んできてくれ」
まもなくナルディアが到着する。
「どうかしたのかの」
「わざわざ悪い、ちょっとナルディアの知恵を借りようと思ってな」
援軍が向かっていること、アンドラス城に目立った弱点がないかもしれないことをナルディアに話す。俺の話を聞いたナルディアは喜色満面である。
「なるほど、それで余を呼んだというわけじゃな。うむっ、うむっ、おぬしのその判断は大正解じゃ」
ナルディアなら突拍子もない策を思いつくかもと期待して呼んだわけだが、どうやら正解だったようだ。
「なにか考えがあるのか?」
「おぬし、なんのために鉄砲があると思うのじゃ」
鉄砲・・・。俺も鉄砲を使う作戦は確かに考えたが、有効な策がなかったのだ。どういうことだろうか。
「おぬし、弾の原料のブラックパウダーなるものは持ってきておるか?」
ブラックパウダーとは黒色火薬のことである。硝石に木炭と硫黄を混ぜて作成する火薬の一種だ。なにかしら用途があるだろうと弾とは別に持ってきている。ナルディアがわざわざそれを聞いてくるということは・・・なるほど、火薬を使うということか。なんとなく読めてきた。
「もちろんだ」
「それを門の前にばら撒いて爆発させるというのはどうじゃ?」
どうやら火薬の力で城門を破壊しろと言いたいらしい。
「そうか、発破の要領か!!」
「う、うむ・・・ハッパ?」
「ああ、悪い悪い、俺の住む世界ではよく使われていた方法なんだ。
なるほど、その手があったか」
俺はナルディアの策に賛同しているが、ナルディアは腑に落ちないような反応をする。
「う、うむ。よくわからぬが・・・そう言うことじゃ」
「さすがはナルディアだ。ありがとう!」
「くふっ、もっと褒めてくれても良いのだぞ・・・?」
ナルディアは上目遣いで恥ずかしそうに俺を見上げている。俺は頭をわしゃわしゃとなでる。幸せそうな笑顔は、さながら戦場の女神である。まあ、その女神がとんでもない策を思いついているわけだが・・・。
アンドラス城に着いた俺は早速その策を実行することにした。
「ハンゾウはいるか」
「ここにおります」
ハンゾウが静かにやって来る。俺に気配を悟らせないのはさすがと言うほかない。
「夜にこれを城門とぴったりくっつくように置いて来てくれないか」
俺は目一杯の火薬を詰めた樽をハンゾウに渡す。本当は導火線を付けたいところだが、材料がない。そのため、火矢で発火させるのが最善だろう。
「承知いたしました」
「いいか、これは火に触れたら大変なことになる。もし、城門へ行くまでに敵にばれたらすぐ戻ってこい」
ハンゾウはなぜ大変かを理解していないようだが、俺の表情を見て気を引き締めてくれたようだ。詳しい説明を省略した。次は城門を破った後のことである。
「ナシュレイ」
「はっ」
「俺の指示があったら南側の城門へ向けて火矢を放ってくれ。それで城門が爆発するはずだからそのあとに総攻撃をしかけてほしい」
「城門が爆発するのでございますか?」
「ああ、見ていればわかるさ」
ナシュレイは不思議そうな顔をしている。
「殿下の戦い方は、それがしの想像を遥かに超えたところにございます。承知いたしました。兵の準備を整えておきます」
ナシュレイはそれ以上詳しいことを聞かずに去っていった。俺を信頼してくれているようで、少し嬉しい気分になる。あとはハンゾウたちに任せるだけである。
ーーーーー
夜になり、ハンゾウは数人の黒焔隊を率いて樽の設置に向かっていた。濃紺の忍び装束により夜の闇と完全に同化している。敵兵に見つかることはまずありえない話だった。
「門の中央に樽を設置しろ」
「へい」
ジャンとその手下たちが運んできた樽を城門に置く。
「よし、それでいい。戻るぞ」
ハンゾウはジャンたちを引き連れて本陣へと戻ってきた。
「ジーク様、終わりました」
「よくやった」
ハンゾウからの報告を受けたジークは、本陣に集めた諸将を見回す。ナルディア、キキョウ、ナシュレイら将軍クラスに隊長クラスが出席している。
「これから総攻撃をおこなう。その前に、見てもらいたいものがある。ナシュレイ、火矢を頼む」
「はっ」
俺が本陣のテントの外に出ると、諸将も続いて外に出る。
「師匠、なにが始まるんです?」
キキョウの問いかけにナルディアは笑って答える。
「あやつが前に新しい戦になると言っておってな。これから起こることは、きっとそういうことなのじゃろう」
「新しい戦?」
キキョウが首を傾げて考える。
「ちなみにこれから起こることは余が考えたのじゃ」
「え、そうなの!?師匠凄いね!」
考えることをやめたキキョウは、ナルディアに褒め言葉を贈る。ナルディアも得意げである。そんな遣り取りをしていると、ナシュレイの声が響いた。
「射ち方、構えい!・・・・・・放てっ!」
城門目掛けて多くの火矢が飛んでいく。それを受けた敵兵は敵襲に対処するべく目まぐるしく動きが変化していた。と、その時、この世の音とは思えないほどの爆音が響く。
ドバーン
「「「きゃっ」」」
「「「うわっ」」」
シャルナーク軍の一同が驚きの声をあげる。俺も脈が異常に早くなっていた。初めて見た大爆発に興奮しているのだろう。
城門のあたりには白煙が立ち込めていてよく見えない。城壁の松明がうっすらとしか見えないことから、相当な量の煙が上がっていた。
しばらくしてようやく煙が薄くなってくる。煙によって隠されていたその光景は、まさに目を疑うものだった。ブラックパウダーは城門どころか周囲の城壁まで吹き飛ばしていたのである。目一杯詰め込んだ火薬の分量が多すぎたのかもしれない。
「ジークよ・・・」
その光景に恐怖の色を浮かべているナルディアは俺の袖をぎゅっとつかむ。その隣にいたキキョウはナルディアに抱きついている。シャルナーク軍屈指の将軍がこの様子なのだから、兵士レベルではもっと驚いていることだろう。現に想像を超えた光景に腰を抜かす者もいた。
「のう・・・本当にあれはブラックパウダーが起こしたものなのじゃな?」
ナルディアは真剣な表情で聞いてきた。さっきまでの余が考えたのだーとか誇らしげに言っていた時と大違いである。
「そうだ。ブラックパウダーを樽に詰めて爆発させたものだ」
俺の答えにナルディアは急に考え込む。そして、小さな声でこう漏らした。
「余は、時代の変わる瞬間を目にしたのだな・・・」
ナルディアのいうことはもっともである。もしこの世界に軍事史というものがあるなら、間違いなく転換点となろう。軍事兵器としての火薬の登場である。
「総攻撃を仕掛けろ!降伏する者には手出しするな!」
俺の号令で気を持ち直した諸将が攻撃を仕掛ける。味方の兵は混乱しながら出撃していったが、敵は完全に茫然自失となっていた。爆発によって破片が身体に刺さる者、吹き飛ばされる者、火だるまになる者・・・と、この世の光景とは思えないものが広がっていたからだ。
味方部隊が城内に乗り込むと、敵兵の多くは武器を置き、座り込んでいた。それはアンドラス城を守る将官も例外ではなかった。まもなく、敵兵全員が降伏することとなり、アンドラス城攻略戦は樽爆弾による死者のみと少ない犠牲で攻略することができた。
ーーーーー
「大将閣下、申し上げます。アンドラス城が陥落した模様です」
「なんだと!?もう陥落したのか!」
マクナイトの後任として大将となったマクナイトは強い衝撃を受けていた。アンドラス城が一日も持たずに陥落したというのである。
「なんでも突然城門が火を噴いたとのことです」
「城門が火を噴くだとお?そんなもの聞いたこともないぞ」
伝令兵に八つ当たり気味になるガルヴィンがふと我に返る。
「敵の総大将は誰だ」
「ジークと言う国王の娘婿だそうです」
「・・・やはりあの男か」
ガルヴィンは、変な戦い方をする将に心当たりがあった。忘れもしないクヌーデル城での話である。名もなき将の火計により兵のやたら多く失ったばかりかアインタール城まで失った。自身に屈辱的な大敗をもたらした将である。
「我が軍はハルバード城へ向かう!」
ガルヴィンはアンドラス城の救援を諦め、次に攻めてくるであろうハルバード城へ進路を変更する。無意識にこれから恐ろしいことが起こるのではないか。ガルヴィンの馬の手綱を持つその手は、かすか震えていた。しかし、そのことにガルヴィン自身は気づいていなかった。
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