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2 四花繚乱
42 保留
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「実は30年の間、縁談話は多数あったのです。
わたくしは修道院内で修道女の様に作業しておりましたので修道院に訪ねて来られる方達に本物の修道女だと思われていたものですから」
「なッッッ!?」
『眠りの塔』を出て、皇帝の私室でお茶を楽しみながら話し始めたソルの言葉は皇帝には信じ難いものだ。
「ブリッジ修道院はかなり厳しい場所だと聞くが!?
身内でさえも修道女に会う事は難しいと!
す、少なくとも縁談話が飛び交う様な場所ではないはずでは!?」
「ええ、でも長く居りますと熱心に修道院を訪ねて来られる御方とは顔見知りとなります――わたくしの様にずっとベールを被っている者にでも是非伴侶にと仰る奇特な御方も一定数――いえ、かなりいらっしゃいました…ベールのせいで逆に興味を持たれたのでしょうか」
「いや、もしベールを被っていなかったら、世界中の男が求婚に詰め掛けパニック状態になっていただろう…ベールを被っていてくれて助かった…」
「え?」
「い、いや!
それで、縁談話はどう…断った、のだな?」
「ええ、全てお断りしました。
わたくしは立場的に断る選択肢しかなかったし、断る事を残念だという気持ちも一切ありませんでした。
お優しい騎士、見目麗しい商人、裕福な子爵、学者、薬師――
本当に、わたくしには勿体ないお話の数々でしたが」
「全然勿体なくないだろう…世界でただ一人、金髪金眼を持つ女神の様に美しい君なのだから」
「え?」
「断ってくれて良かった――いや、‥‥‥‥
俺も断られるのか?」
「ッッ」
憂いを帯びた銀眼‥‥
魅惑の眼差しにたじろぎながら、ソルは言葉を続ける。
「いえ…ええ、…
やはり御世継ぎの問題は無視できません。
あなた様はカード帝国の皇帝陛下なのですから。
あなた様の婚姻は、個人的な事には出来ないはずです。
そしてその問題の他にも――
わたくしにとってどうしても無視出来ない大きな問題があります。
記憶が戻った以上、わたくしはこの問題を…」
「それは何だ!?
どんな問題であろうが俺が蹴散らす!」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥ソル姫ッ」
「その話は、後ほど。
短い時間で説明するのは難しいので――
もうすぐ晩餐会でございましょう?」
「え――ああ、もうそんな時間か――
ふぅ、君と居ると飛ぶように時間が過ぎてしまうな‥
分かった――が――
晩餐会では俺が君をエスコートする!」
「――え?」
「もうハート公妃のふりをする必要は無い。
君をハート公王側には行かせない。
君は俺の傍に――隣にいるんだ」
くすっ‥
ソルが笑うので、皇帝の時が止まる。
さっきの笑い方もすごく可愛かったが、今の柔らかい微笑は――
本当に女神過ぎる!
頭は真っ白に、顔は真っ赤になったまま微動だに出来ない…
「…仰せのままに」
微笑んだままそう言うソル――皇帝の心はブワッと沸き立つ!
(ッ、その魅力的過ぎる微笑みは何事だ!?
一体、俺をどうするつもりだ!?
もう晩餐会などやめて、このままずっと君を見つめていたいッ!)
盛り上がる皇帝の心!
対してソルは――
(見た目は繊細で華やかな美貌なのに中身は武骨で真っ直ぐ――そうそう、子供の頃も天使の様な御様子なのに――ある日わたくしがお庭を散歩していたら走っていらして『の、喉が渇いているだろう、水分不足は良くないから、俺の庭で水分補給をしていくといい…すぐそこだから!』なんて仰るから付いて行ったらお庭に素敵なお茶会の用意がされていて…たくさんのお菓子が並んでいたからルーナエ皇太子殿下もわたくしと同じでお菓子がお好きなのかと思ったら『俺は甘い物が苦手だ』と…『喉を潤すついでに食べるといい』と――本当に昔から何て可愛い御方…)
やっぱり盛り上がっている!
一見、サッサと結婚しちゃえよ!な二人だけど。
話はそんなに単純じゃない。
お世継ぎ問題の他にもソルには無視できない理由があるし、それに――ソルは自分の人生は恋愛や結婚とは無縁だと強く強く確信しているのだ。
わたくしは修道院内で修道女の様に作業しておりましたので修道院に訪ねて来られる方達に本物の修道女だと思われていたものですから」
「なッッッ!?」
『眠りの塔』を出て、皇帝の私室でお茶を楽しみながら話し始めたソルの言葉は皇帝には信じ難いものだ。
「ブリッジ修道院はかなり厳しい場所だと聞くが!?
身内でさえも修道女に会う事は難しいと!
す、少なくとも縁談話が飛び交う様な場所ではないはずでは!?」
「ええ、でも長く居りますと熱心に修道院を訪ねて来られる御方とは顔見知りとなります――わたくしの様にずっとベールを被っている者にでも是非伴侶にと仰る奇特な御方も一定数――いえ、かなりいらっしゃいました…ベールのせいで逆に興味を持たれたのでしょうか」
「いや、もしベールを被っていなかったら、世界中の男が求婚に詰め掛けパニック状態になっていただろう…ベールを被っていてくれて助かった…」
「え?」
「い、いや!
それで、縁談話はどう…断った、のだな?」
「ええ、全てお断りしました。
わたくしは立場的に断る選択肢しかなかったし、断る事を残念だという気持ちも一切ありませんでした。
お優しい騎士、見目麗しい商人、裕福な子爵、学者、薬師――
本当に、わたくしには勿体ないお話の数々でしたが」
「全然勿体なくないだろう…世界でただ一人、金髪金眼を持つ女神の様に美しい君なのだから」
「え?」
「断ってくれて良かった――いや、‥‥‥‥
俺も断られるのか?」
「ッッ」
憂いを帯びた銀眼‥‥
魅惑の眼差しにたじろぎながら、ソルは言葉を続ける。
「いえ…ええ、…
やはり御世継ぎの問題は無視できません。
あなた様はカード帝国の皇帝陛下なのですから。
あなた様の婚姻は、個人的な事には出来ないはずです。
そしてその問題の他にも――
わたくしにとってどうしても無視出来ない大きな問題があります。
記憶が戻った以上、わたくしはこの問題を…」
「それは何だ!?
どんな問題であろうが俺が蹴散らす!」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥ソル姫ッ」
「その話は、後ほど。
短い時間で説明するのは難しいので――
もうすぐ晩餐会でございましょう?」
「え――ああ、もうそんな時間か――
ふぅ、君と居ると飛ぶように時間が過ぎてしまうな‥
分かった――が――
晩餐会では俺が君をエスコートする!」
「――え?」
「もうハート公妃のふりをする必要は無い。
君をハート公王側には行かせない。
君は俺の傍に――隣にいるんだ」
くすっ‥
ソルが笑うので、皇帝の時が止まる。
さっきの笑い方もすごく可愛かったが、今の柔らかい微笑は――
本当に女神過ぎる!
頭は真っ白に、顔は真っ赤になったまま微動だに出来ない…
「…仰せのままに」
微笑んだままそう言うソル――皇帝の心はブワッと沸き立つ!
(ッ、その魅力的過ぎる微笑みは何事だ!?
一体、俺をどうするつもりだ!?
もう晩餐会などやめて、このままずっと君を見つめていたいッ!)
盛り上がる皇帝の心!
対してソルは――
(見た目は繊細で華やかな美貌なのに中身は武骨で真っ直ぐ――そうそう、子供の頃も天使の様な御様子なのに――ある日わたくしがお庭を散歩していたら走っていらして『の、喉が渇いているだろう、水分不足は良くないから、俺の庭で水分補給をしていくといい…すぐそこだから!』なんて仰るから付いて行ったらお庭に素敵なお茶会の用意がされていて…たくさんのお菓子が並んでいたからルーナエ皇太子殿下もわたくしと同じでお菓子がお好きなのかと思ったら『俺は甘い物が苦手だ』と…『喉を潤すついでに食べるといい』と――本当に昔から何て可愛い御方…)
やっぱり盛り上がっている!
一見、サッサと結婚しちゃえよ!な二人だけど。
話はそんなに単純じゃない。
お世継ぎ問題の他にもソルには無視できない理由があるし、それに――ソルは自分の人生は恋愛や結婚とは無縁だと強く強く確信しているのだ。
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