束の間のアル《廃王子様は性欲ゼロなのに熱・愛・中！？》

第二章

23 或る料理人の独白 その1

俺ァは転生者だ。

前世は地球人で、料理人をしていた。

へへっ、何たって食うのが好きだからな。



美味い物を求めてあちこち旅行した。

俺を驚かせたのは、エドという町だ。



町は威勢のいい労働者で溢れていて、活気があった。

彼等の胃袋を満たす為なんだろう、

たくさんの屋台が町のいたる所にあった。

ヌードルやファストフード、スイーツ‥‥

安くて美味い物がたらふく食える、最高の町だったぜ。

そんなグルメ都市エドで、俺を虜にしたフードがある。



オーニギーリ、オームスービ、ニギリメーシ‥‥‥


何故か複数の呼び名を持つ、ボール状のファストフードだ。

シンプルな様で実に味わい深く、その製法はかなり難易度の高いものだった。


まず、オーニギーリの大半を占める、メーシ、ゴッハーンという穀物‥‥

これの扱いが実に難しい。

穀物名はオッコーメー。

オッコーメーを加熱処理したものが、メーシ、ゴッハーンとなる。


まず、セーイマーイーという工程を経たオッコーメーをイードミーズーで洗う。

ヌーカーを取り去るだけの繊細な洗浄方法はトーグーという特別な呼び名がある。
（オッコーメー・トーギーという言い方もあった）

何と、この洗浄工程が、美味しいオーニギーリを作る為に、最も重要なのである。



素材の洗浄がクオリティを左右するなんて、そんな料理、他にあるかい？



すっかりオーニギーリに魅せられた俺は、メッシーヤという大衆レストランに弟子入りして修行した。

ターミサンという年齢も性別も不明の師匠は厳しくも親切に俺を指導してくれた。

時にはフッカーシイーモーという野菜で作ったスイーツを分けてくれたりもした。