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プロローグ
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時はいま、大戦乱時代。
オスタリア大陸全土を巻き込む戦いは、早くも200年を経ようとしていた。
数多の国が興り、英雄が生まれ、そして散っていった。
「真に力を欲するなら、国を想う純粋な心を見せてみよ」
名もなき仙人が一冊の魔導書を若き王に託す。
若き王は恭しく古びた魔導書を受け取る。
「純粋に国を想うならば、きっと勇者を召喚できよう」
そして、若き王は自らの城へと戻っていく。その姿を見届けた仙人は、ぽつりぽつりと語り始めた。この大陸を駆け抜けた伝説の勇者の話を・・・。
オスタリア大陸は長年に渡ってウェスタディア帝国の統治下にあった。数多くの属国を抱え、オスタリア大陸の覇者として圧倒的な力をもって君臨する。しかし、その均衡を崩す出来事が起こった。属国の一つである聖カテリーナ国が突如として反旗を翻したのである。
今から約200年前、聖カテリーナ国に颯爽と現れたのがオスタリア大陸最初の勇者、女傑シルヴィアである。
シルヴィアの武勇は精強無比、瞬く間に大陸の半分を占領し、ウェスタディア帝国と並ぶ二大強国の時代となった。
「シルヴィアは力で突き進む、典型的な勇者じゃった」
次に勇者が現れたのは、81歳でシルヴィアが死去した数年後である。南部小国群の一つであるミスリア共和国に西園寺道泰が現れたのだ。
小国群は結託して聖カテリーナ国に反旗を翻し、聖カテリーナ国を滅ぼすことに成功した。しかし、同時期に出現したシャルナーク王国の覇王フェンリルを前に南部小国群はあっけなく滅ぼされてしまった。
西園寺道泰は主であるサミュエル公と共に長い雌伏の時を過ごす。そして、十数年の時を経て、覇王フェンリルの死という好機がもたらされた。サミュエル公と西園寺道泰は反乱を起こし、独立に成功する。かつての南部小国群もシャルナーク王国に反旗を翻し、サミュエル公に追従した。こうして出来上がったのがサミュエル公を主としたサミュエル連邦である。
西園寺道泰は勇者でありながら、戦では全く役に立たなかった。先頭を切って戦えるほど武力に秀でていなかった。その反面、軍略と政略において西園寺道泰の右に出る者はおらず、その活躍は勇者と呼ばれるに相応しいものだったという。頭脳派の勇者ともいえる彼の意思は、次世代を担うイリスとニクティスに受け継がれ、サミュエル連邦はウェスタディア帝国と並ぶ強国まで成長した。
「西園寺道泰・・・彼は稀な勇者じゃった。力ではなく頭で戦い抜いたのじゃ」
そしていま、新たな勇者が誕生しようとしていた。覇王フェンリルのもと、オスタリア大陸を席巻したシャルナーク王国である。若き王ティアネス・シャルナークは、仙人より託された魔導書に従い、来る日も来る日も召喚を試みる。しかし、全く召喚される気配がない。仙人から魔導書を受け取ってから何年経っただろうか。すっかり中年の域に達したティアネスは、ついに念願の日を迎えるのであった。
国を憂う小国の雄、ティアネス・シャルナーク率いるシャルナーク王国。
西園寺道泰の意思を継ぎ、大陸統一を狙う総統ニクティス率いるサミュエル連邦。
領土の繁栄こそが我が誇り、元首クレール率いるベオルグ公国。
戦いを嫌う心優しき女王アスタリア率いるツイハーク王国。
大陸統一こそが国の宿願、皇帝ネルブライト率いるウェスタディア帝国。
この5ヵ国が大陸を制覇するのだろうか、あるいは新たな国が興り、その国が大陸を制覇するのだろうか。
「のちにジークと名乗る勇者は、シャルナーク王国の中興の祖と呼ばれることになるじゃろう。その活躍、その時代を生きる人々の想い、そなたたちの目でしかと見届けよ」
名もなき仙人はそう言い残し、ふらりとどこかへ消えていった。
オスタリア大陸全土を巻き込む戦いは、早くも200年を経ようとしていた。
数多の国が興り、英雄が生まれ、そして散っていった。
「真に力を欲するなら、国を想う純粋な心を見せてみよ」
名もなき仙人が一冊の魔導書を若き王に託す。
若き王は恭しく古びた魔導書を受け取る。
「純粋に国を想うならば、きっと勇者を召喚できよう」
そして、若き王は自らの城へと戻っていく。その姿を見届けた仙人は、ぽつりぽつりと語り始めた。この大陸を駆け抜けた伝説の勇者の話を・・・。
オスタリア大陸は長年に渡ってウェスタディア帝国の統治下にあった。数多くの属国を抱え、オスタリア大陸の覇者として圧倒的な力をもって君臨する。しかし、その均衡を崩す出来事が起こった。属国の一つである聖カテリーナ国が突如として反旗を翻したのである。
今から約200年前、聖カテリーナ国に颯爽と現れたのがオスタリア大陸最初の勇者、女傑シルヴィアである。
シルヴィアの武勇は精強無比、瞬く間に大陸の半分を占領し、ウェスタディア帝国と並ぶ二大強国の時代となった。
「シルヴィアは力で突き進む、典型的な勇者じゃった」
次に勇者が現れたのは、81歳でシルヴィアが死去した数年後である。南部小国群の一つであるミスリア共和国に西園寺道泰が現れたのだ。
小国群は結託して聖カテリーナ国に反旗を翻し、聖カテリーナ国を滅ぼすことに成功した。しかし、同時期に出現したシャルナーク王国の覇王フェンリルを前に南部小国群はあっけなく滅ぼされてしまった。
西園寺道泰は主であるサミュエル公と共に長い雌伏の時を過ごす。そして、十数年の時を経て、覇王フェンリルの死という好機がもたらされた。サミュエル公と西園寺道泰は反乱を起こし、独立に成功する。かつての南部小国群もシャルナーク王国に反旗を翻し、サミュエル公に追従した。こうして出来上がったのがサミュエル公を主としたサミュエル連邦である。
西園寺道泰は勇者でありながら、戦では全く役に立たなかった。先頭を切って戦えるほど武力に秀でていなかった。その反面、軍略と政略において西園寺道泰の右に出る者はおらず、その活躍は勇者と呼ばれるに相応しいものだったという。頭脳派の勇者ともいえる彼の意思は、次世代を担うイリスとニクティスに受け継がれ、サミュエル連邦はウェスタディア帝国と並ぶ強国まで成長した。
「西園寺道泰・・・彼は稀な勇者じゃった。力ではなく頭で戦い抜いたのじゃ」
そしていま、新たな勇者が誕生しようとしていた。覇王フェンリルのもと、オスタリア大陸を席巻したシャルナーク王国である。若き王ティアネス・シャルナークは、仙人より託された魔導書に従い、来る日も来る日も召喚を試みる。しかし、全く召喚される気配がない。仙人から魔導書を受け取ってから何年経っただろうか。すっかり中年の域に達したティアネスは、ついに念願の日を迎えるのであった。
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西園寺道泰の意思を継ぎ、大陸統一を狙う総統ニクティス率いるサミュエル連邦。
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「のちにジークと名乗る勇者は、シャルナーク王国の中興の祖と呼ばれることになるじゃろう。その活躍、その時代を生きる人々の想い、そなたたちの目でしかと見届けよ」
名もなき仙人はそう言い残し、ふらりとどこかへ消えていった。
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