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22 おまじないの力
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姫は小さな頃は陽キャ寄りだった。
体が強くなってからは自然溢れる領地を駆けまわって遊ぶ活発な女の子だった。
当然遊び相手は男の子達になる。
母上の掟≪男子完全禁制≫――それを破る事になり母上は悲しんだ。
姫を叱るのではなく自身を責め悲しみ苦しんだ。
そんな姿にショックを受けた姫は次第に一人で遊ぶ様になり。
掟を守る様になり。
遂には母に一切逆らわない完全陰キャになる。
母は娘の幸せの為に掟という愛で縛り
娘は母を悲しませない為に自分を殺し
結局不幸状態になっている――
「――だから姫が今の状態が母上の霊によって起こされていると知れば…
一生黙って受け入れるだろうと思う」
「‥そ、そうか。そうだな…
ッ、厄介なんだな、『愛』っていうヤツは…」
リーの話にザートはモヤモヤする。
娘を束縛し人生の楽しみを奪う――
それが『愛』ならば
『愛』とは『呪い』と紙一重…
いや、今は話を先に進めなければ。
「ところでリー、ラマンジェ嬢には何か特別な力…
『魔力』があるのではないか?」
「…は?『魔力』?
…えーーと、ザート君?」
正気か?というリーの表情は当然の事だ。
王家の血を引く者の中には魔力を持つ者もいる。
と言ってもその力は弱く、実際に『いわゆる魔法』を使えるまでには至らない。
普通より少し勘が鋭いとか、何か雰囲気が違うとか、そんな程度。
そう、例えばザートの様に普通は見えないものが視えるとか。
かつては強い魔力量を持ち、高度な魔法を使える者もいた。
だがその力を守ろうと近親結婚を繰り返した結果、逆に魔力量は激減してしまった。
ティスリー王家だけでなく、他国でも同様の事が起こり、この星は珍しく『魔法使いのいない星』となった。
異星人が来襲して魔法攻撃されたら奴隷星とならざるを得ないという不安を抱えた星だ。
だからザートの質問はザ・荒唐無稽なのだ。
だがザートにも何の根拠も無い訳ではない。
「実はリーは赤い光を纏っているんだ。その光はリーを守っている。魔獣討伐で魔獣がリーに近付けないのはその赤い光のせいだと確信している。その光はリー自身が放っているオーラなのだと思っていたのだが…」
ザートは1度言葉を止めてリーを包む赤く強い光を眩しく視る。
(美しく優しい光だ…この光には本当の愛を感じる…羨ましい事だ)
「…昨日王貴女の門の所で会った時は赤い光が随分薄くなっていて――魔獣討伐の疲れのせいだと思っていた」
「ああ、確かに疲れていた」
「うん。‥だが、夕方6時過ぎ、ラマンジェ嬢が元気になってから。ふと気付くといつの間にかリーの赤い光が強くなっていたんだ」
「…つまり、赤い光は姫が?」
「私がそう確信したのは、ラマンジェ嬢がブレに『おまじない』だと言ってブレの肩辺りをポンと叩いた瞬間だ。あの時、ブレの体が赤い光に包まれたんだ」
!!
「――あ、あの時、体が温かくなって…痛みが消え失せ、体中から力が湧き出て来る様で…実はまだその感覚が残っています」
震えながらそう言うブレにザートが頷く。
「うん、薄くはなったがまだ赤い光は消えていない。リーほど凄い強さではないがな…」
「『おまじない』は昔から姫が…家族が出掛ける際にやってくれていたんだ。
『元気に帰って来れますよーに!』ってお道化ながら…
確かに『おまじない』を掛けてもらった後は凄く元気になる感じがしていたけど…まさか本当に…
ああ、そうか、1年前…」
リーはハッとした表情の後悲し気に目を伏せる。
もうおまじないの『不思議な力』が魔力だと納得している。
「1年前は…姫が学校に行っている間に両親に急用が出来て…『おまじない』無しに出掛けて――事故に遭ってしまったんだ…
あれ以来、姫は俺に『おまじない』を掛けるのを欠かさない様になった。出掛ける用事が無くても。魔獣討伐で出掛ける前は特にじっくり掛けてくれる…あ」
リーはある事に気付く。
「…姫がおまじないを掛けてくれるのは夕方6時を過ぎて元気な状態の時だ…
つまり母上が離れないと不思議な力…魔力?が使えないのか…」
体が強くなってからは自然溢れる領地を駆けまわって遊ぶ活発な女の子だった。
当然遊び相手は男の子達になる。
母上の掟≪男子完全禁制≫――それを破る事になり母上は悲しんだ。
姫を叱るのではなく自身を責め悲しみ苦しんだ。
そんな姿にショックを受けた姫は次第に一人で遊ぶ様になり。
掟を守る様になり。
遂には母に一切逆らわない完全陰キャになる。
母は娘の幸せの為に掟という愛で縛り
娘は母を悲しませない為に自分を殺し
結局不幸状態になっている――
「――だから姫が今の状態が母上の霊によって起こされていると知れば…
一生黙って受け入れるだろうと思う」
「‥そ、そうか。そうだな…
ッ、厄介なんだな、『愛』っていうヤツは…」
リーの話にザートはモヤモヤする。
娘を束縛し人生の楽しみを奪う――
それが『愛』ならば
『愛』とは『呪い』と紙一重…
いや、今は話を先に進めなければ。
「ところでリー、ラマンジェ嬢には何か特別な力…
『魔力』があるのではないか?」
「…は?『魔力』?
…えーーと、ザート君?」
正気か?というリーの表情は当然の事だ。
王家の血を引く者の中には魔力を持つ者もいる。
と言ってもその力は弱く、実際に『いわゆる魔法』を使えるまでには至らない。
普通より少し勘が鋭いとか、何か雰囲気が違うとか、そんな程度。
そう、例えばザートの様に普通は見えないものが視えるとか。
かつては強い魔力量を持ち、高度な魔法を使える者もいた。
だがその力を守ろうと近親結婚を繰り返した結果、逆に魔力量は激減してしまった。
ティスリー王家だけでなく、他国でも同様の事が起こり、この星は珍しく『魔法使いのいない星』となった。
異星人が来襲して魔法攻撃されたら奴隷星とならざるを得ないという不安を抱えた星だ。
だからザートの質問はザ・荒唐無稽なのだ。
だがザートにも何の根拠も無い訳ではない。
「実はリーは赤い光を纏っているんだ。その光はリーを守っている。魔獣討伐で魔獣がリーに近付けないのはその赤い光のせいだと確信している。その光はリー自身が放っているオーラなのだと思っていたのだが…」
ザートは1度言葉を止めてリーを包む赤く強い光を眩しく視る。
(美しく優しい光だ…この光には本当の愛を感じる…羨ましい事だ)
「…昨日王貴女の門の所で会った時は赤い光が随分薄くなっていて――魔獣討伐の疲れのせいだと思っていた」
「ああ、確かに疲れていた」
「うん。‥だが、夕方6時過ぎ、ラマンジェ嬢が元気になってから。ふと気付くといつの間にかリーの赤い光が強くなっていたんだ」
「…つまり、赤い光は姫が?」
「私がそう確信したのは、ラマンジェ嬢がブレに『おまじない』だと言ってブレの肩辺りをポンと叩いた瞬間だ。あの時、ブレの体が赤い光に包まれたんだ」
!!
「――あ、あの時、体が温かくなって…痛みが消え失せ、体中から力が湧き出て来る様で…実はまだその感覚が残っています」
震えながらそう言うブレにザートが頷く。
「うん、薄くはなったがまだ赤い光は消えていない。リーほど凄い強さではないがな…」
「『おまじない』は昔から姫が…家族が出掛ける際にやってくれていたんだ。
『元気に帰って来れますよーに!』ってお道化ながら…
確かに『おまじない』を掛けてもらった後は凄く元気になる感じがしていたけど…まさか本当に…
ああ、そうか、1年前…」
リーはハッとした表情の後悲し気に目を伏せる。
もうおまじないの『不思議な力』が魔力だと納得している。
「1年前は…姫が学校に行っている間に両親に急用が出来て…『おまじない』無しに出掛けて――事故に遭ってしまったんだ…
あれ以来、姫は俺に『おまじない』を掛けるのを欠かさない様になった。出掛ける用事が無くても。魔獣討伐で出掛ける前は特にじっくり掛けてくれる…あ」
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「…姫がおまじないを掛けてくれるのは夕方6時を過ぎて元気な状態の時だ…
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