33 / 117
2 四花繚乱
32 ハート公女ペルシクム 2
「わきまえなさい!
何を勘違いしているのか知らないけれど、お前はわたくしの侍女なのよ?
主であるわたくしに対する口の利き方も出来ないでよく侍女試験に合格したものだわね?」
「‥ッ!
な、生意気な!
あんたなんか殺してやるッ!」
いつも押し黙っているから見た目通り頭空っぽのお人形だと侮っていたペルシクムにピシャリと叱られ、イキシアはブチ切れる。
物凄い形相で主であるペルシクムに掴み掛かろうとする――が、あっという間に数人の宮廷騎士達に取り押さえられる。
宮廷騎士達は庭園のそこここに配置されていて、異常を察知し直ぐに動いたのだ。
ちなみにハート公国の護衛騎士は一歩も動けずポカンと見ていただけだ。
「きゃあッ!
痛いじゃないのッ!
離せッ、離しなさい!
私を誰だと思っているの!?
今は侍女なんかしてるけど、本当は公女――ハート公王の娘よ!
そこのペルシクムの姉なんだからッ!」
両脇を宮廷騎士に拘束されジタバタと足を鳴らしながらイキシアが怒鳴り散らす。
「何ですって!?
お前、よくもそんな不敬な事を!」
突然おかしな事を言い出したイキシアに、ペルシクムは怒りで青褪める。
「本当の事よ!
あんたが知らないだけ!
私の母が亡くなる時私に打ち明けたのよ!
私の父親はハート公王!
二人がたっぷり愛し合った結果この私が生まれたのよ!
本当なら、今日皇帝陛下にお会いするのは私のはずだったのよ!
皇后陛下となるべく選ばれるのは、この私のはずだったのよ!
それなのに何であんたなんかが!?
あのアバズレの娘なんかがどうして!?
あぁもう離せったら!
あの女殺してやるんだから!
妹のクセに私の人生を奪いやがって!」
尚もギャアギャア騒ぎ立てるイキシアを宮廷騎士が連行していく。
その様子を目で追いながら茫然とするペルシクム。
一人の宮廷騎士が『西の城までお送り致します』と声を掛けて来るが、ペルシクムは丁重に断る。
「結構よ…どうやらこの庭園はあなた達に守られ安全の様だから、今しばらく散策させて下さいな。
…実は一人になりたかったのだけど、完全に一人とはいかなくて窮屈に思っていたところだったの。
侍女も護衛騎士もいない本当の一人で散歩するなんて中々出来ない冒険だわ」
「‥ッ‥
ハート公女殿下‥」
声も体も震えているのに平気を装うペルシクムに、宮廷騎士は胸を掴まれた様な感覚を覚える。
公女として恥ずかしくない様にあろうとする姿のいじらしさが宮廷騎士を捉えたのである。
困惑した様子の宮廷騎士の後ろからペルシクムの護衛騎士がひょっこり顔を出し
「あ、あの、姫様、
私が護衛を致しま‥」
「‥お前ね、はぁ…
先程宮廷騎士の方達が止めてくれなかったらわたくしはイキシアに害されていたわよね?
お前はわたくしの護衛騎士でありながらイキシアを止めなかった」
「ま、まさか侍女である彼女が主である姫様を襲うなんて思わなくてッ」
「どんな状況でどんな相手だろうと職務を全うするべきよ。
わたくしはハート公女。
わたくしだけの身ではないのよ。
お前にわたくしの護衛騎士は任せられないわ」
ガックリ肩を落とす護衛騎士。
『では、庭園入り口でお待ちします』と言ってすごすごと戻って行く。
(‥そこで戻るのね‥はぁ‥本当に護衛騎士に向かないのね‥まぁ仕方ないわ)
護衛騎士とは逆方向に歩き出すペルシクム。
頭の中はさっきのイキシアの主張がグルグル回っている。
(‥嘘をついている感じじゃなかった‥
事実かどうかは分からないけど、イキシアは本気で信じているのね‥
だからわたくしが憎いというワケね。
わたくしの位置は本当は自分のものなのにって。
わたくしの母がアレだから余計にそう思うんでしょう。
自分の方が公女として相応しいのにって…)
「あ、あの、突然声を掛けさせて頂く非礼をどうぞお許しくださいませ…
ハート公女殿下」
綺麗に整備された庭園の少し離れた迷路の様な立ち入り禁止区画の前で亜麻色の髪の若い女性が深く礼をしている。
ペルシクムは彼女に見覚えがある。
何を勘違いしているのか知らないけれど、お前はわたくしの侍女なのよ?
主であるわたくしに対する口の利き方も出来ないでよく侍女試験に合格したものだわね?」
「‥ッ!
な、生意気な!
あんたなんか殺してやるッ!」
いつも押し黙っているから見た目通り頭空っぽのお人形だと侮っていたペルシクムにピシャリと叱られ、イキシアはブチ切れる。
物凄い形相で主であるペルシクムに掴み掛かろうとする――が、あっという間に数人の宮廷騎士達に取り押さえられる。
宮廷騎士達は庭園のそこここに配置されていて、異常を察知し直ぐに動いたのだ。
ちなみにハート公国の護衛騎士は一歩も動けずポカンと見ていただけだ。
「きゃあッ!
痛いじゃないのッ!
離せッ、離しなさい!
私を誰だと思っているの!?
今は侍女なんかしてるけど、本当は公女――ハート公王の娘よ!
そこのペルシクムの姉なんだからッ!」
両脇を宮廷騎士に拘束されジタバタと足を鳴らしながらイキシアが怒鳴り散らす。
「何ですって!?
お前、よくもそんな不敬な事を!」
突然おかしな事を言い出したイキシアに、ペルシクムは怒りで青褪める。
「本当の事よ!
あんたが知らないだけ!
私の母が亡くなる時私に打ち明けたのよ!
私の父親はハート公王!
二人がたっぷり愛し合った結果この私が生まれたのよ!
本当なら、今日皇帝陛下にお会いするのは私のはずだったのよ!
皇后陛下となるべく選ばれるのは、この私のはずだったのよ!
それなのに何であんたなんかが!?
あのアバズレの娘なんかがどうして!?
あぁもう離せったら!
あの女殺してやるんだから!
妹のクセに私の人生を奪いやがって!」
尚もギャアギャア騒ぎ立てるイキシアを宮廷騎士が連行していく。
その様子を目で追いながら茫然とするペルシクム。
一人の宮廷騎士が『西の城までお送り致します』と声を掛けて来るが、ペルシクムは丁重に断る。
「結構よ…どうやらこの庭園はあなた達に守られ安全の様だから、今しばらく散策させて下さいな。
…実は一人になりたかったのだけど、完全に一人とはいかなくて窮屈に思っていたところだったの。
侍女も護衛騎士もいない本当の一人で散歩するなんて中々出来ない冒険だわ」
「‥ッ‥
ハート公女殿下‥」
声も体も震えているのに平気を装うペルシクムに、宮廷騎士は胸を掴まれた様な感覚を覚える。
公女として恥ずかしくない様にあろうとする姿のいじらしさが宮廷騎士を捉えたのである。
困惑した様子の宮廷騎士の後ろからペルシクムの護衛騎士がひょっこり顔を出し
「あ、あの、姫様、
私が護衛を致しま‥」
「‥お前ね、はぁ…
先程宮廷騎士の方達が止めてくれなかったらわたくしはイキシアに害されていたわよね?
お前はわたくしの護衛騎士でありながらイキシアを止めなかった」
「ま、まさか侍女である彼女が主である姫様を襲うなんて思わなくてッ」
「どんな状況でどんな相手だろうと職務を全うするべきよ。
わたくしはハート公女。
わたくしだけの身ではないのよ。
お前にわたくしの護衛騎士は任せられないわ」
ガックリ肩を落とす護衛騎士。
『では、庭園入り口でお待ちします』と言ってすごすごと戻って行く。
(‥そこで戻るのね‥はぁ‥本当に護衛騎士に向かないのね‥まぁ仕方ないわ)
護衛騎士とは逆方向に歩き出すペルシクム。
頭の中はさっきのイキシアの主張がグルグル回っている。
(‥嘘をついている感じじゃなかった‥
事実かどうかは分からないけど、イキシアは本気で信じているのね‥
だからわたくしが憎いというワケね。
わたくしの位置は本当は自分のものなのにって。
わたくしの母がアレだから余計にそう思うんでしょう。
自分の方が公女として相応しいのにって…)
「あ、あの、突然声を掛けさせて頂く非礼をどうぞお許しくださいませ…
ハート公女殿下」
綺麗に整備された庭園の少し離れた迷路の様な立ち入り禁止区画の前で亜麻色の髪の若い女性が深く礼をしている。
ペルシクムは彼女に見覚えがある。
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
【 お知らせ 】
先日、近況ボードにも
お知らせしました通り
2026年4月に
完結済みのお話の多数を
一旦closeいたします。
誤字脱字などを修正して
再掲載をするつもりですが
再掲載しない作品もあります。
再掲載の時期は決まっておりません。
表現の変更などもあり得ます。
他の作品も同様です。
ご了承いただけますようお願いいたします。
ユユ
【 お話の内容紹介 】
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定