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23・大樹海からお届けします!~コーヒー奮闘記~
しおりを挟む私は今、コーヒー豆を挽くためのコーヒーミルを作っている。
すでに試作ミルはある。王都の鍛冶職人と木工職人に依頼して、箱型でハンドルをぐるぐる回して挽くヤツを作ってもらった。けれど何度説明しても内刃の設計で首を傾げられ、図に描いても理解できないと言われた。なので、仕方なしに妥協した結果、粗目の石臼がセットされた物になった。これが使えない!小麦を挽くならいいんだけれど、当然だが硬い豆を挽くと石の粉まで混じる!!飲めんわ!!
なので、魔女の遺産のミスリル合金を使って、あの複雑な円錐形の回転刃と受け刃の内刃を錬金し、擂り臼式ミルを再現した。もちろん手動じゃなく魔道具仕様で自動粉砕だ。
私たちがフォルゲン商会に卸すのは、レギュラーコーヒー。つまり、挽き終えた粉を卸す契約になっている。今はね。どうしてかと言うと、現在ミルが商品化できないでいたから。ただ、いずれは『固い豆を粉にする道具』を作って、焙煎豆を売ろうと計画はしている。…遠い道のりだわ。
現在の商品は、研究熱の冷めないリュースが風魔法で挽いておりますが、なにか?
試行錯誤の間は、マジで風魔法の修行みたいだったわよ。粉塵と化して消え去ったり、半分も残らなかったり、少し大きめにとイメージしたとかで、胡麻つぶみたいな欠片が大量に高速で飛んで来て痛かったのを覚えてる。悩んだ末に薬研を使って挽いてみて、それを手本に魔法で挽いて今がある。食事で飲む分以外は、私は全く手を出さなかったからね。
でも、ミルに関しては私しか作れない。構造を知っているのは私だけだから。コーヒー愛好者全員に行き渡るほどは作れないから、少し大型にしてフォルゲン商会用にいくつか作ろうかと計画中。魔石代がまた上乗せされるかな?
そんな私を放置して、コーヒー担当者リュース君は、ただ今『密閉容器』を開発中だ。
この世界の飲み物は、果実の絞った物、それを発酵させて作られるワインに似た果実酒や穀物から作るお酒、そしてお茶。
お茶も密閉容器が必要な部類だけれど、薬草や香草や花の花弁を乾燥させたそれらは金属の器で売られ、お湯を注いだ後の色や香りが重視されるだけの物。密閉よりも、きっちり乾燥されているか、色は綺麗に出てるかしか求められていない。薬草茶なんて、当たり前だが効能重視だ。
だから、どーせアチラの世界の人間ほどに口が肥えてる訳じゃないだろうと、私は他人事のように、
「時間停止付与された魔法袋に入れて降ろしたら?」
と、投げやりに提案してみた。が、几帳面な彼は、まるで愛娘を手荒に扱ったがごとく眦を吊り上げた。
「お店からお客さんの手に渡すための入れ物を考えてるんだよ!」
「だから、客にも魔法袋を持ってこさs」
「一体コーヒーにいくら掛けさせるの!売れなくなるよ!」
おお、コワッ!
そんな訳で、安価で作れる密閉式の容器ができないかと奮闘中。
そんなのはさー、ドミさんちの商会が考えることであって、生産者としては物の品質だけ考えていれば―?と私は思うのだが、ココと熱愛している担当者君は、客の口に入るまでが僕の責任範囲です!と、嫁入り直前の愛娘持ちの父親のごとく言ってのけた。
まぁ、ドミさんからの依頼でもあるし、フォルゲン商会でも考案中とのことだから放っておくけれどねー。
この世界の容器の種類は、思いのほか多種だ。
ガラス製・木製・金属製・粘土の素焼き・陶器・魔物や獣の革製・魔道具……。もしかしたら、私がまだ見てない器もあるかも。
でだ、食品を入れて販売する場合、庶民向けは安価で大量に作れる木製か粘土の素焼きか革製で、お金持ちや貴族王族相手には、高価な各種金属製かガラス製か陶器か魔道具になる。ガラス製品はポーション瓶なんかに使われてるけれど、あれはリサイクル品として回収されているし、初回は瓶込みの値段になるから、下級ポーションでもそれなりに高価だ。それに耐久性がなく壊れやすいしね。
コーヒーを売りつける相手は、ほぼ金持ちや王侯貴族となるのは分かっているんだけれど、ここで容器の耐久度と密閉度と湿気が問題になってくる。シリ〇ゲルなんて無い世界だよ。
これだけ条件が厳しくなると、魔道具一択になるのは必然で。
「…なにやってんの?」
見やればリュースと黒猫が浅い桶の中に手を突っ込んで、何かを混ぜながら話し込んでいた。
「ん~~~?あのさ、スライムの粘液にさ、魔物の骨の粉を混ぜてさ」
「えー!?なにそれ!」
居間のソファに転がっていた私は、ダッシュでウッドデッキに飛び出しましたよ。
元研究者の血が騒ぐってもんだ。あ、私は薬と食品関連でしたが。でも、何かを混ぜて新たな反応を発見するのは大好きだ。
桶を挟んでリュースとルードが座り、リュースが乳白色の粘性液体に手を入れて混ぜていた。一緒に覗き込みながら、性って言うか職業病って言うのか、無意識に匂いと感触と温度を観察していた。
【看破】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名称:-
材料:ボーンツリースライム(白)の体液・コカトリスの骨
割合:8 対 2
効能:伸縮自在・半永久耐性・脱湿・無臭
加工:可 [薄く伸ばして陰干しすることで若干の硬化あり]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ええええええ!!!ナニコレ!!
「リュー…もんのすっごいモノになってるよ…」
『案を授けた俺も驚がくしている』
「え?なに?」
「鑑定で見ても分からない?」
「うん…僕が見ると、材料がスライムと魔獣の骨だけで効能が伸縮ありと耐性ありだけしか…」
仕方ないか。薬師と言ってもまだ見習いで【鑑定】も低Lvだ。
「ほら。【結果開示】」
私は結果を例の透明タブレット上に映し、それに指を添えてドラッグ&ドロップの要領でリュースの前に開示してあげた。
見終わった途端に自分の手を沈めている液体を、息を飲んで呆然と見下ろしていた。ふははは!
三日後、リュースの手には、魔物の皮袋の中に樹脂の様な柔らかさを持つ不透明な袋が入った、コーヒー専用袋『ボーンツリーの器』があった。
革袋の中に納められた袋状のボーンツリーの器は、口を寄せて圧を掛けるとぴったりくっついて自然に離れることはない。まるで吸着シートだ。コーヒー粉の山ぎりぎりで閉じれば空気劣化も割と防げそうだわね。
後日、袋はこちらで生産し、コーヒーと共に注文分だけ卸す契約になった。理由は、材料となる魔物どもがこの大樹海にしかいないから。フォルゲン商会でも、それなりの物を作り上げたが、コレには勝てなかったようだ。
コーヒー熱、恐るべし!
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誤字を訂正しました。12/7
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