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07 若き辺境伯、登場
「それにしてもアンバー叔父様遅いわね?
時間にルーズな親戚なんて縁談の足を引っ張るだけ。
お父様、叔父様の事、切り捨てちゃった方がいいんじゃない?」
「え…何言って…
あんな便利な金蔓手放すバカがいるか?」
「だって私がここの女主人になるのよ?
もういくらでもジャンジャンお金を使えるんだから!」
エクリュがバカな事を言っているのは分かっている。
だがこうまで自信満々に言われると説得力が半端ない。
自分が思っているよりもエクリュは大物なのかもしれない。
そうとも、辺境伯家は滅多にない程のドブスであるルフスに縁談を持ち掛けた。
ちょっと何考えているのか理解できない変わり者…
もしかしていけるか?
いけちゃうのか?
いつもそんな甘さで事業に手を出し失敗しているサンド子爵。
弟のお陰で失敗した時の痛みを知らないからか全く学習していない。
そんなサンド子爵。
文官数人に囲まれ話し込んでいる弟アンバーが目に入る。
アンバーは俯いていた顔を上げると眉根を寄せて兄を見る。
(…何だあの目は!?
この私に向かって不敬ではないか!
後で説教してやる!)
自分には絶対服従の弟に対してはいつも通り強気な視線を返すサンド子爵。
――だがいつもと違い
目が合っても弟は愛想笑いをして来ない。
今すぐ文句を言ってやろうと歩を向けようとしたところでエクリュが
「ねぇあそこにいるの叔父様よねぇ?
遅いと思ったら既に来てたのね。
でも何か萎んでない?
叔父様ってもっと若々しくてシャキッとしててイケオジだったよねぇ?
あれじゃお父様と同じフツーのオジサンじゃん?
2週間前会った時はイケオジだったのに…
たった2週間であんなにしょぼくれる?」
そう言われてみると確かに――と気付いたり
何、私がフツーのオジサン?――と思ったり
混乱している内に
「アルゲンテウス辺境伯閣下、入られます」
厳かな声が響き、文官達が一斉に部屋の奥に体を向けて頭を30度下げる。
「あら、私達が入って来たのと逆側にもドアがあるのね!
わぁ…ゴージャス…
私もすぐにあっち側の人間になるのね♪」
白い両開きドア。
ドアの左右から歩み寄った騎士達が恭しく扉を開けると――
ッッ!!
ド、ド迫力ッ!
さすがに魔獣の大軍を制圧しただけの男、
ただそこに現れただけ
それだけで空気がドンッと押された感じがしたままピーンと張り詰める。
無意識に放たれた威圧
サンド子爵一家は堪らず後ろによろめくが
「カッコイイ~~~!
王都高校で追っかけしてた頃より大人になってますます素敵になってる!
ね、言ったでしょ?
別次元の美丈夫って!
白銀髪に金色の瞳…
神々しく尊いお姿…
私、彼ソックリの男の子を沢山産む積もり」
それでも直ぐに前のめりになる娘をサンド子爵は頼もしく感じる。
(いいぞエクリュ!
辺境伯家が格下の子爵家と縁談を結ぼうというのは後継を急いでいるからだ…
王都に集まる高位貴族令嬢達は辺境領がこんなに栄えているとは知らず縁談を断っているのだろう…
何故かルフスに縁談を申し込む積もりの様だったがルフスはまだ15才。
すぐに出産とはいかないだろう。
そこへ行くとわが娘エクリュは19才。
心も体も準備万端だ。
そうとも、最初からエクリュこそが辺境伯の相手として相応しいのだ!
辺境伯はエクリュの存在を見落としていたのだろう。
縁談を結びたいという書簡の人違いは必然だったのだ!)
元気回復中のサンド子爵の耳に若造とは思えない威厳ある低い声が響く。
「本日は我がアルゲンテウス辺境伯家にとって重要な幾つかの届け出をする。
その前に――
過去、現在、未来に於いてアルゲンテウス辺境伯家と一切関わりの無い者達がこの場に紛れ込んでいるという不快を正す!」
時間にルーズな親戚なんて縁談の足を引っ張るだけ。
お父様、叔父様の事、切り捨てちゃった方がいいんじゃない?」
「え…何言って…
あんな便利な金蔓手放すバカがいるか?」
「だって私がここの女主人になるのよ?
もういくらでもジャンジャンお金を使えるんだから!」
エクリュがバカな事を言っているのは分かっている。
だがこうまで自信満々に言われると説得力が半端ない。
自分が思っているよりもエクリュは大物なのかもしれない。
そうとも、辺境伯家は滅多にない程のドブスであるルフスに縁談を持ち掛けた。
ちょっと何考えているのか理解できない変わり者…
もしかしていけるか?
いけちゃうのか?
いつもそんな甘さで事業に手を出し失敗しているサンド子爵。
弟のお陰で失敗した時の痛みを知らないからか全く学習していない。
そんなサンド子爵。
文官数人に囲まれ話し込んでいる弟アンバーが目に入る。
アンバーは俯いていた顔を上げると眉根を寄せて兄を見る。
(…何だあの目は!?
この私に向かって不敬ではないか!
後で説教してやる!)
自分には絶対服従の弟に対してはいつも通り強気な視線を返すサンド子爵。
――だがいつもと違い
目が合っても弟は愛想笑いをして来ない。
今すぐ文句を言ってやろうと歩を向けようとしたところでエクリュが
「ねぇあそこにいるの叔父様よねぇ?
遅いと思ったら既に来てたのね。
でも何か萎んでない?
叔父様ってもっと若々しくてシャキッとしててイケオジだったよねぇ?
あれじゃお父様と同じフツーのオジサンじゃん?
2週間前会った時はイケオジだったのに…
たった2週間であんなにしょぼくれる?」
そう言われてみると確かに――と気付いたり
何、私がフツーのオジサン?――と思ったり
混乱している内に
「アルゲンテウス辺境伯閣下、入られます」
厳かな声が響き、文官達が一斉に部屋の奥に体を向けて頭を30度下げる。
「あら、私達が入って来たのと逆側にもドアがあるのね!
わぁ…ゴージャス…
私もすぐにあっち側の人間になるのね♪」
白い両開きドア。
ドアの左右から歩み寄った騎士達が恭しく扉を開けると――
ッッ!!
ド、ド迫力ッ!
さすがに魔獣の大軍を制圧しただけの男、
ただそこに現れただけ
それだけで空気がドンッと押された感じがしたままピーンと張り詰める。
無意識に放たれた威圧
サンド子爵一家は堪らず後ろによろめくが
「カッコイイ~~~!
王都高校で追っかけしてた頃より大人になってますます素敵になってる!
ね、言ったでしょ?
別次元の美丈夫って!
白銀髪に金色の瞳…
神々しく尊いお姿…
私、彼ソックリの男の子を沢山産む積もり」
それでも直ぐに前のめりになる娘をサンド子爵は頼もしく感じる。
(いいぞエクリュ!
辺境伯家が格下の子爵家と縁談を結ぼうというのは後継を急いでいるからだ…
王都に集まる高位貴族令嬢達は辺境領がこんなに栄えているとは知らず縁談を断っているのだろう…
何故かルフスに縁談を申し込む積もりの様だったがルフスはまだ15才。
すぐに出産とはいかないだろう。
そこへ行くとわが娘エクリュは19才。
心も体も準備万端だ。
そうとも、最初からエクリュこそが辺境伯の相手として相応しいのだ!
辺境伯はエクリュの存在を見落としていたのだろう。
縁談を結びたいという書簡の人違いは必然だったのだ!)
元気回復中のサンド子爵の耳に若造とは思えない威厳ある低い声が響く。
「本日は我がアルゲンテウス辺境伯家にとって重要な幾つかの届け出をする。
その前に――
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