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3 晩餐会
58 王女ソルの説明
スペード公王がさらに噛み砕いて説明し、公女達が頷く。
「つまり、『皇帝陛下が4公国の公女から皇后を選ぶ』というのは嘘…」
「ジョーカー王女殿下を連れて来させるための――餌…」
「こんな回りくどい事をしなくても、ジョーカー王女殿下が皇帝陛下にお会いしたいと主張すれば済んだのでは?」
ダイヤ公女の疑問にソルは丁寧に答える。
「――先ず第一に、わたくしは8才以前の記憶を失くしておりました。
全てを思い出したのはここ――カード宮殿の門をくぐった時です。
そう、ほんの数時間前の事です。
わたくしは自分が何者かも知らず、僅かな記憶も本当の記憶なのかただの夢なのか確証が持てませんでした。
ですから手紙を書いて、全てを皇帝陛下に委ねるしかなかったのです。
それに――」
ソルはハート公王に視線を向ける。
ハート公王は憧れ続けた金色の瞳を縋る様に見つめる。
ブリッジ修道院に預けてからは『『聖女の印を持つ者』は人前にその姿を見せてはいけない』との理由からずっとベールを被っており、ハート公王は実に30年ぶりにソルの姿を目にしたのである。
元々超絶美少女だったが成長したソルの美しさは想像の遥か遥か上で、しかも38才になろうというのにまだ20才そこそこのうら若き乙女の様――
今すぐ跪きその愛を乞いたいのに出来ないのは、常軌を逸した圧――銀眼にずっと睨まれ続けているからである。
「ハート公王陛下はわたくしに一度もお名乗りにならなかったので、わたくし自身も誰がわたくしをブリッジ修道院に預けたのか、今回、初めて知ったのです」
「そ、それは済まなかった!…金髪金眼の美し過ぎる君を知ってしまえば、誰もが君を欲しがるはず…だから君の事は絶対隠し通したかった!…私は君の口から情報が漏れる事を恐れたのだ」
「…ブリッジ修道院にはわたくしの様に世間から隠す為に預けられている女性が何人かいました――彼女達の多くは物心つく前に預けられ、わたくし同様、自分が何者かすら知らされず、知ろうとする事を禁じられておりました…それでも何かの拍子にご自分の出生を思い出したり推測したりして『自分は○○公王の隠し子だ』『自分は△△公王の不義の子なのか?』『××公王と話をさせて欲しい』などと言い出す御方もいらっしゃいました――そんな事を言い出した方々は不思議と体調を崩されて帰らぬ人となられました。
ブリッジ修道院に隠された者は自分を知ろうとする事、何かを要求する事は死罪でしたので、わたくしは何も言えなかったのです――『記憶を確かめたいから皇帝陛下にお会いしたい』などと口にすれば――今頃はこの世のどこにも居なかったでしょう」
「ひ、非道い」
「ブリッジ修道院が、そんな所だったなんて…!」
「人権無視」
「預けた人最低」
公女達の率直な言葉に4公王は青褪め顔を伏せる。
彼ら全員がブリッジ修道院に女性を隠している。
「だ、だが…
あ、話は違うのだが」
銀の視線にもはや物質的な圧で圧されながらハート公王は心配そうにソルに質問する。
「私は気が気ではないのだ――『『聖女の印を持つ者』は人前にその姿を見せてはいけない』のに君はその美しい姿を晒してしまっている――『聖女の印』が消えるまでは――満月の夜まではベールを被っていた方がいいのではないか?」
くすっ‥
ッッ!
王女ソルが笑うので、室内の空気が一変する。
「つまり、『皇帝陛下が4公国の公女から皇后を選ぶ』というのは嘘…」
「ジョーカー王女殿下を連れて来させるための――餌…」
「こんな回りくどい事をしなくても、ジョーカー王女殿下が皇帝陛下にお会いしたいと主張すれば済んだのでは?」
ダイヤ公女の疑問にソルは丁寧に答える。
「――先ず第一に、わたくしは8才以前の記憶を失くしておりました。
全てを思い出したのはここ――カード宮殿の門をくぐった時です。
そう、ほんの数時間前の事です。
わたくしは自分が何者かも知らず、僅かな記憶も本当の記憶なのかただの夢なのか確証が持てませんでした。
ですから手紙を書いて、全てを皇帝陛下に委ねるしかなかったのです。
それに――」
ソルはハート公王に視線を向ける。
ハート公王は憧れ続けた金色の瞳を縋る様に見つめる。
ブリッジ修道院に預けてからは『『聖女の印を持つ者』は人前にその姿を見せてはいけない』との理由からずっとベールを被っており、ハート公王は実に30年ぶりにソルの姿を目にしたのである。
元々超絶美少女だったが成長したソルの美しさは想像の遥か遥か上で、しかも38才になろうというのにまだ20才そこそこのうら若き乙女の様――
今すぐ跪きその愛を乞いたいのに出来ないのは、常軌を逸した圧――銀眼にずっと睨まれ続けているからである。
「ハート公王陛下はわたくしに一度もお名乗りにならなかったので、わたくし自身も誰がわたくしをブリッジ修道院に預けたのか、今回、初めて知ったのです」
「そ、それは済まなかった!…金髪金眼の美し過ぎる君を知ってしまえば、誰もが君を欲しがるはず…だから君の事は絶対隠し通したかった!…私は君の口から情報が漏れる事を恐れたのだ」
「…ブリッジ修道院にはわたくしの様に世間から隠す為に預けられている女性が何人かいました――彼女達の多くは物心つく前に預けられ、わたくし同様、自分が何者かすら知らされず、知ろうとする事を禁じられておりました…それでも何かの拍子にご自分の出生を思い出したり推測したりして『自分は○○公王の隠し子だ』『自分は△△公王の不義の子なのか?』『××公王と話をさせて欲しい』などと言い出す御方もいらっしゃいました――そんな事を言い出した方々は不思議と体調を崩されて帰らぬ人となられました。
ブリッジ修道院に隠された者は自分を知ろうとする事、何かを要求する事は死罪でしたので、わたくしは何も言えなかったのです――『記憶を確かめたいから皇帝陛下にお会いしたい』などと口にすれば――今頃はこの世のどこにも居なかったでしょう」
「ひ、非道い」
「ブリッジ修道院が、そんな所だったなんて…!」
「人権無視」
「預けた人最低」
公女達の率直な言葉に4公王は青褪め顔を伏せる。
彼ら全員がブリッジ修道院に女性を隠している。
「だ、だが…
あ、話は違うのだが」
銀の視線にもはや物質的な圧で圧されながらハート公王は心配そうにソルに質問する。
「私は気が気ではないのだ――『『聖女の印を持つ者』は人前にその姿を見せてはいけない』のに君はその美しい姿を晒してしまっている――『聖女の印』が消えるまでは――満月の夜まではベールを被っていた方がいいのではないか?」
くすっ‥
ッッ!
王女ソルが笑うので、室内の空気が一変する。
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