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アサシンSS集

そのとき、ふたりは

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 夜空にぽっかり浮かぶ月と、散りばめられた星が、宝石のように輝いて何時までも見上げていたい、そんな夜。

「ねぇ、ゼン。オレ達って恋人同士なのか?」
 俺の愛する男が無邪気に聞いてくる。全く、人の気も知らずに呑気なものだ。
「レイ、こんな事をする仲で友達とは言わないだろうな」
 顎を上向かせ息も出来ない程のディープキスを仕掛ける。レイは、うっとりと目を瞑り身体を預け腕を絡めて来る。
 駄目だ、今夜も我慢出来そうにない。

「今日は俺の部屋に来いよ。お前の部屋は何でか落ち着かない」
「そりゃ、そうだろ。オレの部屋はカメラで見られてるんだから」
 知らなかった……。
 それにしても、カメラで監視されているのを知っているのに、平然としてるレイもどうかと思う。
 いや、そんな悠長な事は言ってられない。
 散々あの“部屋で”セックスしてるじゃないか!
 俺とレイのナニを誰かに見られてたと思うと怒りと羞恥で顔が赤くなるのを感じる。

「ゼン、怒ってるの?」
 地下の実戦練習場から部屋へと帰る前に、一階にある会社の中庭で、月見がてらイチャイチャしてたら衝撃の事実を突き付けられた。
「……怒ってないが。レイは平気なのか? その……俺とシテるの見られて」
 レイは首を傾げ魅力的に微笑んだ。それが無垢な子供の様で可愛らしさ十万倍だ。
 だが、その愛らしい唇から出た言葉はとんでもないものだった。

「ワザと見せつけてるんだよ、カメラの前の見張りに。絶対、おっ立ててると思う。誰だか知らんけど」
 そう言ってお腹を抱え爆笑してるレイを振り向かせ諭す。
「レイお願いだから、誰かに俺達のナニを見せ付けるのは止めよう。それに、話しを聞いた今じゃ、俺がおっ立てるの無理そうだ」
「えー、それはイヤ。分かったから、ゼンの部屋でしようよ」

 誘うレイの言葉は、とんでもなく魅力的だ。
 ゴクリと喉が鳴り欲望が立ち上がる。
 手を引き立ち上がるとエレベーターに向かい一直線にズンズン歩く。
「ちょっ、ゼン引っ張らないでよ痛い」
「ちょっと痛いぐらいが好きだと言ったじゃないか。俺はもう待てない……」

 レイはイタズラを思いついた子供のようにニヤリと笑い、エレベーターの中で散々煽って来る。
「ふぅん、ゼンはシタイの? オレと」
「決まってるだろ、他の奴じゃ駄目だ」
 エレベーターが止まって扉が開く。部屋を開けるなり後ろ手で鍵を締めた。

 さあ、It's showtime.だ。

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