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02 酷すぎるスピーナ家
「‥ゴホン、まぁ、
婿殿が何事においても優れているリリウムを望むのは当然のことであるが…
ウィオラで我慢してほしい。何せ、君にも責任がある。
我々に黙っていただろう?
1ヶ月前に分かったのだが
シルヴァ伯爵家は領地経営が苦しいそうだな。
言い辛いことだが
お父上も遠い異国で治療中とあればリリウムが苦労することは目に見えている。
親として苦労するのが分かっていて愛娘を嫁がせられるはずがなかろう?
乗り気だったリリウムも嫁ぎたくないと言い出した。
だから妹のウィオラに挿げ替えさせてもらったのだ」
当たり前のように放たれた花嫁の父の非情な言葉。
参列者は騒めく。
「妹なら苦労してもいいってこと?」
「そう言ってるよね」
「夫人も姉も当然って顔してるの不気味じゃない?」
「スピーナ子爵家ってそうなんだって」
スピーナ子爵家の姉妹格差は有名。
最初の頃こそスピーナ子爵夫妻は隠していたのだが
メイドから他家のメイドへ伝わるし
スピーナ家でその様に育ったから変だと気付かなかった姉妹達の口からも
その内感覚が麻痺して隠さないようになったスピーナ子爵夫妻からも
異常としか言いようのない姉妹格差は知れ渡っているのだ。
これを知らず調べもしなかったサリクス・シルヴァ伯爵令息は無能と言っていい。
「お父様」
ここでウィオラの姉…
丸眼鏡の奥に濃い茶色の目
化粧っ気がなく
薄いオレンジの髪をキッチリと纏め上げ
それなのに花嫁のドレスより10倍は値段が張るであろう豪華なドレスを纏い
アクセサリーで耳と首と手首と指を埋め尽くした異様な令嬢、
リリウム(21才)が女王様の如く立ち上がり口を開く。
「そんなにサリクス様を責めないで上げて。
私に良い恰好したかったのでしょうよ。
それに何だか私が悪いみたいに聞こえてイヤ。
ここは、ウィオラが私から縁談を横取りしたってことにして。
そうすればサリクス様も恥をかかないでしょう?
悪いのはウィオラ。
いつも通りに。
ね、そうして差し上げて」
あまりにもあんまりなリリウムの言葉。
あり得なさ過ぎて理解が追い付かない参列者達。
いち早く反応したのはスピーナ夫人。
「まぁ、名案ね!
そうすればウィオラしか傷つかないわ!」
「そうだな、はっはっは。
さすがはリリウムだ。
婿殿、そういう訳だ。
ウィオラが図々しくもリリウムの縁談を横取りしてな。
仕方なくもらってやってくれ」
「えッ」
「なに、無駄にはならん。
好きなだけこき使えばいい。ウチもそうして来た。
賃金が要らず普通のメイドの3倍は働く便利な奴隷だ。
好きにしてくれ」
騒めきはもう遠慮なく大声になっている。
娘を金の要らない奴隷だと!?
何て最低な両親&姉だ!
スピーナ子爵家に対する怒声だが
悪いことをしている自覚の無いスピーナ子爵家には届かない。
「この結婚に意義があります!」
「この結婚は無効でしょう!」
「こんなインチキ、神殿は見逃すのですかッ」
参列者の中で若い青年達が椅子を倒して立ち上がる。
彼らはウィオラが言った
あるワードが気になっている。
「ウィオラ嬢、先程『初めての縁談話』と言っていましたが」
「‥あ、はい‥」
家族の心無い言葉…
いつものこととはいえ
やはり傷ついているウィオラが潤んだ瞳を向ける。
それだけで男達は胸に手を当てる。
今すぐ攫ってしまいたい!
「その通りです。
私は1度も縁談のお話を頂いたことがありません」
――ッ!!?――
「それはおかしいです!
我が侯爵家はウィオラ嬢に正式な釣書をお送りしております!」
「えッ!?」
「我が公爵家もです!」
「我が家も」
「私も」
次々に縁談を持ち掛けたと主張する青年達。
ウィオラは家族達に視線を向ける。
「私は何もお伺いしておりません。
どういう事なのです?」
「ッ、黙りなさい!
生意気に私達に質問するなんて!
お前なんかに何の発言権も無いのよ!」
母親が唾を飛ばして叱りつける
いつものことだ。
いや、違う。
いつもは暴力も伴う。
さすがに今日は打とうとはしない。
鞭も持ってきていない様子。
「何なんだあの母親」
「完全頭イカレてる」
「最低」
参列者達がわざわざ大声で聞こえる様に口にする。
「ッ、馬鹿者、お前は黙っていろ!」
妻を叱る子爵に高位貴族令息達が厳しい声で訊う。
「私達が送った釣書はどうなっているんです?」
「無作法にも返事をいただいてませんが?」
無視できない質問…
スピーナ子爵は渋々答える。
「いや、何せ姉のリリウムがまだ結婚していないのに
先に妹というわけにはいきませんからね」
現に今、
新郎新婦双方を騙してまで
妹を先に嫁がせている真っ最中で子爵の言は全く理由になっていない。
ウィオラは両親と姉をしげしげと見る。
家の外…離れた場所から見るのは初めてだ。
その距離のせいだろうか。
『絶対に逆らってはいけない支配者』である彼等が違って見える。
婿殿が何事においても優れているリリウムを望むのは当然のことであるが…
ウィオラで我慢してほしい。何せ、君にも責任がある。
我々に黙っていただろう?
1ヶ月前に分かったのだが
シルヴァ伯爵家は領地経営が苦しいそうだな。
言い辛いことだが
お父上も遠い異国で治療中とあればリリウムが苦労することは目に見えている。
親として苦労するのが分かっていて愛娘を嫁がせられるはずがなかろう?
乗り気だったリリウムも嫁ぎたくないと言い出した。
だから妹のウィオラに挿げ替えさせてもらったのだ」
当たり前のように放たれた花嫁の父の非情な言葉。
参列者は騒めく。
「妹なら苦労してもいいってこと?」
「そう言ってるよね」
「夫人も姉も当然って顔してるの不気味じゃない?」
「スピーナ子爵家ってそうなんだって」
スピーナ子爵家の姉妹格差は有名。
最初の頃こそスピーナ子爵夫妻は隠していたのだが
メイドから他家のメイドへ伝わるし
スピーナ家でその様に育ったから変だと気付かなかった姉妹達の口からも
その内感覚が麻痺して隠さないようになったスピーナ子爵夫妻からも
異常としか言いようのない姉妹格差は知れ渡っているのだ。
これを知らず調べもしなかったサリクス・シルヴァ伯爵令息は無能と言っていい。
「お父様」
ここでウィオラの姉…
丸眼鏡の奥に濃い茶色の目
化粧っ気がなく
薄いオレンジの髪をキッチリと纏め上げ
それなのに花嫁のドレスより10倍は値段が張るであろう豪華なドレスを纏い
アクセサリーで耳と首と手首と指を埋め尽くした異様な令嬢、
リリウム(21才)が女王様の如く立ち上がり口を開く。
「そんなにサリクス様を責めないで上げて。
私に良い恰好したかったのでしょうよ。
それに何だか私が悪いみたいに聞こえてイヤ。
ここは、ウィオラが私から縁談を横取りしたってことにして。
そうすればサリクス様も恥をかかないでしょう?
悪いのはウィオラ。
いつも通りに。
ね、そうして差し上げて」
あまりにもあんまりなリリウムの言葉。
あり得なさ過ぎて理解が追い付かない参列者達。
いち早く反応したのはスピーナ夫人。
「まぁ、名案ね!
そうすればウィオラしか傷つかないわ!」
「そうだな、はっはっは。
さすがはリリウムだ。
婿殿、そういう訳だ。
ウィオラが図々しくもリリウムの縁談を横取りしてな。
仕方なくもらってやってくれ」
「えッ」
「なに、無駄にはならん。
好きなだけこき使えばいい。ウチもそうして来た。
賃金が要らず普通のメイドの3倍は働く便利な奴隷だ。
好きにしてくれ」
騒めきはもう遠慮なく大声になっている。
娘を金の要らない奴隷だと!?
何て最低な両親&姉だ!
スピーナ子爵家に対する怒声だが
悪いことをしている自覚の無いスピーナ子爵家には届かない。
「この結婚に意義があります!」
「この結婚は無効でしょう!」
「こんなインチキ、神殿は見逃すのですかッ」
参列者の中で若い青年達が椅子を倒して立ち上がる。
彼らはウィオラが言った
あるワードが気になっている。
「ウィオラ嬢、先程『初めての縁談話』と言っていましたが」
「‥あ、はい‥」
家族の心無い言葉…
いつものこととはいえ
やはり傷ついているウィオラが潤んだ瞳を向ける。
それだけで男達は胸に手を当てる。
今すぐ攫ってしまいたい!
「その通りです。
私は1度も縁談のお話を頂いたことがありません」
――ッ!!?――
「それはおかしいです!
我が侯爵家はウィオラ嬢に正式な釣書をお送りしております!」
「えッ!?」
「我が公爵家もです!」
「我が家も」
「私も」
次々に縁談を持ち掛けたと主張する青年達。
ウィオラは家族達に視線を向ける。
「私は何もお伺いしておりません。
どういう事なのです?」
「ッ、黙りなさい!
生意気に私達に質問するなんて!
お前なんかに何の発言権も無いのよ!」
母親が唾を飛ばして叱りつける
いつものことだ。
いや、違う。
いつもは暴力も伴う。
さすがに今日は打とうとはしない。
鞭も持ってきていない様子。
「何なんだあの母親」
「完全頭イカレてる」
「最低」
参列者達がわざわざ大声で聞こえる様に口にする。
「ッ、馬鹿者、お前は黙っていろ!」
妻を叱る子爵に高位貴族令息達が厳しい声で訊う。
「私達が送った釣書はどうなっているんです?」
「無作法にも返事をいただいてませんが?」
無視できない質問…
スピーナ子爵は渋々答える。
「いや、何せ姉のリリウムがまだ結婚していないのに
先に妹というわけにはいきませんからね」
現に今、
新郎新婦双方を騙してまで
妹を先に嫁がせている真っ最中で子爵の言は全く理由になっていない。
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