『わたくしを誰だとお思い?』~若く美しい姫君達には目もくれず38才偽修道女を選んだ引きこもり皇帝は渾身の求婚を無かったことにされる~

ハートリオ

文字の大きさ
59 / 117
3 晩餐会

58 王女ソルの説明

スペード公王がさらに噛み砕いて説明し、公女達が頷く。


「つまり、『皇帝陛下が4公国の公女から皇后を選ぶ』というのは嘘…」

「ジョーカー王女殿下を連れて来させるための――餌…」

「こんな回りくどい事をしなくても、ジョーカー王女殿下が皇帝陛下にお会いしたいと主張すれば済んだのでは?」


ダイヤ公女の疑問にソルは丁寧に答える。


「――先ず第一に、わたくしは8才以前の記憶を失くしておりました。
全てを思い出したのはここ――カード宮殿の門をくぐった時です。
そう、ほんの数時間前の事です。
わたくしは自分が何者かも知らず、僅かな記憶も本当の記憶なのかただの夢なのか確証が持てませんでした。
ですから手紙を書いて、全てを皇帝陛下に委ねるしかなかったのです。
それに――」


ソルはハート公王に視線を向ける。

ハート公王は憧れ続けた金色の瞳を縋る様に見つめる。

ブリッジ修道院に預けてからは『『聖女の印を持つ者』は人前にその姿を見せてはいけない』との理由からずっとベールを被っており、ハート公王は実に30年ぶりにソルの姿を目にしたのである。

元々超絶美少女だったが成長したソルの美しさは想像の遥か遥か上で、しかも38才になろうというのにまだ20才そこそこのうら若き乙女の様――

今すぐ跪きその愛を乞いたいのに出来ないのは、常軌を逸した圧――銀眼にずっと睨まれ続けているからである。


「ハート公王陛下はわたくしに一度もお名乗りにならなかったので、わたくし自身も誰がわたくしをブリッジ修道院に預けたのか、今回、初めて知ったのです」

「そ、それは済まなかった!…金髪金眼の美し過ぎる君を知ってしまえば、誰もが君を欲しがるはず…だから君の事は絶対隠し通したかった!…私は君の口から情報が漏れる事を恐れたのだ」

「…ブリッジ修道院にはわたくしの様に世間から隠す為に預けられている女性が何人かいました――彼女達の多くは物心つく前に預けられ、わたくし同様、自分が何者かすら知らされず、知ろうとする事を禁じられておりました…それでも何かの拍子にご自分の出生を思い出したり推測したりして『自分は○○公王の隠し子だ』『自分は△△公王の不義の子なのか?』『××公王と話をさせて欲しい』などと言い出す御方もいらっしゃいました――そんな事を言い出した方々は不思議と体調を崩されて帰らぬ人となられました。
ブリッジ修道院に隠された者は自分を知ろうとする事、何かを要求する事は死罪でしたので、わたくしは何も言えなかったのです――『記憶を確かめたいから皇帝陛下にお会いしたい』などと口にすれば――今頃はこの世のどこにも居なかったでしょう」

「ひ、非道い」

「ブリッジ修道院が、そんな所だったなんて…!」

「人権無視」

「預けた人最低」


公女達の率直な言葉に4公王は青褪め顔を伏せる。

彼ら全員がブリッジ修道院に女性を隠している。


「だ、だが…
あ、話は違うのだが」


銀の視線にもはや物質的な圧でされながらハート公王は心配そうにソルに質問する。


「私は気が気ではないのだ――『『聖女の印を持つ者』は人前にその姿を見せてはいけない』のに君はその美しい姿を晒してしまっている――『聖女の印』が消えるまでは――満月の夜まではベールを被っていた方がいいのではないか?」


くすっ‥


ッッ!


王女ソルが笑うので、室内の空気が一変する。
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない

木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。 生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。 ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。 その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

モブ令嬢は脳筋が嫌い

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
恋愛
イーディスは海のように真っ青な瞳を持つ少年、リガロに一瞬で心を奪われた。彼の婚約者になれるのが嬉しくて「祖父のようになりたい」と夢を語る彼を支えたいと思った。リガロと婚約者になってからの日々は夢のようだった。けれど彼はいつからか全く笑わなくなった。剣を振るい続ける彼を見守ることこそが自分の役目だと思っていたイーディスだったが、彼女の考えは前世の記憶を取り戻したことで一変する。※執筆中のため感想返信までお時間を頂くことがあります。また今後の展開に関わる感想や攻撃的な感想に関しましては返信や掲載を控えさせていただくことがあります。あらかじめご了承ください。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――