人魚姫とよばれた美少女は、王子様を助けた為に魔女にゴブリンにされましたが全く問題ありません

ハートリオ

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第二章

2の24 ファースト・ラブ 4

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「‥‥私は3年もの間、自分の心すら分かっていなかったんです」



少女は俯き悩まし気に顎に手を当て、眉を顰める。



「第二王子殿下に申し訳無く思います」

「‥‥何を?」

「今日の夕方、第二王子殿下に抱きかかえられた時、嫌で、逃れたくて‥‥」

「当然だ。
フラッ‥‥第二王子は乱暴だったし、乱暴するつもりだった様だし」

「殿下はいつもは紳士的に接して下さっていました。
今日の様な事は初めて‥‥
いえ、ラメールからここへの船の中でも似た様な事がありましたので、2回目‥」

「3年前にも!?」

「その時はイルカたちが助けてくれたので大丈夫でしたが‥‥
私は自分でも驚くほど嫌悪したのです。
第二王子殿下に妃として望まれる事を。
その時は、自分が子供だから激しく嫌悪するのだと思いました。
子供なのに、大人の女性の様に見られるのが嫌なんだと。
だから、もしかしたらいつか‥‥」



少女はそう言って湖の先の白い城に目をやる。

ぼんやりと、でもどこか哀し気な横顔にゴブリンは何故か焦燥を感じる。



「いつか、大人になれば第二王子を愛せると?」

「‥‥!
あ‥‥ええ、
ここで日々を過ごすうちに、自分で自分を説得するというか‥‥
心の殆どは絶対ここから逃げてやると強く決意していました。
でも心の隅で、殿下を愛せる日が来るのではないかと‥‥
そうしなければいけないのだろうと‥‥」



ふと、ゴブリンの視線に気付いて、少女は密かに動揺する。


なぜ、何に?



「大国の王子殿下に妃にと言って頂けるなんて、本当なら光栄でしかない事です。
しかも、ラメール王国の国王と王太子から私を救って下さった恩人でもあります。
‥‥何より、誠実な方だと分かりました。
『私が成人するまで手を出さない』という約束を守って下さっていたのです。
私の事など、どうとでも出来るお立場なのに。
‥‥そう、とても良い方だと思います。
ですが‥‥」



少女はゆっくりゴブリンに視線を向ける。

どこか畏れる様に。

一度逃げる様に僅かに泳いだ瞳はためらいがちにシーブルーの瞳に合わされる。

この世のものとは思えないほど神秘的なローズレッドは何かを。

先ほどまでとは違う何かを放っていて。

ゴブリンは居ても立っても居られない様な、落ち着かない気持ちになる。



ゴブリンは視線を外せない。
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