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ネタ切れ作家は海の見えるカフェで一人頭を抱える
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国道134号線沿いにある、相模湾を一望しながらまったりと過ごすことができるとここ最近メディアでも話題になっているカフェ。
リア充達が集まり━━━━部そうでない客も混じってはいるが━━━━かなりの賑を見せ大盛況の店内。
そんな華やかな印象のあるカフェの━━━━━━日の当たらない一番奥の席で、私、勇利愛華は頭を抱えていた。
「愛華さん。何かネタは浮かびましたか?」
そう言いながら、カフェ店員、七瀬那奈は私の視界の端に紅茶を置いた。
「全くです」
ノートパソコンを閉じて、彼女の方へ視線を向けると、私以外の多数の視線が彼女に注がれている事に気がついた。
彼女はその視線に全く気がついていない様子だから、あえてそこには触れずに紅茶に手を伸ばした。
口元までカップを近づけると、チョコレートのような甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「早く新しいネタが浮かんでくるといいですね」
同性の私からみても思わず目を背けたくなるほどの眩しい笑顔を称えて、出来損ないのファイティングポーズを取ってみせた。
おそらく、これが彼女なりの応援つもりなのだろう。
なにかネタに繋がるかもしれない、少し彼ら、那奈のファンにサービスをしてあげよう。
「那奈先輩。そこでターン」
「た、たーんですか?」
那奈は突然の私からの指令にあっけに取られた様子ではあったけど、私の言葉通りにその場で膝下丈のスカートをエプロンもろともひるがえし、締まった太ももがチラリと露見した。
彼女のファンであろう視線の主達は、声にはならない歓声をあげる。もちろん彼らは一切声を出していないから、その歓声は耳には届いては来ない。
しかし、異様な盛り上がりを、熱気を肌で感じた。
「これでよろしいですか?」
「はい。大丈夫です」
「何かご協力できることがあったら言ってくださいね」
そう言うと、那奈はお辞儀をしてから、カウンターの中へと戻っていく。
それと同時に!こちらに向けられていた視線も霧散した。
「はあ」
思わずため息をついてしまったけれど、決して自分が見られていたわけではないんだと言うことを理解して、ガッカリしたわけではない。
ただ単に、ネタが浮かんでこないその現状を一瞬でも忘れていたのに現実に引き戻されただけだ。
もう少しくらいと、現実逃避に那奈の方へ視線を向ける。
にこやかに、華やかに、優雅に彼女は接客をこなしている。
彼女のファン達は鼻の下を伸ばして彼女に見惚れている。
彼氏いるんだけどね。彼女。しかも太刀打ちのできない完璧に近い超人。高校の先輩だったからよく知っている。
私と同じ、腰越高校の卒業生ならば、間違っても那奈には手を出そうとはしないだろう。
つまり、今那奈に視線を向けているファン達は、腰越高校の出身者ではないのだ。
那奈はとある界隈では有名人なのだと立花君が言っていた。
コスプレイヤーとしてあちらこちらのイベントに参加したりしているらしい。
つまり、彼らはコスプレイヤー七瀬那奈のファンなのだ。
長い艶々の黒髪、整っていてなおかつ年齢より幼く見える容姿、スタイル抜群で身長は167センチもあるらしい。
まあ、あの彼氏の存在を知らないのならば、お近づきになりたいなと思ってしまうのが、世の男の心理なのだろう。
私はあまり詳しくはないのだけれど、立花くんがスマホに那奈の写真を保存していて、一度喧嘩をしたことがあった。
すぐに写真を消して謝ってきたから許してあげたけれど、彼は今どこで何をしているのだろう。
自分探しの旅に出ると言った高校の卒業式の翌日以降連絡は取れなくなった。
「いけない」
また邪推をしてしまった。事もあろうに立花くんの事をまた考えてしまうなんて。連絡もよこさない奴の事なんて考えるだけ時間の無駄なのに。
「……やるか」
私は閉じたノートパソコンを開き直して、点滅を繰り返すアイコンと再度にらめっこを始めた。
リア充達が集まり━━━━部そうでない客も混じってはいるが━━━━かなりの賑を見せ大盛況の店内。
そんな華やかな印象のあるカフェの━━━━━━日の当たらない一番奥の席で、私、勇利愛華は頭を抱えていた。
「愛華さん。何かネタは浮かびましたか?」
そう言いながら、カフェ店員、七瀬那奈は私の視界の端に紅茶を置いた。
「全くです」
ノートパソコンを閉じて、彼女の方へ視線を向けると、私以外の多数の視線が彼女に注がれている事に気がついた。
彼女はその視線に全く気がついていない様子だから、あえてそこには触れずに紅茶に手を伸ばした。
口元までカップを近づけると、チョコレートのような甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「早く新しいネタが浮かんでくるといいですね」
同性の私からみても思わず目を背けたくなるほどの眩しい笑顔を称えて、出来損ないのファイティングポーズを取ってみせた。
おそらく、これが彼女なりの応援つもりなのだろう。
なにかネタに繋がるかもしれない、少し彼ら、那奈のファンにサービスをしてあげよう。
「那奈先輩。そこでターン」
「た、たーんですか?」
那奈は突然の私からの指令にあっけに取られた様子ではあったけど、私の言葉通りにその場で膝下丈のスカートをエプロンもろともひるがえし、締まった太ももがチラリと露見した。
彼女のファンであろう視線の主達は、声にはならない歓声をあげる。もちろん彼らは一切声を出していないから、その歓声は耳には届いては来ない。
しかし、異様な盛り上がりを、熱気を肌で感じた。
「これでよろしいですか?」
「はい。大丈夫です」
「何かご協力できることがあったら言ってくださいね」
そう言うと、那奈はお辞儀をしてから、カウンターの中へと戻っていく。
それと同時に!こちらに向けられていた視線も霧散した。
「はあ」
思わずため息をついてしまったけれど、決して自分が見られていたわけではないんだと言うことを理解して、ガッカリしたわけではない。
ただ単に、ネタが浮かんでこないその現状を一瞬でも忘れていたのに現実に引き戻されただけだ。
もう少しくらいと、現実逃避に那奈の方へ視線を向ける。
にこやかに、華やかに、優雅に彼女は接客をこなしている。
彼女のファン達は鼻の下を伸ばして彼女に見惚れている。
彼氏いるんだけどね。彼女。しかも太刀打ちのできない完璧に近い超人。高校の先輩だったからよく知っている。
私と同じ、腰越高校の卒業生ならば、間違っても那奈には手を出そうとはしないだろう。
つまり、今那奈に視線を向けているファン達は、腰越高校の出身者ではないのだ。
那奈はとある界隈では有名人なのだと立花君が言っていた。
コスプレイヤーとしてあちらこちらのイベントに参加したりしているらしい。
つまり、彼らはコスプレイヤー七瀬那奈のファンなのだ。
長い艶々の黒髪、整っていてなおかつ年齢より幼く見える容姿、スタイル抜群で身長は167センチもあるらしい。
まあ、あの彼氏の存在を知らないのならば、お近づきになりたいなと思ってしまうのが、世の男の心理なのだろう。
私はあまり詳しくはないのだけれど、立花くんがスマホに那奈の写真を保存していて、一度喧嘩をしたことがあった。
すぐに写真を消して謝ってきたから許してあげたけれど、彼は今どこで何をしているのだろう。
自分探しの旅に出ると言った高校の卒業式の翌日以降連絡は取れなくなった。
「いけない」
また邪推をしてしまった。事もあろうに立花くんの事をまた考えてしまうなんて。連絡もよこさない奴の事なんて考えるだけ時間の無駄なのに。
「……やるか」
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