ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ

文字の大きさ
9 / 18

09 旅人、動く

「何て生意気な!
使用人の分際で!
サリクス様、あの者達には鞭打ち刑60回が妥当よ!
領地回復に忙しくて使用人の教育がイマイチなのね。
私が嫁いで来たらキッチリ教育してあげるわ!
鞭打ち以外にも素直にさせる方法は色々あるのよ」

リリウムが家令達を睨みつけながら言い放つ。

「ふざけないでいただきたい!
私はリリウム嬢と結婚する気など‥」
「ところでお父様。
シフト?、何かウチの使用人達もそんな事言ってませんでした?」

サリクスの声に被せる様にリリウムが子爵に聞く。

「うむ、一体何の事かと思っていたが…まぁいい。
ウィオラ、夫に離縁されたゴミ同然の行く当てのないお前だが家に戻ることを許してやる。帰ったらすぐにそのシフトとかを何とかしろ」

子爵がウィオラを見もせず命令する。

「それにこの1年領地経営が回らなくなっているのよ。
なぜか取引先も領民もお前と話したいと言ってきているからすぐにやりなさい!
戻れる恩をしっかり返さなきゃ許さないからね!
寝ずに働くのよ!
領地経営が落ち着いたらお前に相応しい道も用意してあるのよ。
隣国の大商人が性奴隷を欲しがっているの。
お前なんかを高値で買ってくれるのよ。
公爵家や侯爵家より1番高く買ってくれる大商人とはもう契約済みだからね。
逃げようなんて思うんじゃないよ。
大商人は色んな組織と懇意だからね。
世界中どこへ逃げたってすぐに捕まって地獄を味わわされるだけだからね!」

子爵夫人は夫と逆でウィオラを睨めつけながら言う。
リリウムも。

「ねえ、ウィオラが出て行ってから鶏が全滅して鶏小屋がそのままじゃない。
ウィオラはあの不潔な鶏小屋に住まわせたらいいわ。
私が里帰りした時に同じ屋敷内にウィオラがいるのは嫌だもの。
たとえ前と同様使用人部屋でもね」
「もちろんそうするわよ」

と子爵夫人。
信じられない会話。
サリクスは怒りのあまり目眩すら感じる。

「あなた達は人間ですか?
家族に対してどうしたらそんなに酷くなれるんです?」

サリクスの問いに子爵が不快そうに答える。

「ソレは家族じゃない!
――どこの馬の骨とも分からぬ男の娘だ」
「えッ!?」

ウィオラが声を上げる。
子爵夫人がサッと顔を伏せる。

「どういうことですか?
私は子爵の子供ではない?」

そんな事、今まで思ったこともなかったウィオラ。

「察しの悪い子ね。
おかしいと思わなかったの?
本当の子供だったら使用人部屋に住んで使用人同様に働かされるわけないでしょう?
そりゃ、世間の手前、学校には行かせてやったけど。
学校の成績が良かったから領地経営の仕事をさせてもらって来たのよ。
娘だからじゃない。
どれだけ働いたって報われない、使い捨ての奴隷。
それがお前なの。
ね、お母様」
「え、ええ」

子爵夫人は歯切れが悪い。

「子爵夫人…どういう…」
「知らないわ!
私が悪いんじゃない!
私はお前の父親に無理やり強姦されたのよ!
お前の父親は…そ、そう、
男娼よ!」

突然の子爵夫人の告白にウィオラは絶句する。

「それは事実とは随分違うのではないですか」

旅人が言う。
ハッと気付くウィオラ。
ずっと支えてもらっていた。

「あ、すみません、
助けてくださってありがとうございます」
「大丈夫だね?
実は私は君の父上についてほぼ確実に該当する人物を知っている。
その確認をするため従者を向かわせているんだが…」

そう言えば最初いたはずの従者と思しき人の姿が途中から無い。
でもなぜ旅人さんが…
ウィオラの思考はサリクスの怒声で中断される。

「汚らわしい間男め!
いつまで図々しく我が邸を穢すつもりだ!」

旅人はゆるりとサリクスに目を向け低い声で言う。

「残念だよ…
お前はいつからそうなってしまったんだ。
父上がさぞや失望するだろうよ」
「はぁ!?何言って‥」
≪バキッ!≫
「ぐぁッ!?」

倒れこむサリクス。
この場で1番立場が上のはずの自分が殴られたことが理解できない。
信じられず顔を上げれば
もっと信じられないものを見る。

あなたにおすすめの小説

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

【完結】よりを戻したいですって?  ごめんなさい、そんなつもりはありません

ノエル
恋愛
ある日、サイラス宛に同級生より手紙が届く。中には、婚約破棄の原因となった事件の驚くべき真相が書かれていた。 かつて侯爵令嬢アナスタシアは、誠実に婚約者サイラスを愛していた。だが、サイラスは男爵令嬢ユリアに心を移していた、 卒業パーティーの夜、ユリアに無実の罪を着せられてしまったアナスタシア。怒ったサイラスに婚約破棄されてしまう。 ユリアの主張を疑いもせず受け入れ、アナスタシアを糾弾したサイラス。 後で真実を知ったからと言って、今さら現れて「結婚しよう」と言われても、答えは一つ。 「 ごめんなさい、そんなつもりはありません」 アナスタシアは失った名誉も、未来も、自分の手で取り戻す。一方サイラスは……。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

元婚約者のあなたへ どうか幸せに

石里 唯
恋愛
 公爵令嬢ローラは王太子ケネスの婚約者だったが、家が困窮したことから、婚約破棄をされることになる。破棄だけでなく、相愛と信じていたケネスの冷酷な態度に傷つき、最後の挨拶もできず別れる。失意を抱いたローラは、国を出て隣国の大学の奨学生となることを決意する。  隣国は3年前、疫病が広がり大打撃を受け、国全体が復興への熱意に満ち、ローラもその熱意に染まり勉学に勤しむ日々を送っていたところ、ある日、一人の「学生」がローラに声をかけてきて―――。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。