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第三章

3の10 スモークブルー・ゴブリンの正体

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「うッ、ひっく、うッ
ごえ、ごめんしゃい、
見う、なかって、
動‥なかって‥‥」



ギュッ‥‥



「‥‥ッッ?!?」



(えッ?えッ!?
ギュッって!?
えぇぇぇぇ!?)



「シレーヌ姫だな?」

「ひぇ、あ、あい!
あ、あの‥‥」



もうビックリし過ぎてパニック状態のゴブリン・シレーヌ!

抱きとめられたまま更にギュッと優しく抱きしめられて、

ゴブリンなのにシレーヌだと分かってくれて‥‥


どうしようもなく溢れていた涙もすっかり引っ込み、疑問を口にする。



「な、何で、わーちって?」

「目が‥‥美しいローズレッドの瞳はゴブリンになってもそのままだから。
人間からゴブリンに変身しても瞳の色は変わらない様だね」

「ッ!
瞳の色は変わあない?
じゃ、あにゃたはもちかちて‥‥」



深く美しいシーブルーの瞳。

それは、初恋のあの御方と同じ‥‥



「3年前、嵐の海で君に命を救われた。
あの危険な海で、君の献身が無ければ私は死んでいた。
ありがとう。
言葉に尽くせない。
それなのに、昨夜は言えなくてごめん」

「あ、わ、わーちが初恋って言っちゃったかや‥‥」

「君に失望されたくなかった。
3年間、ゴブリンとして過ごした日々が私をすっかり卑屈にしていた。
だけど話していて、君は私がゴブリンだからと言って蔑んだり嫌ったりしないと分かって嬉しかった。
命を救われた事以上に、君に出会えたことに感謝している。
君という人を知れて‥
幸せに思う。
ありがとう、シレーヌ姫」



抱き締められたまま、こんなに近くで、彼の声が降って来る‥‥

いっぱい嬉しい事、言ってくれてる‥‥

彼の鼓動。

彼の温もり‥‥

こんなに近くで、彼を感じている‥‥!


カァァァァ~~ッ

キュンッキュンッキュンッキュン‥‥


(ああ、この瞬間、
この瞬間すごく幸せ!
顔は真っ赤で、心臓はキュンキュン大変だけど、
そう、そうだよね!、
深く美しいシーブルー‥‥
神秘的で尊くて。
これほど美しい瞳の人が二人といるワケ無かったんだよね‥‥
これほどクールでカッコ良くて優しい人が二人といるワケ無かったんだよね!
‥‥ハッ!
だ、だけど‥‥
ダメッ!)


ゴブリン・シレーヌはゴブリン・レイから離れようと身じろぎする。


だって、あなたには‥‥
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