どうするべきかは心の叫び(前世の後悔)が教えてくれる

ハートリオ

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フンフンフンッ
憤怒で口がへの字になっている私はチェリー・アー。16才。
アー公爵家の長女で淑女学園の1年生。
チェリーピンクの瞳に瞳の色を薄くした様な鴇色の髪。

約1ヶ月前仮婚約した3才年上の侯爵家の嫡男リング・ボウ侯爵令息は金髪にエメラルドの瞳が美しい優し気なモテモテ美丈夫。

私達は約1ヶ月後のスノー王国宮殿大舞踏会で国王に婚約の許可を得る予定。
(*高位貴族の婚姻は大きな夜会で国王に報告し許しを得る、という儀式が必要)

友人達が次々と婚約していくのに私は中々婚約出来なかった。
だからやっと仮婚約出来てホッとしてたけど…

「‥あれ?お嬢様?どうなさ‥」

まだ帰るには早い時間に戻って来た私に公爵家の馬車の中で待っていた侍女と女性護衛騎士がギョッとする。

「機嫌‥いえ体調が悪くなったから帰るわ!」

馬車にサッと乗り込みサッとボウ侯爵家を後にする。

「お待ちください!公爵令嬢!」

微かに聞こえるのはボウ侯爵家の執事ね。
『体調不良で帰る』ってちゃんと伝えたのにシツコイわよ。
ていうか何か察しているなら気を遣ってよ。

あぁ何だか本当に頭痛くなって来た。
――それにしてもあの野郎…

【アイツ、絶対許しちゃダメよ!】
「‥えッ!?」

「どうなさいました?お嬢様?」
「どうって…えと…今何か言った?」
「「いいえ?」」

そうよね。
声は頭の中で聞こえた…

【私はあなたの前世の『ハナコ』よ!
そしてリング・ボウの前世は私の夫『タロウ』よ!
さっきみたいに私を悪者にして――つまり私を下げて自分を上げるって事を繰り返したムカツク奴だったの!今世でも同じ事始めたからには黙っていられなくて!】
(あいつ前世からああだったの?ムカツク…
冤罪着せられてる気分よ!)
【その通り!この婚約は無しね!】
(‥え!?ちょっと待ってよ、何もそこまで‥)
【一生アレが続くのよ!確かに1つ1つは大したことじゃないかもしれない。でもそれが積もり積もれば!】
(今世まで引きずる程の罪という訳ね…)

チェリーはううむと眉間に皺を寄せる。
やっと決まった婚約。
王家への根回しも済んでいる。
それを解消すれば――
公爵令嬢として当たり障りなく生きて来た。
それによって積み上げてきた信用。
周囲との円満な関係。
それを全部失くしてしまうかもしれない。

(でも…アレが一生続く?)
【続くわよ!アイツは前世から何も学んでない!だからいけしゃあしゃあと同じ事を繰り返すんだわ!ぬあぁぁムカツク~~】
(ぅわ~~何かシンクロする~~
ムカツク~~‥これ、魂の叫びなのね…
――分かった!あんな男婚約解消してやる!)
【‥!え‥偉い!――もっと悩むかと思った‥】
(だってあなたが出て来たって事がね…私、来世に化けて出たくないもの)
【ちょ‥私ユーレイじゃないからね!?私は前世でつまりあなたの魂の一部が顕現したっていうか‥それより本当にいいの?もっと深く考えた方が‥】

やめろと言ったり考えろと言ったり面倒くさい前世である。

(いいのもう決めたから。それよりこれからの事考えなくちゃ。
婚約がダメになるという事は人生負け組へ舵を切る事だから)
【え?公爵令嬢なんだから他に幾らでも良い縁談あるんじゃないの?】
(そんなに甘くないわよ…私に縁談申し込んだのってボウ侯爵家が初めてで…あなた私の一部なのに何で知らないの?)
【言われてみれば何でかな?私は『ハナコ』の記憶だけなのかな?】

視野が狭いわ…うん、私の前世で間違いないと納得するチェリー。

(兎に角今後良い縁談なんか来ないわ。
今までだって来なかったんだから。
同世代はほぼ片付いちゃってるし。
じゃ外国って手もあるにはあるけど…
正直、そこまで苦労して結婚したいとは思わない。
アー公爵家は私の結婚を利用しなくても大丈夫な家だから気を遣うこともない。
結婚はもう諦める!
意に染まぬ相手との結婚なんて残念前世を知ってしまった自分にはもう無理!
実はお菓子屋さんをやってみたいって思ってたからソレを目指す!
やりたい事が出来るなら世間的には負け組でも自分的には完全勝利で間違いない!
…ハナコさん?
どうしたの?)

押し黙ってしまったハナコを気遣うチェリー。

【ざ…残念前世…そうね…そう言われても致し方ない…】
(あぁいや、正確には残念なのはタロウね。
大切な伴侶を悪者にしてまで自分を上げたかった奴なんでしょ)
【そう!そうなのよ!
例えば!】

クワッと目を見開いた(気がする)ハナコが。
唾を飛ばしながら(な感じで)つらつら言い募る。

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