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第一章

1の27 コラ、側近!

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目の前の側近は堅物で、男女の事に疎い。

それにしたって的外れ過ぎる解釈に、思わずバンッと机を叩き、声を荒げる。



「‥はぁ!?
その気になれないのではない!
その気になってはいけないと言っているのだ!
その気になっても我慢しなければいけないと!
まぁ、彼女は本人が言っている様に子供だと感じさせる瞬間は多いが。
表情が素直に出るから、喜怒哀楽がよく分かる。
それが可愛‥‥幼さなのだろう。
‥‥だがな、表情をまるで隠さないのに彼女の瞳をジッと見つめると‥‥
あのローズレッドの瞳は途端に神秘を帯びてその心を推し量れなくなるんだ。
ローズレッドの甘美な迷宮に迷い込んだ私は呆然として何も考えられなくなる‥‥
そうなると‥‥その、
妙な色気を纏い出すんだよ。
幼いままに‥‥
危険な程に‥‥」



そうなると私の理性もガタピシ言い出してかなりキツイ状態になる。

約3年後の幸せを想像して必死に理性を立て直すのだが。



「実は自分を抑えられる自信が全く無い。
だから、今はなるべく顔を合わせない様にする方がいいのだ」



『出来損ないの暴君』と影で囁かれている私が丁寧に自分の気持ちを説明している事に優秀な側近は静かに驚いている様だ。

私自身、こんな感情は初めてで、混乱していて、口が勝手に説明してしまっている状態だ。

軽いパニック状態と言っていいだろう。



「‥‥左様ですか。
もし殿下が興味を失くされたのなら私‥‥いえ。
では、別にお伝えする必要はありませんね。
いえ、むしろお伝えするべきではありませんね」

「? 何を?」

「シレーヌ姫様が珍しく部屋から出られて甲板を散歩なさっておいでなので、もしコミュニケーションを取られたいのなら、仕事は休憩して甲板に出られてはとお伝えしようか迷っていたのですが、そ‥」


グワタァァッ!



「‥バカ者ッ!
何でサッサと言わないッ!?」



椅子を倒しながら立ち上がった私は、ドアの前に邪魔臭く立っていた側近を一喝し突き飛ばして甲板へダッシュする!

常に冷静沈着無表情なのに頬を赤く染めていた側近がサッと青褪め震えながら床へ倒れ込んだ様だったが知った事か!


何でそんな重要事項を迅速に伝えないのだ!?

私の側近はタダのバカだったのか!?

それとも私へのイヤガラセか!?

これでもしシレーヌ姫が甲板から去っていたら、あの側近、切り刻んでサメの餌にしてや‥‥ハッ!

甲板にシレーヌ姫はいたが‥‥

なッ、

何て格好をしているのだッ!?
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