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30 幸せです
とある新王国にて――
「‥にしても驚きね。
このアルゲンテウス王国全体に結界を広げちゃうなんて。
しかも内容もアップデートされて
妖精王の他に悪心を持った者も入れなくしちゃうなんて」
感心の溜息に心情を乗せた前辺境伯夫人は今や王妃だ。
もちろん前辺境伯が王である。
ラルウァとルフスは王太子夫妻だ。
そう、
アルゲンテウス辺境領は今はアルゲンテウス王国王都。
数年前辺境伯家はアルブム王国から独立したのだ。
何故にと言えば――
アルブム王国王宮に結婚の報告に出向いたラルウァをルフス。
そこでルフスの美しさに懸想した王が側妃になれと王命を出した為
怒った辺境伯家はその場で独立を宣言したのだ。
アルブム王国の領主達が全員アルゲンテウス王国に忠誠を誓った為
国名と王家と王都が変わっただけ――
つまりアルブム王国がそのままアルゲンテウス王国になったのだ。
いや、大きな違いがある。
祝福の力が国全体に行き渡り
国民の幸福度は爆上がりしている。
一領主としてアルゲンテウス王国に属する事になった元アルブム王家も脱帽だ。
文句一つ言えない。
言えば民に消される。
さぞかし無念だろうと言えばそんな事ない。
自他共に認める無能王のやらかしによって
崩壊寸前だったアルブムは帝国から属国に下れと要求されており。
帝国の侵略を待つか
戦わず降伏するかで頭を悩ませており
アルゲンテウス辺境伯を警戒して慎重になっている帝国がいつ攻めて来てもおかしくないヒヤヒヤな毎日から解放されてお茶も美味しい今日この頃である。
元アルブム王太子に至ってはラルウァの側近として嬉々として働いている。
(よ、舎弟の鑑!)
従者Bと側近No.1の座を巡っての小競り合いも名物になっている。
王が妃に答える。
「そうだな。
ルフスの魔力は素晴らし過ぎる。
妖精王は何度も侵入しようと試みては弾かれ今ではもう諦めざるを得ない様だ。
つまり妖精王より魔力量、技術共に上だという事だ」
「やっぱりルフスちゃんが妖精王よね。
妖精界には『王家』はなくて完全実力主義。
その時最も強い妖精が王となるのだもの。
ルフスちゃんが妖精王で間違いないわ!」
「言うな言うな。
ラルウァに聞かれたら
本気で敵認定される」
「そうね。
気をつけなきゃ。
あの子ったらルフスちゃんの事となると
冗談通じないから」
「私が何ですか?」
「あらラルウァ!」
「噂をすればだな」
王と王妃がお茶をしているところへ王太子夫妻ラルウァとルフスが現れる。
王妃が視線を動かせば侍女がサッと2人にお茶を用意する。
「それで隣国の王太子の用事はやっぱり?」
「はい。
受け取らず灰にしました」
微笑みを湛えたルフスが答える。
灰にしたのは妖精王からの手紙である。
結界突破が無理だと悟った妖精王は
妖精王を信仰する王国の王族に手紙を届けさせるのだ。
最初の頃は屈強な妖精騎士に届けさせていたのだが
ルフスに心酔し
ラルウァと仲良くなり
アルゲンテウス王国の居心地の良さに惚れ込んだ彼等が帰って来なくなった為
自分を信仰している国の妖精殿に現れては
手紙を届ける様命令しているらしい。
妖精王様の命を受けた王族達は
不思議に思いながらも
名誉と責任感に燃えながらルフスを訪問し
妖精騎士と似た様な結果になる。
王族である為泣く泣く国に帰って行くが…
「隣国は妖精王の白白側近を信仰していて白白側近は今この国に居ますから
隣国王太子は本人を前に感涙に咽びながら祈りを捧げています」
白白側近も手紙を届けに来て
【今後はルフス様に忠誠を誓います】
と居ついた1人。
白白側近を主とする妖精達も次々にやって来たので
アルゲンテウス王国は妖精率がグンと上がっている。
妖精族は皆見目麗しいがラルウァが嫉妬する事は無い。
ルフスが容姿に靡かない事を知っている。
妖精達の中でもルフスとラルウァの美貌は異次元らしく
口々に褒め称えられる。
だがルフスは1度もラルウァの容姿に言及した事が無い。
内面を愛してくれる。
それがどれだけ嬉しい事か!
「彼は国を捨てるのではないかな…」
「隣国も属国になりたいと言って来るかもしれないわね」
王妃が眉を顰める。
今現在数か国の周辺国が属国申請中である。
巨大化する野望を持たないアルゲンテウス王家には憂鬱の種だ。
沈みかけた空気を破るのは
「母上、父上!
お仕事お済みですか」
しっかりとした滑舌で
大人びた質問を繰り出したのは
よちよち歩きの王子様。
ルフスとラルウァの第一子だ。
御年2才である。
「まだよ。
今は一休みしているの。
アウルムはお昼寝中だったのね」
「はい」
・・・・・・・・
「ッぅわ~~~んッ」
妙な沈黙の後
堰を切った様に?
火が付いたように?
泣き出す小さな王子様
さっきまでのお澄ましモードはどこへやら…
「どッどうし‥」
「ははうえッえッえッ
ぼく、きらいなった‥
うわあああ~~~ん」
「嫌いになる訳ないわ
大好きよ」
「って、きのうはっ
いっぱい、だっこっ
おッおッおッ…」
(ええ~~~ッ!?
昨日は構い過ぎて
盛大にイヤイヤされたから
気を付けてたのに?
幼児の気持ちが
まるで分からない!)
自分は
母だった人にも
父だった人にも
抱っこされた事が無く
空気を読んで
甘える事も出来なく…
(どうしよう
どうしたらいいの
私の子供の頃は
参考にならないわ
と言うかしちゃダメ
え~とえ~と…と…
ええいッ)
ルフスは屈んで
両手を広げてみる。
――と、
(ッ!!)
恐る恐る開いた手の中に
もう息子がいる
しっかりしがみついて来る温度の高い存在
な、何でちょっと怒っているの?
戸惑いながらふわりと抱きしめれば
―――ああ、
溢れてくる
自分の内から
とんでもない何かが
きっと『愛』が
…あ…
息子を抱きしめているルフスを
ラルウァが抱きしめて
「アウルムはママが好き過ぎるんだな。
私に似過ぎだ」
耳元で囁かれて
(この人、声も素敵)
と妙な事を思う。
「ふふ、寝てしまいました」
「昼寝不足‥いや
甘え不足だったんだな
いやルフス不足?
私もよく陥るヤツだ」
まぁ、いつもベッタリなくせに何言うの
と母が笑い
もう濡れ落ち葉か?
ルフスに嫌われるぞ
と父がウインク
夫が更にぎゅっと
抱きしめて来る
どんどん溢れて来る
あたたかいものが
ルフスの瞳を濡らす。
…幸せです
心の中で呟いたのに
なぜ聞こえたのかな
ラルウァが
私もだよと囁いた…
謎の生物はルフスの腕の中で
すやすや寝息を立てている。
「‥にしても驚きね。
このアルゲンテウス王国全体に結界を広げちゃうなんて。
しかも内容もアップデートされて
妖精王の他に悪心を持った者も入れなくしちゃうなんて」
感心の溜息に心情を乗せた前辺境伯夫人は今や王妃だ。
もちろん前辺境伯が王である。
ラルウァとルフスは王太子夫妻だ。
そう、
アルゲンテウス辺境領は今はアルゲンテウス王国王都。
数年前辺境伯家はアルブム王国から独立したのだ。
何故にと言えば――
アルブム王国王宮に結婚の報告に出向いたラルウァをルフス。
そこでルフスの美しさに懸想した王が側妃になれと王命を出した為
怒った辺境伯家はその場で独立を宣言したのだ。
アルブム王国の領主達が全員アルゲンテウス王国に忠誠を誓った為
国名と王家と王都が変わっただけ――
つまりアルブム王国がそのままアルゲンテウス王国になったのだ。
いや、大きな違いがある。
祝福の力が国全体に行き渡り
国民の幸福度は爆上がりしている。
一領主としてアルゲンテウス王国に属する事になった元アルブム王家も脱帽だ。
文句一つ言えない。
言えば民に消される。
さぞかし無念だろうと言えばそんな事ない。
自他共に認める無能王のやらかしによって
崩壊寸前だったアルブムは帝国から属国に下れと要求されており。
帝国の侵略を待つか
戦わず降伏するかで頭を悩ませており
アルゲンテウス辺境伯を警戒して慎重になっている帝国がいつ攻めて来てもおかしくないヒヤヒヤな毎日から解放されてお茶も美味しい今日この頃である。
元アルブム王太子に至ってはラルウァの側近として嬉々として働いている。
(よ、舎弟の鑑!)
従者Bと側近No.1の座を巡っての小競り合いも名物になっている。
王が妃に答える。
「そうだな。
ルフスの魔力は素晴らし過ぎる。
妖精王は何度も侵入しようと試みては弾かれ今ではもう諦めざるを得ない様だ。
つまり妖精王より魔力量、技術共に上だという事だ」
「やっぱりルフスちゃんが妖精王よね。
妖精界には『王家』はなくて完全実力主義。
その時最も強い妖精が王となるのだもの。
ルフスちゃんが妖精王で間違いないわ!」
「言うな言うな。
ラルウァに聞かれたら
本気で敵認定される」
「そうね。
気をつけなきゃ。
あの子ったらルフスちゃんの事となると
冗談通じないから」
「私が何ですか?」
「あらラルウァ!」
「噂をすればだな」
王と王妃がお茶をしているところへ王太子夫妻ラルウァとルフスが現れる。
王妃が視線を動かせば侍女がサッと2人にお茶を用意する。
「それで隣国の王太子の用事はやっぱり?」
「はい。
受け取らず灰にしました」
微笑みを湛えたルフスが答える。
灰にしたのは妖精王からの手紙である。
結界突破が無理だと悟った妖精王は
妖精王を信仰する王国の王族に手紙を届けさせるのだ。
最初の頃は屈強な妖精騎士に届けさせていたのだが
ルフスに心酔し
ラルウァと仲良くなり
アルゲンテウス王国の居心地の良さに惚れ込んだ彼等が帰って来なくなった為
自分を信仰している国の妖精殿に現れては
手紙を届ける様命令しているらしい。
妖精王様の命を受けた王族達は
不思議に思いながらも
名誉と責任感に燃えながらルフスを訪問し
妖精騎士と似た様な結果になる。
王族である為泣く泣く国に帰って行くが…
「隣国は妖精王の白白側近を信仰していて白白側近は今この国に居ますから
隣国王太子は本人を前に感涙に咽びながら祈りを捧げています」
白白側近も手紙を届けに来て
【今後はルフス様に忠誠を誓います】
と居ついた1人。
白白側近を主とする妖精達も次々にやって来たので
アルゲンテウス王国は妖精率がグンと上がっている。
妖精族は皆見目麗しいがラルウァが嫉妬する事は無い。
ルフスが容姿に靡かない事を知っている。
妖精達の中でもルフスとラルウァの美貌は異次元らしく
口々に褒め称えられる。
だがルフスは1度もラルウァの容姿に言及した事が無い。
内面を愛してくれる。
それがどれだけ嬉しい事か!
「彼は国を捨てるのではないかな…」
「隣国も属国になりたいと言って来るかもしれないわね」
王妃が眉を顰める。
今現在数か国の周辺国が属国申請中である。
巨大化する野望を持たないアルゲンテウス王家には憂鬱の種だ。
沈みかけた空気を破るのは
「母上、父上!
お仕事お済みですか」
しっかりとした滑舌で
大人びた質問を繰り出したのは
よちよち歩きの王子様。
ルフスとラルウァの第一子だ。
御年2才である。
「まだよ。
今は一休みしているの。
アウルムはお昼寝中だったのね」
「はい」
・・・・・・・・
「ッぅわ~~~んッ」
妙な沈黙の後
堰を切った様に?
火が付いたように?
泣き出す小さな王子様
さっきまでのお澄ましモードはどこへやら…
「どッどうし‥」
「ははうえッえッえッ
ぼく、きらいなった‥
うわあああ~~~ん」
「嫌いになる訳ないわ
大好きよ」
「って、きのうはっ
いっぱい、だっこっ
おッおッおッ…」
(ええ~~~ッ!?
昨日は構い過ぎて
盛大にイヤイヤされたから
気を付けてたのに?
幼児の気持ちが
まるで分からない!)
自分は
母だった人にも
父だった人にも
抱っこされた事が無く
空気を読んで
甘える事も出来なく…
(どうしよう
どうしたらいいの
私の子供の頃は
参考にならないわ
と言うかしちゃダメ
え~とえ~と…と…
ええいッ)
ルフスは屈んで
両手を広げてみる。
――と、
(ッ!!)
恐る恐る開いた手の中に
もう息子がいる
しっかりしがみついて来る温度の高い存在
な、何でちょっと怒っているの?
戸惑いながらふわりと抱きしめれば
―――ああ、
溢れてくる
自分の内から
とんでもない何かが
きっと『愛』が
…あ…
息子を抱きしめているルフスを
ラルウァが抱きしめて
「アウルムはママが好き過ぎるんだな。
私に似過ぎだ」
耳元で囁かれて
(この人、声も素敵)
と妙な事を思う。
「ふふ、寝てしまいました」
「昼寝不足‥いや
甘え不足だったんだな
いやルフス不足?
私もよく陥るヤツだ」
まぁ、いつもベッタリなくせに何言うの
と母が笑い
もう濡れ落ち葉か?
ルフスに嫌われるぞ
と父がウインク
夫が更にぎゅっと
抱きしめて来る
どんどん溢れて来る
あたたかいものが
ルフスの瞳を濡らす。
…幸せです
心の中で呟いたのに
なぜ聞こえたのかな
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