掟に縛られたブキミ令嬢ですが3大国宝イケメンを翻弄してます

ハートリオ

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「‥ハッ!‥あぁッ!」
「ルフェ殿下!?‥ハッ!‥髪が!」

こちらは王貴女の『祈りの塔』。

時間は掛かったものの見事ミッションを成功させたルフェとザートと茫然とするエラートとお付きの者達である。

「ルフェ殿下…髪が…ラマンジェ嬢と同じ色になっています!」

ザートが一瞬で白髪から紅赤色グラデーションに変わった髪色を不思議そうに見つめる。その横でエラートは喜びのあまり泣き崩れている。

「‥あぁ!分かります!体が軽いもの!呪いが終わったのです!お姉様がやってくれました!」
「そうだね!彼女は素晴らし過ぎる!…ルフェ殿下も見事な働きだったよ」
「!‥あ、ありがとうございます!
…あの、私‥」
「それじゃ戻ろうか!早く皆と(と言うかラマンジェ嬢と)合流しよう!」
「‥え、別にそんなに急がなくても‥」
「さ、行こう!今日はお祝いだな!」

弾むように階段を下りて行くザートを待ってと追いかけながら。

(これは手強そうです
‥が!絶対落としますから!)

13才の美少女は大人の表情を浮かべる。



「――どこだ!?」
「さっきから何をウロウロなさっているんです?我らが大将殿!」
「そうですよディング様!さぁ、こちらで俺達と酒を酌み交わしてください!」

こちらはロングラッセ侯爵邸庭園。

空はまだ夕焼けだがあっという間に暗くなるだろう。
広い庭園のあちこちが松明で照らされ鉄板や大鍋で次々に御馳走が作られている。
酒樽も何樽も用意され飲めや歌えの大騒ぎ。
給仕に駆り出された女性達や騎士の家族や恋人も参加し庭園ではお祭りの様な賑やかさ。
国内の魔獣殲滅成功のお祝いと今日の魔獣討伐に参加した騎士達全員を労うガーデンパーティーが盛大に行われているのだ。

今日は1人の怪我人も無く皆理想通りの働きが出来、しかもまだまだ元気。
当然パーティーは大盛り上がりだ。

普段ディングは雲の上の御方として話しかけたりしない騎士達も酒が入って気が大きくなっている様で。
ロングラッセ侯爵家騎士団&魔獣討伐隊総大将のディングに気軽に話し掛ける。

「――え?ああいや私はちょっと忙しいのだ。
…君達、ラマンジェ嬢を見なかったか?ここまで一緒に戻って来たのだが…」

そう、パーティーが始まった時は確かに居た。
皆と乾杯して盛り上がるルミエを確認して。
ディングはこっそりロングラッセ邸の温室に行き華やかな花々で花束を作らせ戻って来たのだ。
が、居たはずの場所にルミエがいない。
気は焦るがどうしたらいいか分からずデカい花束を抱えてウロウロキョロキョロしているのだ。

「あのとてつもない美女ですか?俺乾杯してもらって感激ですよ!一生の想い出です!――ここの後は向こうで乾杯してましたが…」
「向こうか!分かった!」

牡牛の様に向こうへ駆けて行くディングを騎士達は目を丸くして見送る。

あれがディング様とは信じられない!
いつもクールで氷の様に冷たいのに…

凄い情熱を感じた…
暑苦しい程だった…
ディング様にも春…
いや夏が来たのだ!

氷の様にクールな貴公子から一転、暑苦しい男ディングは騎士達を捕まえてはルミエを見なかったか尋ねて回る。

「君、ラマンジェ嬢を見なかったか!?‥ハッ!」
「おい、ラマンジェ嬢はどこにいる!?‥ハッ!」

同時に質問し同時に相手が誰か気付いた2人――

「ロングラッセ侯爵令息…」
「ザート王太子殿下…」

同じ様に手にデカい花束を握りしめ剣呑な目で見つめ合う3大国宝イケメンの2人。
彼等が今宵ルミエを見つける事は出来ないだろう。

何故ならほんの少し前。
一通り乾杯を終えたルミエがリーに耳打ちした。

「お兄様、2人でエスケープしませんか?」

リーは耳のくすぐったさに頬を赤らめて答えた。

「はい、姫」
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