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16 カーマイン子爵
アンバー・カーマイン子爵は光の繭となったルフスから光を照射されている。
頭頂から足の先まで。
照射されている者にしか分からないだろうがそれは無数の光の糸の様で。
光を受けながらアンバーの意識は彷徨う。
頭に浮かぶのはサンド子爵邸…
自分が立派に増改築する前の小さなサンド子爵邸だ。
…胸が苦しいのは?
『もし私が美しければ
閨勤侍女に旦那様を奪われることなどなかったのに――』
そうだった。
いつも控えめに微笑んでいた母上が
たった1度だけ
独り泣くのを見た――
母上が苦しんでいる事に気付いていたのに
母上が微笑で誤魔化している以上気付かぬ振りをするべきだと
私は『母さん』に愛想よく接し
兄さんを助けた。
母上が自殺してしまった時激しく後悔したけど
『アレは平民の血が入ってる分能力が低い。
優秀なお前がサポートしてやってくれ』
そう言う父に愛されたくて
私が兄さんを助ける度褒めてくれるのが嬉しくて
ただ父の愛を得る為に
兄さんを助け続けた。
母上の為にも母上が得られなかった父の愛を私が得なければならないと――
『母さん』に対して不満を口にしなかった母は生前父に1つだけ要求していた。
私にサンド子爵家を継がせる事。
父も『勿論』と約束した。
そして母の実家から多額の援助を受けた。
それなのに父は兄さんに家督を譲った。
『アレは能力が低くて他の事は出来ない。
お前なら血筋だって立派なのだし優秀なのだからどうとでも出来るだろう。
だからアレに譲ってやってくれ。
アレが長男なのだし。
そしてアレをサポートし続けてやってくれ』
使用人として一生をダメ兄に捧げろ
当然の様に私に要求した父。
父の後ろにはいつも『母さん』がいて
父は『母さん』のご機嫌取りに必死だった。
それが分かっていながら私は兄を助け続けた。
母上とのたった1つの約束さえ反故にした父の愛が欲しかった。
『母さん』が突然死し、父もその後を追う様に亡くなった後も。
兄さんに対して愛情など無い。
当たり前の様に異母弟を頼る情けない男。
ただのダメ人間。
だけど兄さんを見る度
亡くなった父を思い出す。
思い出して助けてしまう。
亡くなってまで父の愛欲しさに。
父は愛した『母さん』の息子である兄さんしか愛していなかったのだろうととっくに気付いていながら。
『済まないプルプラ…
ルフスは私の母上に似ている…
美しい君に似れば良かったものを何故…』
『アンバーったら
どうして謝るの?
愛するあなたのお母様に似てくれて嬉しい!
ほら、笑った顔がとても可愛いわ!』
『妖精族の君には解らないだろうけど
人間界では美は力だ。
醜い者は無価値だ。
ルフスは醜い…
きっと誰とも結婚出来ない。
もし出来ても母上の様に不幸になるだけだ』
『もし私が美しければ――』
母上のあの声が私に根付いている。
実際容姿は人生のあらゆる場面を左右する。
それが現実だ。
不幸が約束された娘を見るのが辛かった。
だから避け続けた。
プルプラが生きていれば違ったんだろう…
だがプルプラを失った私は娘から
その惨めな人生から逃げたのだ――
(だが信じられない事だがアルゲンテウス辺境伯閣下がルフスを望んでいる!
望まれて結婚出来る!
幸せになれるのだ!
だったら私は
もうルフスを見る度辛い気持ちにならなくていい!
母上と違って幸せを掴める娘を祝いたい!
父として…ハッ!?)
頭頂部から下へ徐々に光が消えていく。
光が消えていくほどに喪失感が増していく。
これは一体――?
「驚いたわ!
遺伝情報消去魔法よ!
この魔法が使えるなんて――」
不意に良く響く声がする。
カーマイン子爵は体が全く動かせないので
声のする方向を見れないが人々の騒めきが
声の主が誰かを教えてくれる。
「なッ!?
前アルゲンテウス辺境伯夫人!?」
「心労の為臥せっておられたのでは…」
「前辺境伯閣下の怪我を悲しんで老婆の様に老け込んでしまわれていたのに…
すっかりかつての美貌を取り戻し女盛りの輝きが眩し‥ハッ!?」
「前アルゲンテウス辺境伯閣下ッ!?」
「おお!夢では‥
痛ッ!夢じゃない!」
「すっかり元気になられて!」
「いや…むしろお怪我をされる前よりも若々しく覇気に満ち溢れておられるッ!」
「素晴らしい!
あぁ何と良き日!」
(前アルゲンテウス辺境伯閣下が夫人と共に現れたのか!?
まさか…命が尽きるのは時間の問題と言われていたはず…)
夫妻が皆の声に応えたのかワーッと歓声が上がる。
そして近付いて来たのか近距離で辺境伯一家の会話が聞こえ
カーマイン子爵は今何が起こっているのか知ることとなる――
頭頂から足の先まで。
照射されている者にしか分からないだろうがそれは無数の光の糸の様で。
光を受けながらアンバーの意識は彷徨う。
頭に浮かぶのはサンド子爵邸…
自分が立派に増改築する前の小さなサンド子爵邸だ。
…胸が苦しいのは?
『もし私が美しければ
閨勤侍女に旦那様を奪われることなどなかったのに――』
そうだった。
いつも控えめに微笑んでいた母上が
たった1度だけ
独り泣くのを見た――
母上が苦しんでいる事に気付いていたのに
母上が微笑で誤魔化している以上気付かぬ振りをするべきだと
私は『母さん』に愛想よく接し
兄さんを助けた。
母上が自殺してしまった時激しく後悔したけど
『アレは平民の血が入ってる分能力が低い。
優秀なお前がサポートしてやってくれ』
そう言う父に愛されたくて
私が兄さんを助ける度褒めてくれるのが嬉しくて
ただ父の愛を得る為に
兄さんを助け続けた。
母上の為にも母上が得られなかった父の愛を私が得なければならないと――
『母さん』に対して不満を口にしなかった母は生前父に1つだけ要求していた。
私にサンド子爵家を継がせる事。
父も『勿論』と約束した。
そして母の実家から多額の援助を受けた。
それなのに父は兄さんに家督を譲った。
『アレは能力が低くて他の事は出来ない。
お前なら血筋だって立派なのだし優秀なのだからどうとでも出来るだろう。
だからアレに譲ってやってくれ。
アレが長男なのだし。
そしてアレをサポートし続けてやってくれ』
使用人として一生をダメ兄に捧げろ
当然の様に私に要求した父。
父の後ろにはいつも『母さん』がいて
父は『母さん』のご機嫌取りに必死だった。
それが分かっていながら私は兄を助け続けた。
母上とのたった1つの約束さえ反故にした父の愛が欲しかった。
『母さん』が突然死し、父もその後を追う様に亡くなった後も。
兄さんに対して愛情など無い。
当たり前の様に異母弟を頼る情けない男。
ただのダメ人間。
だけど兄さんを見る度
亡くなった父を思い出す。
思い出して助けてしまう。
亡くなってまで父の愛欲しさに。
父は愛した『母さん』の息子である兄さんしか愛していなかったのだろうととっくに気付いていながら。
『済まないプルプラ…
ルフスは私の母上に似ている…
美しい君に似れば良かったものを何故…』
『アンバーったら
どうして謝るの?
愛するあなたのお母様に似てくれて嬉しい!
ほら、笑った顔がとても可愛いわ!』
『妖精族の君には解らないだろうけど
人間界では美は力だ。
醜い者は無価値だ。
ルフスは醜い…
きっと誰とも結婚出来ない。
もし出来ても母上の様に不幸になるだけだ』
『もし私が美しければ――』
母上のあの声が私に根付いている。
実際容姿は人生のあらゆる場面を左右する。
それが現実だ。
不幸が約束された娘を見るのが辛かった。
だから避け続けた。
プルプラが生きていれば違ったんだろう…
だがプルプラを失った私は娘から
その惨めな人生から逃げたのだ――
(だが信じられない事だがアルゲンテウス辺境伯閣下がルフスを望んでいる!
望まれて結婚出来る!
幸せになれるのだ!
だったら私は
もうルフスを見る度辛い気持ちにならなくていい!
母上と違って幸せを掴める娘を祝いたい!
父として…ハッ!?)
頭頂部から下へ徐々に光が消えていく。
光が消えていくほどに喪失感が増していく。
これは一体――?
「驚いたわ!
遺伝情報消去魔法よ!
この魔法が使えるなんて――」
不意に良く響く声がする。
カーマイン子爵は体が全く動かせないので
声のする方向を見れないが人々の騒めきが
声の主が誰かを教えてくれる。
「なッ!?
前アルゲンテウス辺境伯夫人!?」
「心労の為臥せっておられたのでは…」
「前辺境伯閣下の怪我を悲しんで老婆の様に老け込んでしまわれていたのに…
すっかりかつての美貌を取り戻し女盛りの輝きが眩し‥ハッ!?」
「前アルゲンテウス辺境伯閣下ッ!?」
「おお!夢では‥
痛ッ!夢じゃない!」
「すっかり元気になられて!」
「いや…むしろお怪我をされる前よりも若々しく覇気に満ち溢れておられるッ!」
「素晴らしい!
あぁ何と良き日!」
(前アルゲンテウス辺境伯閣下が夫人と共に現れたのか!?
まさか…命が尽きるのは時間の問題と言われていたはず…)
夫妻が皆の声に応えたのかワーッと歓声が上がる。
そして近付いて来たのか近距離で辺境伯一家の会話が聞こえ
カーマイン子爵は今何が起こっているのか知ることとなる――
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