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4 戦い
77 ソル VS. テネブラエ公 5
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テネブラエ公がソルに振り下ろした大剣は彼が若い頃にこの『地下宮殿』で見つけたもの。
見た目からは考えられない程軽いのにたった一振りで大岩を打ち砕き大型の獣を倒してしまう魔法の様な剣。
人間の頭蓋骨など簡単に粉砕出来る。
故にソルの頭蓋骨を粉砕し全身を真っ二つに斬り裂く手応えがあるはずだったのに…
自分の大剣が斬ったのは白壁に飾られた肖像画――少年時代の自分が等身大で描かれた全身肖像画だと気付く。
未知の素材で出来ている固い壁は大剣の威力を奪い、大剣は肖像画を半分ほど斬ったところで止まっている。
「お前の様なうつけに斬られるわたくしではない」
「ハァ、ハァ、ハァ」
事態を把握出来ないままガクガク震えるテネブラエ公のすぐ左側から凛とした声が発せられる。
何故生きている?
大剣を振り下ろした瞬間は確かに目の前に居たのにどうやって移動した!?
大剣はかすってもいないのか!?
それを確かめようにもテネブラエ公はまるで身動きが出来ない状態なのだ。
衝撃の強さにビリビリと腕が痺れ、軽いはずの大剣はズッシリと重く、剣を離そうにも痺れた手は剣の柄と一体化してしまったかの様に指一本動かすことも出来ない。
ショック状態なのか腕同様体も動かせず、左に首を回してソルの状態を確かめる事も出来ない。
今テネブラエ公に出来るのは自分の少年の頃の肖像画を見る事だけだが。
斬られた肖像画の上半分は無残に粉砕されてもう何が描かれていたのかすら分からない状態になっている。
だが、斬る前に一瞬だけ見えた茶髪茶目の少年は――30年前訴える様な瞳を向けて来たあの少年そのものだった――
「ハァ、ハァ、執事か――確か執事だと言っていた…」
「そう…兄はわたくしの執事としていつも傍にいてくれた…優しく強い人だった…母とお前の幼稚な『真実の愛』ごっこが兄を深く傷つけた――兄は口には出さなかったが父親に会えるのを楽しみにしていたのに――お前は気付きもせずこの上なく冷たくあしらい兄の心を踏みにじった!…この件に関しては母も同罪…わたくしは母もお前も許さない…」
「うぅ‥知らなかったのだと言うにッ‥」
(いや、ジョーカー王女の言う通りだ…気付かないはずがないのに何故あの時の私は気付けなかった!?‥気付いてやれなかった!?‥失望させてしまった‥悲しませてしまった…ッ)
テネブラエ公の心の奥に渦巻く想いにソルは気付かない。
兄への想いで一杯なソルは更に言い募る。
「これは笑止!
『真実の愛』の『愛の結晶』に知らなかったとは言え気付かないはずがない!
――とはお前の愛するアクワ姫の言だ。
だがお前は気付かなかった――
お前は!
お前自身が至上の愛だと思い込んでいたものがただの偽物ただの感傷ただの自己愛だとお前がお前自身に証明したのだ!」
「うるさいッ黙れッ‥やめてくれッ‥クソッ‥ウッ!?
…あ、教えてくれ…私は何故…私はどう…」
テネブラエ公の耐え難い空虚に黒い靄が入り込み増幅する。
黒い靄はテネブラエ公がするべき事を繰り返し命令する。
「ア‥うぅ‥そうだ…ジョーカー王の子供は皆殺しにしなければ…
アクワ姫のため、殺してやるッ‥何度でも斬りつけてくれるッ‥」
いまだにいう事を聞かない体で吠えるテネブラエ公の耳に低い声が響く。
「‥ソル姫ッ!
無事か!?ソル姫ッ」
知っているはずの声だが、まるで別人の声の様である。
声自体は知っているが、こんな必死な様子は初めて聞くのだ。
見た目からは考えられない程軽いのにたった一振りで大岩を打ち砕き大型の獣を倒してしまう魔法の様な剣。
人間の頭蓋骨など簡単に粉砕出来る。
故にソルの頭蓋骨を粉砕し全身を真っ二つに斬り裂く手応えがあるはずだったのに…
自分の大剣が斬ったのは白壁に飾られた肖像画――少年時代の自分が等身大で描かれた全身肖像画だと気付く。
未知の素材で出来ている固い壁は大剣の威力を奪い、大剣は肖像画を半分ほど斬ったところで止まっている。
「お前の様なうつけに斬られるわたくしではない」
「ハァ、ハァ、ハァ」
事態を把握出来ないままガクガク震えるテネブラエ公のすぐ左側から凛とした声が発せられる。
何故生きている?
大剣を振り下ろした瞬間は確かに目の前に居たのにどうやって移動した!?
大剣はかすってもいないのか!?
それを確かめようにもテネブラエ公はまるで身動きが出来ない状態なのだ。
衝撃の強さにビリビリと腕が痺れ、軽いはずの大剣はズッシリと重く、剣を離そうにも痺れた手は剣の柄と一体化してしまったかの様に指一本動かすことも出来ない。
ショック状態なのか腕同様体も動かせず、左に首を回してソルの状態を確かめる事も出来ない。
今テネブラエ公に出来るのは自分の少年の頃の肖像画を見る事だけだが。
斬られた肖像画の上半分は無残に粉砕されてもう何が描かれていたのかすら分からない状態になっている。
だが、斬る前に一瞬だけ見えた茶髪茶目の少年は――30年前訴える様な瞳を向けて来たあの少年そのものだった――
「ハァ、ハァ、執事か――確か執事だと言っていた…」
「そう…兄はわたくしの執事としていつも傍にいてくれた…優しく強い人だった…母とお前の幼稚な『真実の愛』ごっこが兄を深く傷つけた――兄は口には出さなかったが父親に会えるのを楽しみにしていたのに――お前は気付きもせずこの上なく冷たくあしらい兄の心を踏みにじった!…この件に関しては母も同罪…わたくしは母もお前も許さない…」
「うぅ‥知らなかったのだと言うにッ‥」
(いや、ジョーカー王女の言う通りだ…気付かないはずがないのに何故あの時の私は気付けなかった!?‥気付いてやれなかった!?‥失望させてしまった‥悲しませてしまった…ッ)
テネブラエ公の心の奥に渦巻く想いにソルは気付かない。
兄への想いで一杯なソルは更に言い募る。
「これは笑止!
『真実の愛』の『愛の結晶』に知らなかったとは言え気付かないはずがない!
――とはお前の愛するアクワ姫の言だ。
だがお前は気付かなかった――
お前は!
お前自身が至上の愛だと思い込んでいたものがただの偽物ただの感傷ただの自己愛だとお前がお前自身に証明したのだ!」
「うるさいッ黙れッ‥やめてくれッ‥クソッ‥ウッ!?
…あ、教えてくれ…私は何故…私はどう…」
テネブラエ公の耐え難い空虚に黒い靄が入り込み増幅する。
黒い靄はテネブラエ公がするべき事を繰り返し命令する。
「ア‥うぅ‥そうだ…ジョーカー王の子供は皆殺しにしなければ…
アクワ姫のため、殺してやるッ‥何度でも斬りつけてくれるッ‥」
いまだにいう事を聞かない体で吠えるテネブラエ公の耳に低い声が響く。
「‥ソル姫ッ!
無事か!?ソル姫ッ」
知っているはずの声だが、まるで別人の声の様である。
声自体は知っているが、こんな必死な様子は初めて聞くのだ。
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