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4 戦い
73 ソル VS. テネブラエ公 1
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秘密の地下通路の行き止まりに『秘密の地下宮殿』の入り口となる大岩がある。
30年前は時間切れでここまでで引き返さざるを得なかったので、ここから先はソルにとっても完全に未知の世界となる。
大岩をスライドさせ『秘密の地下宮殿』に入る。
この大岩を閉める時も完全に元通りにはせずに僅かに開けた状態にしておく。
後から来るであろう皇帝にだけ分かる様に。
大理石の階段を下り、池の中央から長く続く通路を抜け、大きな扉に行き着く。
扉の前の6人の刺客達は一瞬ギョッとした後、一斉にソルに飛び掛かって来る。
ドドドドドドッ‥
ソルが刺客達の胸を軽く突くと刺客達は声を立てる事も無くその場に崩れ落ちる。
――ピクリとも動かず、息も心臓も止まっている。
ここまで多くの敵と戦って来たソルが一滴も返り血を浴びていない理由だ。
剣が苦手だった為に編み出した術である。
大扉を押し開けて中に入る。
ロビーの様な広い空間。
入り口からの視界を遮るような大きな柱の先にちょっとしたギャラリーの様な一角がある。
白い壁に大きな絵が並べて飾られてある。
――肖像画だ。
30枚ほどもあろうか。
「‥ッ‥」
ソルは1枚の絵の前で足を止める。
その絵に釘付けになる。
絵に囚われたかの様に微動だにしない後姿を見咎める者がいる。
「‥ッ‥これはどういう事だ――招かれざる客がいるとは!?
皇帝はどうした?
ここはかつて私とアクワ姫が愛を交わした聖地――この神聖な場で現皇帝と対決し、皇帝の座を取り戻す予定だが――皇帝が案内されて来るはずが何故お前が居る!?…その忌々しいほど美しい金髪は30年前に消えたジョーカー王女だな!?
生きていたのか――本物か?」
ソルの背後から呪詛の様に響いて来た低い声。
不快を隠さない声の主は――
「‥30年ぶりですわね、テネブラエ公…
やはりここに居ましたね…あの客室が刺客に占拠されていたという事は、ここから続く秘密の通路を通ってしかありえませんもの…
会いたくないのはお互い様ですわ…ですがわたくしはどうしてもテネブラエ公にお伝えしなければならない事がありますので」
ソルは背後にいるテネブラエ公に背中を見せたまま、絵から目を離さず答える。
テネブラエ公は眉間のシワを更に濃くし、吐き捨てる様に言う。
「客室に刺客?何の話…頭がおかしいのか…
私に伝えたい事とはどうせ恨み言だろうな」
「いいえ、ただの報告ですわ――わたくしの兄についてです」
「兄だと?――兄?…兄など居なかったはずだがな」
背中を向けたまま話し続けるソルに対し、テネブラエ公は大剣を抜き、ソロリソロリと近付き始める。
(何を言っているんだ?――ジョーカー王の第一子が自分だと忘れでもしたのか?
バカな女だ…
相変わらず恐ろしいほど美しい金髪だな…
髪自体が発光している様に光り輝いている…
鼻につくことこの上ない!)
「それより、何でお前が一人でここにいる?――警備の男達はどうした?」
ソルの話など聞きたくないテネブラエ公は自分が聞きたい事を質問する。
「警備?‥刺客達の事ですか?――仕留めましたわ」
「ふん、殺したか――恐ろしい女だ…だがどうやって…ふん、卑しいジョーカー王の娘らしく色仕掛けでもしたんだろう」
「刺客達は殺し屋組織『マレフィクス』の者ですわね…首の刺青が示しています――ルーナエ皇帝陛下は時を置かずにここへ来られるはず――同業者からも恐れられるクレイジーな殺し屋は少しでも意識があれば皇帝陛下のお命を狙うでしょう――ですから『仮死状態』にしました――わたくしが解かなければ目を覚ます事はありません――殺すなど、残虐な殺し屋達に慈悲を与えるつもりはありませんわ」
「仮死状態?‥慈悲?――ふん、狂人の戯言か…『マレフィクス』を知っているなど、真っ当な人生を送っていない証拠よ」
「わたくしの同母兄の話を続けさせて頂きます」
背中を見せたままのソルがそう言うと、テネブラエ公は気色ばむ。
「――何を言っている!?――お前がアクワ姫の最初の子供だろう!――憎きジョーカー王が無理矢理彼女を妃とし、可哀想に、彼女は酷い目に遭わされ望まぬ妊娠・出産を強いられたのだ!」
「真実から目を逸らし続ける憐れな老いぼれにこの話を続けるのは酷ですが…お前などとは比べ物にならないほどに憐れな我が兄の為に話さねばなりません」
(こ‥この女ッ!)
これまでの人生の中で、自分を『お前』と呼んだのは母親のみ。
生まれて初めて他人から『お前』呼びされた事にテネブラエ公はカッとする。
だが、我を忘れて斬りかかったりはしない。
(今回警備のために用意した男達は『マレフィクス』でもトップグループの手練れ達だと聞いている…一体どうやったかは知らないが奴等を仮死状態?にして来たと言うのなら何か特別な道具を隠し持っているのかもしれない――きっとそうだ――こちらを向かないのはそのせいだ!)
テネブラエ公は大剣の柄をグッと握り直し、静かに呼吸を整え、再び足音も気配も消してソロリソロリとソルに近付き始める。
「ふん、よかろう…聞いてやる――続けろ」
女は喋る生き物だからな――喋らせておけば夢中になって隙だらけになるだろう…
邪悪にほくそ笑むテネブラエ公はソルの後ろ3メートルほどの所まで迫っている。
30年前は時間切れでここまでで引き返さざるを得なかったので、ここから先はソルにとっても完全に未知の世界となる。
大岩をスライドさせ『秘密の地下宮殿』に入る。
この大岩を閉める時も完全に元通りにはせずに僅かに開けた状態にしておく。
後から来るであろう皇帝にだけ分かる様に。
大理石の階段を下り、池の中央から長く続く通路を抜け、大きな扉に行き着く。
扉の前の6人の刺客達は一瞬ギョッとした後、一斉にソルに飛び掛かって来る。
ドドドドドドッ‥
ソルが刺客達の胸を軽く突くと刺客達は声を立てる事も無くその場に崩れ落ちる。
――ピクリとも動かず、息も心臓も止まっている。
ここまで多くの敵と戦って来たソルが一滴も返り血を浴びていない理由だ。
剣が苦手だった為に編み出した術である。
大扉を押し開けて中に入る。
ロビーの様な広い空間。
入り口からの視界を遮るような大きな柱の先にちょっとしたギャラリーの様な一角がある。
白い壁に大きな絵が並べて飾られてある。
――肖像画だ。
30枚ほどもあろうか。
「‥ッ‥」
ソルは1枚の絵の前で足を止める。
その絵に釘付けになる。
絵に囚われたかの様に微動だにしない後姿を見咎める者がいる。
「‥ッ‥これはどういう事だ――招かれざる客がいるとは!?
皇帝はどうした?
ここはかつて私とアクワ姫が愛を交わした聖地――この神聖な場で現皇帝と対決し、皇帝の座を取り戻す予定だが――皇帝が案内されて来るはずが何故お前が居る!?…その忌々しいほど美しい金髪は30年前に消えたジョーカー王女だな!?
生きていたのか――本物か?」
ソルの背後から呪詛の様に響いて来た低い声。
不快を隠さない声の主は――
「‥30年ぶりですわね、テネブラエ公…
やはりここに居ましたね…あの客室が刺客に占拠されていたという事は、ここから続く秘密の通路を通ってしかありえませんもの…
会いたくないのはお互い様ですわ…ですがわたくしはどうしてもテネブラエ公にお伝えしなければならない事がありますので」
ソルは背後にいるテネブラエ公に背中を見せたまま、絵から目を離さず答える。
テネブラエ公は眉間のシワを更に濃くし、吐き捨てる様に言う。
「客室に刺客?何の話…頭がおかしいのか…
私に伝えたい事とはどうせ恨み言だろうな」
「いいえ、ただの報告ですわ――わたくしの兄についてです」
「兄だと?――兄?…兄など居なかったはずだがな」
背中を向けたまま話し続けるソルに対し、テネブラエ公は大剣を抜き、ソロリソロリと近付き始める。
(何を言っているんだ?――ジョーカー王の第一子が自分だと忘れでもしたのか?
バカな女だ…
相変わらず恐ろしいほど美しい金髪だな…
髪自体が発光している様に光り輝いている…
鼻につくことこの上ない!)
「それより、何でお前が一人でここにいる?――警備の男達はどうした?」
ソルの話など聞きたくないテネブラエ公は自分が聞きたい事を質問する。
「警備?‥刺客達の事ですか?――仕留めましたわ」
「ふん、殺したか――恐ろしい女だ…だがどうやって…ふん、卑しいジョーカー王の娘らしく色仕掛けでもしたんだろう」
「刺客達は殺し屋組織『マレフィクス』の者ですわね…首の刺青が示しています――ルーナエ皇帝陛下は時を置かずにここへ来られるはず――同業者からも恐れられるクレイジーな殺し屋は少しでも意識があれば皇帝陛下のお命を狙うでしょう――ですから『仮死状態』にしました――わたくしが解かなければ目を覚ます事はありません――殺すなど、残虐な殺し屋達に慈悲を与えるつもりはありませんわ」
「仮死状態?‥慈悲?――ふん、狂人の戯言か…『マレフィクス』を知っているなど、真っ当な人生を送っていない証拠よ」
「わたくしの同母兄の話を続けさせて頂きます」
背中を見せたままのソルがそう言うと、テネブラエ公は気色ばむ。
「――何を言っている!?――お前がアクワ姫の最初の子供だろう!――憎きジョーカー王が無理矢理彼女を妃とし、可哀想に、彼女は酷い目に遭わされ望まぬ妊娠・出産を強いられたのだ!」
「真実から目を逸らし続ける憐れな老いぼれにこの話を続けるのは酷ですが…お前などとは比べ物にならないほどに憐れな我が兄の為に話さねばなりません」
(こ‥この女ッ!)
これまでの人生の中で、自分を『お前』と呼んだのは母親のみ。
生まれて初めて他人から『お前』呼びされた事にテネブラエ公はカッとする。
だが、我を忘れて斬りかかったりはしない。
(今回警備のために用意した男達は『マレフィクス』でもトップグループの手練れ達だと聞いている…一体どうやったかは知らないが奴等を仮死状態?にして来たと言うのなら何か特別な道具を隠し持っているのかもしれない――きっとそうだ――こちらを向かないのはそのせいだ!)
テネブラエ公は大剣の柄をグッと握り直し、静かに呼吸を整え、再び足音も気配も消してソロリソロリとソルに近付き始める。
「ふん、よかろう…聞いてやる――続けろ」
女は喋る生き物だからな――喋らせておけば夢中になって隙だらけになるだろう…
邪悪にほくそ笑むテネブラエ公はソルの後ろ3メートルほどの所まで迫っている。
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