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4 戦い
75 ソル VS. テネブラエ公 3
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テネブラエ公の心中は真っ暗闇となる。
アクワ姫は自分を愛し続けていると思って来た――ジョーカー王との結婚は決まっていた事とは言え彼女自身は望まぬ『無理矢理』なものだったのだと。
だが――
アクワ姫はソル姫を産んだ後も続けて子供を産み続けた――
無理矢理産まされているのだと聞いていた。
が、よくよく考えれば子が多すぎるのは王家でなくとも避けるものだ。
後継問題がそれだけ複雑になるからだ。
ジョーカー王家は長年続いている後継問題絡みのいざこざで苦労して来たのだ。
更なる火種を望むか?
『否』だ…
となればアクワ姫は自分の意志で妊娠出産を繰り返した事になる?
――それは…
私に対する裏切りだ!
テネブラエ公は止まっていた歩を進める。
「お‥おおおお前の言っている事は全部嘘、デタラメだ!‥アクワ姫と私は運命の恋人なのだッ‥私達の愛は本物ッそうでなければならないのだッ!」
徐々に激しく…自分に言い聞かせるように言い募るテネブラエ公。
対してソルは抑揚のない声で続ける。
「ちなみにわたくしの同父弟は2名――異父弟妹は父の側近の子が2名、近衛騎士の子が2名――ジョーカー王は母を罰することなく家族として尊重し続け母と臣下達の子供達も籍には入れなかったものの母やわたくし達と過ごす事を許し――わたくしにとっても誰が父親であれ可愛い弟妹達で――」
「嘘だ…聞いちゃダメだ…私の人生が否定される…全て嘘なんだ‥」
神経質に左右に小さく首を振ってはブツブツ呟くテネブラエ公。
ジョーカー王を憎み続ける事がテネブラエ公の人生だった。
ジョーカー王とアクワ姫亡き後は、ジョーカー王の血縁者を全て殺す事がテネブラエ公の存在意義となった――
彼がそう教えてくれたのだ。
『ジョーカー王の子供たちを一人残らず殺さなければいけません。
そうでなければアクワ妃の恨みは晴れず憐れ地獄を彷徨い続けることとなります。
彼女の為にジョーカー王の子供たちを捜し出し皆殺しにするのです――』
そうだ――
彼がそう言うならそうなのだ…
アクワ姫の為なのだ!
――待てよ?
愛情深いアクワ姫が我が子の死を願うか!?
ね、願うわけがない!
い、いや、では私は何故――くッ…頭の中を黒い靄が…ああ、彼と話したい――彼が正しい道を示してくれれば私も迷いなく‥
「30年前、母が何故わたくしをカード帝国へ預けたか考えた事はあって?」
黙り込んでしまったテネブラエ公に静かな声が訊ねる。
ただただ生意気に感じていたソルの静かな声には深い、深すぎる怒りが含まれている事にテネブラエ公は漸く気付く。
「えッ!?な‥何‥それは、ジョーカー王国が本格的な内乱に突入するのが避けられないとなったからだろう‥」
「他の弟妹はジョーカー王国近隣の別の国に避難したのにわたくしと兄だけがカード帝国へ避難したのは‥」
「な、何!?――30年前、お前は1人だったはずだ!――数名の従者のみ連れて‥ッ、ま、まさかッ!?」
「ええ、兄は従者としてわたくしに同行したのです――母は兄を産んだ後にジョーカー王と結婚したので兄は従者という立場で存在する事となりました」
「おお、憐れな――私に託してくれればッ!」
「言い方は悪いですが母は『子供は恋の戦利品』と言っておりました――手放す気は無かったのでしょう――それにカード帝国での扱いだって保証は無い――何よりもジョーカー王国での兄は幸せでした――わたくしが兄を守っていましたから」
「な、逆だろう」
「ええ、お互いに、大切に…守り守られたのです」
ずっと抑揚のなかったソルの声が僅かに震えた事で、テネブラエ公はそれが真実であったろうと知り――
心臓を掴まれた様な痛みを感じる。
「わたくしがカード帝国へ預けられた理由の一つは――近隣諸国はわたくしにとって危険過ぎたからです。
北方の国々には古代人に関する荒唐無稽で恐ろしい言い伝えが脈々と息づいています――『金髪金眼の者の肉を食べたり、金髪金眼の者と交われば古代人が持っていた魔法の力を手に出来る』などという幼稚なものですが、信じている者も多く、わたくしは生まれた瞬間から魔法の力を欲する者達に狙われて来たのです――幸い王家に生まれたので最高の保護を受けられましたが、武闘派の父に身を守る為の教育を施され、厳しい日々でもありました――そうそう、お前に毒を盛られても死ななかったのも、小さい頃から毒に慣らされて来たからですわ」
「‥毒?‥何の事‥」
テネブラエ公の疑問は話に夢中なソルには届かず、ソルは言葉を続ける。
「二つ目の理由は――母の幼稚な感傷です。
髪も目も肌も色は違いますが、母はわたくしを『自分の若い頃と瓜二つ』だと思っていましたので、前カード皇帝――お前はわたくしを大切に扱うだろうと信じたのです――実際はまるで逆、ジョーカー王の子として憎しみと殺意をぶつけられました」
「‥ぅッ‥」
「三つ目の理由が――これも過去の恋を美化した母の愚かな思い込み。
母は信じた――兄を見た瞬間、お前は自分の息子だと気付き、感動の親子の対面を果たし、その後は兄ともどもわたくしも安全に保護してくれるだろうと」
「‥ッッ‥」
もう声も出ない。
頭を鈍器で殴られ続けている様な感覚に、テネブラエ公は目眩を覚える。
駄目だ、ちがうッ…
頭の中の黒い靄が濃くなりテネブラエ公に命じる。
『一刻も早くこの嘘つき女を黙らせろ!』
『殺せ!』
虚ろな目のテネブラエ公は思う。
そうだ…殺さなければ…アクワ姫の為だ…
ソルの真後ろ迄到達したテネブラエ公は大剣を上段に構える。
アクワ姫は自分を愛し続けていると思って来た――ジョーカー王との結婚は決まっていた事とは言え彼女自身は望まぬ『無理矢理』なものだったのだと。
だが――
アクワ姫はソル姫を産んだ後も続けて子供を産み続けた――
無理矢理産まされているのだと聞いていた。
が、よくよく考えれば子が多すぎるのは王家でなくとも避けるものだ。
後継問題がそれだけ複雑になるからだ。
ジョーカー王家は長年続いている後継問題絡みのいざこざで苦労して来たのだ。
更なる火種を望むか?
『否』だ…
となればアクワ姫は自分の意志で妊娠出産を繰り返した事になる?
――それは…
私に対する裏切りだ!
テネブラエ公は止まっていた歩を進める。
「お‥おおおお前の言っている事は全部嘘、デタラメだ!‥アクワ姫と私は運命の恋人なのだッ‥私達の愛は本物ッそうでなければならないのだッ!」
徐々に激しく…自分に言い聞かせるように言い募るテネブラエ公。
対してソルは抑揚のない声で続ける。
「ちなみにわたくしの同父弟は2名――異父弟妹は父の側近の子が2名、近衛騎士の子が2名――ジョーカー王は母を罰することなく家族として尊重し続け母と臣下達の子供達も籍には入れなかったものの母やわたくし達と過ごす事を許し――わたくしにとっても誰が父親であれ可愛い弟妹達で――」
「嘘だ…聞いちゃダメだ…私の人生が否定される…全て嘘なんだ‥」
神経質に左右に小さく首を振ってはブツブツ呟くテネブラエ公。
ジョーカー王を憎み続ける事がテネブラエ公の人生だった。
ジョーカー王とアクワ姫亡き後は、ジョーカー王の血縁者を全て殺す事がテネブラエ公の存在意義となった――
彼がそう教えてくれたのだ。
『ジョーカー王の子供たちを一人残らず殺さなければいけません。
そうでなければアクワ妃の恨みは晴れず憐れ地獄を彷徨い続けることとなります。
彼女の為にジョーカー王の子供たちを捜し出し皆殺しにするのです――』
そうだ――
彼がそう言うならそうなのだ…
アクワ姫の為なのだ!
――待てよ?
愛情深いアクワ姫が我が子の死を願うか!?
ね、願うわけがない!
い、いや、では私は何故――くッ…頭の中を黒い靄が…ああ、彼と話したい――彼が正しい道を示してくれれば私も迷いなく‥
「30年前、母が何故わたくしをカード帝国へ預けたか考えた事はあって?」
黙り込んでしまったテネブラエ公に静かな声が訊ねる。
ただただ生意気に感じていたソルの静かな声には深い、深すぎる怒りが含まれている事にテネブラエ公は漸く気付く。
「えッ!?な‥何‥それは、ジョーカー王国が本格的な内乱に突入するのが避けられないとなったからだろう‥」
「他の弟妹はジョーカー王国近隣の別の国に避難したのにわたくしと兄だけがカード帝国へ避難したのは‥」
「な、何!?――30年前、お前は1人だったはずだ!――数名の従者のみ連れて‥ッ、ま、まさかッ!?」
「ええ、兄は従者としてわたくしに同行したのです――母は兄を産んだ後にジョーカー王と結婚したので兄は従者という立場で存在する事となりました」
「おお、憐れな――私に託してくれればッ!」
「言い方は悪いですが母は『子供は恋の戦利品』と言っておりました――手放す気は無かったのでしょう――それにカード帝国での扱いだって保証は無い――何よりもジョーカー王国での兄は幸せでした――わたくしが兄を守っていましたから」
「な、逆だろう」
「ええ、お互いに、大切に…守り守られたのです」
ずっと抑揚のなかったソルの声が僅かに震えた事で、テネブラエ公はそれが真実であったろうと知り――
心臓を掴まれた様な痛みを感じる。
「わたくしがカード帝国へ預けられた理由の一つは――近隣諸国はわたくしにとって危険過ぎたからです。
北方の国々には古代人に関する荒唐無稽で恐ろしい言い伝えが脈々と息づいています――『金髪金眼の者の肉を食べたり、金髪金眼の者と交われば古代人が持っていた魔法の力を手に出来る』などという幼稚なものですが、信じている者も多く、わたくしは生まれた瞬間から魔法の力を欲する者達に狙われて来たのです――幸い王家に生まれたので最高の保護を受けられましたが、武闘派の父に身を守る為の教育を施され、厳しい日々でもありました――そうそう、お前に毒を盛られても死ななかったのも、小さい頃から毒に慣らされて来たからですわ」
「‥毒?‥何の事‥」
テネブラエ公の疑問は話に夢中なソルには届かず、ソルは言葉を続ける。
「二つ目の理由は――母の幼稚な感傷です。
髪も目も肌も色は違いますが、母はわたくしを『自分の若い頃と瓜二つ』だと思っていましたので、前カード皇帝――お前はわたくしを大切に扱うだろうと信じたのです――実際はまるで逆、ジョーカー王の子として憎しみと殺意をぶつけられました」
「‥ぅッ‥」
「三つ目の理由が――これも過去の恋を美化した母の愚かな思い込み。
母は信じた――兄を見た瞬間、お前は自分の息子だと気付き、感動の親子の対面を果たし、その後は兄ともどもわたくしも安全に保護してくれるだろうと」
「‥ッッ‥」
もう声も出ない。
頭を鈍器で殴られ続けている様な感覚に、テネブラエ公は目眩を覚える。
駄目だ、ちがうッ…
頭の中の黒い靄が濃くなりテネブラエ公に命じる。
『一刻も早くこの嘘つき女を黙らせろ!』
『殺せ!』
虚ろな目のテネブラエ公は思う。
そうだ…殺さなければ…アクワ姫の為だ…
ソルの真後ろ迄到達したテネブラエ公は大剣を上段に構える。
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