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ロウエが眠る間の出来事
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ロウエの暮らすラニバ村の外れの一軒家。
シフィエス宅に三人の大人が集まり、テーブルを囲んでいた。
黒髪の美女シフィエス。マリエスの親代わり。過保護がすぎる魔術師。
その隣には茶髪のポニーテールロリエッタ。言わずと知れた、ロウエの母親である。
そして、二人の正面に座るのは金髪の若々しい青年。年の頃で言うならば、二十歳そこそこと言ったところだろうか。
「なんともやりづらい……二人とも座ったらどうだ?」
青年はイラついているのか、眉間に皺を寄せながらそう言った。
「では、お言葉に甘えて」
にこやかに答え椅子に座ったのはロリエッタ。
「せ、先輩……!」
そんなロリエッタを静止しようとしたのはシフィエスだが、青年が一つ咳払いをすると、シフィエスもすごすごと椅子に腰をおろした。
年齢的に見れば青年が年下のはずで、気を使っている二人の様子はおかしいようにも思えるが、それを指摘する人物はこの場には存在しない。
「先生お久しぶりですね。ロウエを助けていただき、ありがとうございました」
緊張しているのが見て取れるシフィエスを尻目に、いつもの調子でロリエッタは口を開いた。
「ロウエ……あぁ、あのガキの事か。お前の子か?」
「はい。そうです」
「なるほどな。それなら納得もいく。
あの魔力可能貯蔵量、母親譲りだな。
で、シフィエス。お前が推薦したいと言っていたのはあのガキの事か?」
「先生、ロウエです」
金髪の青年からは強い圧を感じられるが、臆することなくロリエッタは訂正する。
「はい。そうです。あのガキ────いえ、ロウエです」
シフィエスは青年にあわせてロウエをガキ呼ばわりしようとしたが、ロリエッタの満面の笑みの圧に負けて、すぐに訂正した。
どうやら三者の力関係は青年>ロリエッタ>シフィエスの順のようだ。
「天才魔術師、ロリエッタの息子……か、無くはないか」
そうポツリと呟くと、顎に手を当てて少し考え込むようにして青年はうつむいた。
「先生。やめてください。もうあたしは引退したんですよ?だから元天才魔術師です」
その言葉を聞いたせいか、青年は人知れず貧乏ゆすりをしていた。
ロリエッタには、少し空気の読めないところがあるようだ。
「……先生。実は一つ問題がありましてロウエは魔術はおろか、魔法にも全く興味を持っていないのです」
「ほう」
「ロウエはその変わりに剣術に強い興味を持っています。それを逆手に取り、魔術の道に誘導しては、と思うのですが」
「俺にどうしろと?」
「剣術をロウエに教えて貰う事はできませんか?きっと、剣術に興味を持てれば自然と先生に興味が沸いて、魔術にも興味を持てると思うのです」
「はあ?やだよ。なんで俺がガキに剣術を教えなきゃいけないんだよ」
「先生。ガキじゃありませんよ。ロウエです」
三者の間になんとも言えない奇妙な空気が流れていた。
いつもなら簡単に折れるはずのシフィエスが折れず、青年の目をまっすぐに見つめていた。
「……ったくしょうがねえな」
「先生ありがとうございます!」
「勘違いはするな。まだ話を受けた訳じゃねえ。剣術を教えてやるのは、あのガキが課題をクリアできた場合のみだ」
「先生、ロウエです」
「課題ですか?」
「ああ、そうだ」
青年はもったいぶるように一度息を深く吸ってから口を開いた
「一度しか言わないからよく聞け。
課題は────」
シフィエス宅に三人の大人が集まり、テーブルを囲んでいた。
黒髪の美女シフィエス。マリエスの親代わり。過保護がすぎる魔術師。
その隣には茶髪のポニーテールロリエッタ。言わずと知れた、ロウエの母親である。
そして、二人の正面に座るのは金髪の若々しい青年。年の頃で言うならば、二十歳そこそこと言ったところだろうか。
「なんともやりづらい……二人とも座ったらどうだ?」
青年はイラついているのか、眉間に皺を寄せながらそう言った。
「では、お言葉に甘えて」
にこやかに答え椅子に座ったのはロリエッタ。
「せ、先輩……!」
そんなロリエッタを静止しようとしたのはシフィエスだが、青年が一つ咳払いをすると、シフィエスもすごすごと椅子に腰をおろした。
年齢的に見れば青年が年下のはずで、気を使っている二人の様子はおかしいようにも思えるが、それを指摘する人物はこの場には存在しない。
「先生お久しぶりですね。ロウエを助けていただき、ありがとうございました」
緊張しているのが見て取れるシフィエスを尻目に、いつもの調子でロリエッタは口を開いた。
「ロウエ……あぁ、あのガキの事か。お前の子か?」
「はい。そうです」
「なるほどな。それなら納得もいく。
あの魔力可能貯蔵量、母親譲りだな。
で、シフィエス。お前が推薦したいと言っていたのはあのガキの事か?」
「先生、ロウエです」
金髪の青年からは強い圧を感じられるが、臆することなくロリエッタは訂正する。
「はい。そうです。あのガキ────いえ、ロウエです」
シフィエスは青年にあわせてロウエをガキ呼ばわりしようとしたが、ロリエッタの満面の笑みの圧に負けて、すぐに訂正した。
どうやら三者の力関係は青年>ロリエッタ>シフィエスの順のようだ。
「天才魔術師、ロリエッタの息子……か、無くはないか」
そうポツリと呟くと、顎に手を当てて少し考え込むようにして青年はうつむいた。
「先生。やめてください。もうあたしは引退したんですよ?だから元天才魔術師です」
その言葉を聞いたせいか、青年は人知れず貧乏ゆすりをしていた。
ロリエッタには、少し空気の読めないところがあるようだ。
「……先生。実は一つ問題がありましてロウエは魔術はおろか、魔法にも全く興味を持っていないのです」
「ほう」
「ロウエはその変わりに剣術に強い興味を持っています。それを逆手に取り、魔術の道に誘導しては、と思うのですが」
「俺にどうしろと?」
「剣術をロウエに教えて貰う事はできませんか?きっと、剣術に興味を持てれば自然と先生に興味が沸いて、魔術にも興味を持てると思うのです」
「はあ?やだよ。なんで俺がガキに剣術を教えなきゃいけないんだよ」
「先生。ガキじゃありませんよ。ロウエです」
三者の間になんとも言えない奇妙な空気が流れていた。
いつもなら簡単に折れるはずのシフィエスが折れず、青年の目をまっすぐに見つめていた。
「……ったくしょうがねえな」
「先生ありがとうございます!」
「勘違いはするな。まだ話を受けた訳じゃねえ。剣術を教えてやるのは、あのガキが課題をクリアできた場合のみだ」
「先生、ロウエです」
「課題ですか?」
「ああ、そうだ」
青年はもったいぶるように一度息を深く吸ってから口を開いた
「一度しか言わないからよく聞け。
課題は────」
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