【完】【R18】廃妃となりましたが、異母弟が王となり王妃に返り咲きました。

112

文字の大きさ
17 / 22

17※


 馬車に揺られながら、アンはちらりと向かいを伺った。対面に座るテオは、持ち込んだ奏上を読み込んでいる。時々、ペンで修正を入れては、次を見る。王宮を出てからずっと繰り返していた。
「あの…陛下」
「ん?」
「そんなにお忙しいのなら、離宮に行くの、やめませんか?」
 離宮に行くなどと言い出したのは、つい昨日のことだ。荷物は後から運ばせるが、それでも大慌てで身の回りのものを詰め込んで、追い立てられるように馬車に乗り込んだ。
 何故そんなに急ぐ必要があったのか。冬になる前に南に行きたかったらしい。思い立って決めたものだから、使用人たちはてんやわんやな大騒ぎとなった。
 もちろん政務も片付いていない。宰相も別の馬車で付いてきている。目処が付いたら宰相は奏上と一緒に引き返すらしい。過労死しそうだ。
「バーニンが勧めてくれてな。新婚旅行でもどうかと」
「新婚旅行…」
「冬になったらどこにも行けなくなる。今しかないと思った」
 テオは奏上を読み終える。既に読み終わって積み重なったそれらの上に乗せた。ぐらぐら揺れて、今にも崩れ落ちそうだ。
「さて、仕事も終わった。後はバーニンに任せる」
「伯も休ませませんと」
「この休暇が終わったらな。それまでは働いてもらう」
 テオは後ろの小窓を叩いて馬車を止めた。直ぐに後続の馬車からバーニンがやって来て、奏上を引き取っていく。
 アンは悪いと思ってひと声かけた。
「よろしく頼みます」
「お気になさらず。ごゆっくりお休みください」
 テオとも言葉を交わし、バーニンは引き返していった。
 馬車が走り出す。アンは外を見た。
「今、どのあたりでしょうか」
「もう南部には入っている。夕方よりは早くに着くはずだ」
「陛下は離宮には何度か?」
「幼い頃だがな。ほとんど覚えていない。水が豊富で、噴水がいくつもあったのは覚えている」
 昔を思い出してか、テオも窓を眺めた。目を細めて指をさした。
「あそこ、風車がある」
 言われて見てみる。確かに、赤や青の屋根の目立つ風車がいくつも見えた。
「川の氾濫防止で、ああやって風車で水を汲み上げているんだ」
「聞いたことあります。可愛らしいです」
「離宮の庭にも一基ある。時間はあるから見に行こう」
 土地柄を知るのは楽しい。アンは首都からほとんど出ないで育った。旅行というもの自体、初めてのことだった。
 テオは、随分とやつれた。相当無理をしている。この休暇で、たくさん休ませてあげたい。アンは密かに決意した。

 離宮と言っても、普通の貴族の屋敷と変わらなかった。三階建の四角い建物に、イエローの壁が目を引いた。
 屋敷の中に入る。立派な大階段を上がる。二階の奥まった部屋に寝室があった。テオは記憶が蘇ってきたのか、勝手知ったる様子で扉を開けた。
「アン、こちらへ」
 呼ばれるままついていく。バルコニーになっていて、庭が見渡せた。テオの言う通り、噴水が設置されていた。噴水から水路が真っ直ぐ伸びて、奥の森まで続いていた。テオの言う通り、水が豊富なのがよく分かった。
 部屋に戻ると、テオに引き寄せられるままベットになだれ込んだ。
「テオ様…休むのなら着替えませんと」
 テオは微笑んでアンを抱きしめた。
 髪留めを外されて、結い上げた髪が解かれる。
「…良い香りだ」
 ポツリと呟く。そのままテオは静かになった。やはり余程、疲れが溜まっていたらしい。テオの背中を撫でる。よく眠れるように、あやすように背中をやゆっくり叩いた。


 水が豊富なだけあってボイラーの設備が整っており、大人二人が入るには十分な浴場があった。タイルで敷き詰められた部屋で、見るのも入るのも初めてだった。
 テオとアンは向かい合って浸かった。床でも、あまり見たことのないテオの体を見るのが恥ずかしく、目のやり場に困った。アンは自分の体が見られているのも恥ずかしく、膝を抱えて座った。
「足伸ばしたらどうだ?」
 向こうは全く気にしていないらしい。気楽にそんなことを言った。
「…こちらのほうが落ち着きます」
「もしかして、恥ずかしいのか?」
 アンは髪で体を隠した。テオは吹き出した。
「見慣れてるだろ。何をいまさら」
「帰る頃には、慣れてると思います」
 テオは腕を伸ばしてアンの髪を一束手に取った。
「君の髪は綺麗だな」
「ソルが手入れしてくれていますから」
 切られた髪は、今は腰まで伸びていた。ソルは毎日、髪の手入れに時間をかけてくれた。後でソルに伝えておこう。
 次は足を触れられる。かかとを引っ張られて足が伸びた。
「テオ様」
「楽だろ」
 テオはいたずらっ子のようにくすくす笑った。

 湯浴みを終えて、食事を終え、ベットで横になる。テオはアンの髪を梳きながら眠りについた。

 テオは昼を過ぎても起きなかった。やはり疲れ切っているらしい。アンは彼を起こさないように、息を潜めた。
 静かな寝息を聞く。冬眠した動物のようなゆっくりした呼吸だった。
 穏やかな寝顔だった。良い夢を見れるよう願った。
 
 目覚めたテオと、体を繋げた。色々なことがあって、久しぶりの行為だった。明るいから、お互いの体がよく見えた。たくましい体躯が、アンを簡単に持ち上げる。テオの上に乗っかって、深く繋がって、アンはあられもなく声をあげた。下からの突き上げがいつもとは違う所に当たって、快楽が全身を駆け巡る。口を塞いでくるから、アンはくらくらして、正気ではいられなかった。
 一度、極まると際限なく締め付けを繰り返した。テオの攻めたては激しく、アンは何度も意識を失った。

 事を終えて、二人で湯船に浸かる。アンは満身創痍で、テオの上に仰向けに乗って、ぐったりしていた。湯船に落ちないようにテオが腕を回して支える。
 まだ足りないのか、アンの胸の先端を摘まむ。アンは顔を仰け反らせた。
「…あっ…!」
 もう片方の手が下へ伸びる。指が入ってきて、ぐり、とえぐられる。
「やっ!あ…!」
「敏感だな」
「あ…も、もう…」
 指が穴を広げる。溶けきっているそこは、十分、愛液で満たされていた。肉棒の先端が当てられたかと思えば、するすると奥まで入り込んだ。
「んあっ、ああ…」
 テオは息をつく。
「…キツイな」
「きつい…?」
「君のなかが良すぎて、持たないってこと」
 肉棒はじっくりと子宮口を押し上げた。ぐぐ、と子宮が潰されるような感覚。緩慢だが圧迫感があって、その刺激がたまらない。
「テオさま…きもちいい…」
 体が揺れる度に、水面も揺れた。湯気が立ち込めて、息苦しかった。
 緩やかな動きだから、緩やかにその時がやって来た。びく、びく、と腟内が肉棒を締め付ける。
 アンは快楽を逃したくて、テオの腕にぐっと爪を立てた。
 熱いものが注がれる感覚。膣内に広がる。
 あつい、と呟く。口を塞がれて、くちゅくちゅといやらしい水音が響く。離れると、肉棒も抜かれた。
 テオの指がアンの唇を撫でる。
「のぼせる前に上がろう。名残惜しいが」
「…テオさま…まだください」
 テオの願いを叶えたくて、そう言ってみる。顎が持ち上がって口付けられる。息継ぎの合間、僅かに聞こえたテオの囁やきに、アンは小さく笑った。
 
感想 0

あなたにおすすめの小説

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

「既読だけだったあなたと別れて、私はちゃんと恋をした」〜言葉を失った私が、もう一度誰かを好きになるまで〜

まさき
恋愛
五年間、私は何も言えなかった。 「ねえ、今日も遅いの?」 そう送ったメッセージに返ってくるのは、いつも“既読”だけ。 仕事に追われる夫・蒼真は、悪い人じゃなかった。 ただ——私を見ていなかった。 笑って送り出して、一人で夕食を食べて、眠れない夜をやり過ごす。 そんな日々を続けるうちに、言葉は少しずつ消えていった。 そしてある夜、私は離婚届を置いて家を出た。 声にできなかった五年分の気持ちを、そのまま残して。 ――もう、何も言わなくていいと思った。 新しい生活。静かすぎる部屋。 誰にも気を遣わなくていいはずなのに、なぜか息がしやすい。 そんなある日、出会ったのは—— ちゃんと話を聞いてくれる人だった。 少しずつ言葉を取り戻していく中で、気づいてしまう。 私はまだ、蒼真のことを忘れられていない。 「今さら、遅いよ」 そう言えるはずだったのに—— これは、何も言えなかった私が、 もう一度“誰かを好きになる”までの物語。 そして最後に選ぶのは、 過去か、それとも——今か。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい
恋愛
異国からやってきた第3王女のアリシアは、帝国の冷徹な皇帝カイゼルの元に王妃として迎えられた。しかし、冷酷な皇帝と呼ばれるカイゼルは周囲に心を許さず、心を閉ざしていた。しかし、アリシアのひたむきさと笑顔が、次第にカイゼルの心を溶かしていき――。