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ナナケンジャ
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翌朝、日課の素振りをしたかったのだけど、昨日の今日という事もあるし、木剣も破損してしまった事もあって諦めた。
シフィエスさんから呼び出しがかかっていたらしく、朝食を終えるとマリエスに連れられてシフィエスさんの家へ向かう事になった。
「シフィエスさん。ただいま帰りました!ロウエも一緒です」
「お邪魔します」
マリエスは扉を開くと元気よく挨拶、そして僕の随伴を告げた。
「マリエスおかえりなさい」
マリエスにしか向ける事のない笑みを浮かべて、シフィエスは優雅にカップを口元へ運ぶ。
「昨日のガキか」
シフィエスが座るテーブルの正面にもう一人。
その人物は振り返り、あまり興味がなさそうに僕を見た。
かなり若い男だ。間違いなくシフィエスよりは若い。
僕の見立てでは20歳前後くらいだろう。
しかし、その男の態度はかなり悪い。シフィエスも同席しているテーブルの上に足を投げ出すように椅子に座っていた。
シフィエス相手にこんな態度を取れるなんて、よほどの家の産まれなのか、ただの命知らずなのか僕に判断するすべはないが。
「シフィエスさん。そちらの方は?」
シフィエスはカップをゆっくりとした所作でテーブルに置く。
「先輩に聞いて来なかったのですか?
まったく、先輩はいつもいつも肝心な事を言わないで……」
そんなシフィエスの様子を見た正面の男が一つ咳払いをした。
「も、申し訳ありません。
いいですかロウエ。心して聞きなさい。
この方は____」
これからどんな発表がされるのか、ドラムロールでも聞こえてきそうな雰囲気だ。
シフィエスもそれをわかってか、勿体ぶって言葉を溜める。
「___現代七賢者の一人、そして私と先輩の師匠、ロウエの命の恩人、サギカ様です!」
「この人が……?」
たしか昨日、シフィエスが話していた、僕に剣術を教えてくれると言っていた人か。
だとしたらおかしくないか?
僕の頭上には、複数のクエスチョンマークが浮かんでいる。
まず、シフィエスと母さんの師匠と言うなら年齢的にありえないし、『ゲンダイナナケンジャ』ってなんだ?
僕の命の恩人という事は、昨日僕を助けてくれたのもこの人、という事か?
「ロウエ。ゴチャゴチャ考えてる事が口に出てますよ」
そんなはずはない。その証拠にマリエスは首を傾げている。
また人の心を勝手に読んだな。
「何でも良い。ガキ二人、そこに座れ」
男は少しイラついた様子で、シフィエスの横を指差す。断る理由もないから、大人しくシフィエスの左右に別れて座った。
「で、そっちのガキ。剣術習いたいんだっけか?」
座って早々、男はそう口を開いた。
ここは『ハイ』と答えるのが正解なのかよくわからずシフィエスに目配せをすると、シフィエスはゆっくりと頷いて見せた。
そうは言われても、目の前に座る男はどうも胡散臭い。
左右非対称の金髪、軽薄そうな整った顔立ち。魔術士らしからぬ言葉遣い。
魔術士という者を僕は、シフィエス以外に知らない。だからそう思ってしまうのかもしれないけど。
それ以外にも突っ込みどころが多すぎる。
「ゴチャゴチャ考えてるようだが、別に俺はお前に剣術を教える義理はないんだ。
嫌なら別にそれでいい」
そう言って、立ち上がろうととする男をシフィエスがあの手この手でなだめる。
珍しく慌てふためくシフィエスの様子を傍観していると、シフィエスから激情の意思が込められた視線が飛んできた。
無視をしても良かったのだけど、後が怖いから謝る事にした。
「すいませんでした」
「別に俺は謝って欲しいわけじゃない」
そんな男の態度に辟易した。なんともめんどくさそうな男だ。
「今、面倒くさそうな男だと思ったろ。……そういう正直な奴は嫌いじゃないがな」
もしやこの男、シフィエスと同じく人の心が読めるのか?
だとすると、高等魔術が使えるというのは嘘では無いのかもしれない。
「ああ。使えるぜ。試しにこの家を爆破してやろうか?」
その言葉を聞いて、シフィエスがガバっと勢いよく立ち上がる。
家が爆破されたら溜まったもんじゃないと、男をなだめにかかる。
「せ、先生それは……」
「冗談だよ。で、お前は剣術を学びたいのか?学びたくないのか?」
シフィエスが立ち上がったタイミングから、僕の足をかかとでギリギリと踏みつけている。
いつもよりかなり強く踏みつけられていた。
もし、このまま男を帰してしまった折には、僕の命はないと悟る。
「ま、学びたいです」
「なんか言わされてる感があるなー」
踏むだけじゃなく、横にグリグリと動かすモーションまで加えてきた。
「い、いえ。そ、そんな事はないです。是非、僕に剣術を教えて下さい」
「ふん。まあいいよ」
安堵したのか、シフィエスは足をどけてくれた。
「じゃあ、実力がどんなもんか見たいから見せてくれるか?
もう一人のガキ。言いつけ通り、折れた剣の柄は持ってきたんだろう?」
「は、ハイ!!」
マリエスは元気よく返事をすると、どこからか木剣の柄を取り出し、男に差し出した。
「よしよし。じゃあ早速だが、この折れた木剣を使って、木を切り倒して貰おうか」
「えっ?」
シフィエスさんから呼び出しがかかっていたらしく、朝食を終えるとマリエスに連れられてシフィエスさんの家へ向かう事になった。
「シフィエスさん。ただいま帰りました!ロウエも一緒です」
「お邪魔します」
マリエスは扉を開くと元気よく挨拶、そして僕の随伴を告げた。
「マリエスおかえりなさい」
マリエスにしか向ける事のない笑みを浮かべて、シフィエスは優雅にカップを口元へ運ぶ。
「昨日のガキか」
シフィエスが座るテーブルの正面にもう一人。
その人物は振り返り、あまり興味がなさそうに僕を見た。
かなり若い男だ。間違いなくシフィエスよりは若い。
僕の見立てでは20歳前後くらいだろう。
しかし、その男の態度はかなり悪い。シフィエスも同席しているテーブルの上に足を投げ出すように椅子に座っていた。
シフィエス相手にこんな態度を取れるなんて、よほどの家の産まれなのか、ただの命知らずなのか僕に判断するすべはないが。
「シフィエスさん。そちらの方は?」
シフィエスはカップをゆっくりとした所作でテーブルに置く。
「先輩に聞いて来なかったのですか?
まったく、先輩はいつもいつも肝心な事を言わないで……」
そんなシフィエスの様子を見た正面の男が一つ咳払いをした。
「も、申し訳ありません。
いいですかロウエ。心して聞きなさい。
この方は____」
これからどんな発表がされるのか、ドラムロールでも聞こえてきそうな雰囲気だ。
シフィエスもそれをわかってか、勿体ぶって言葉を溜める。
「___現代七賢者の一人、そして私と先輩の師匠、ロウエの命の恩人、サギカ様です!」
「この人が……?」
たしか昨日、シフィエスが話していた、僕に剣術を教えてくれると言っていた人か。
だとしたらおかしくないか?
僕の頭上には、複数のクエスチョンマークが浮かんでいる。
まず、シフィエスと母さんの師匠と言うなら年齢的にありえないし、『ゲンダイナナケンジャ』ってなんだ?
僕の命の恩人という事は、昨日僕を助けてくれたのもこの人、という事か?
「ロウエ。ゴチャゴチャ考えてる事が口に出てますよ」
そんなはずはない。その証拠にマリエスは首を傾げている。
また人の心を勝手に読んだな。
「何でも良い。ガキ二人、そこに座れ」
男は少しイラついた様子で、シフィエスの横を指差す。断る理由もないから、大人しくシフィエスの左右に別れて座った。
「で、そっちのガキ。剣術習いたいんだっけか?」
座って早々、男はそう口を開いた。
ここは『ハイ』と答えるのが正解なのかよくわからずシフィエスに目配せをすると、シフィエスはゆっくりと頷いて見せた。
そうは言われても、目の前に座る男はどうも胡散臭い。
左右非対称の金髪、軽薄そうな整った顔立ち。魔術士らしからぬ言葉遣い。
魔術士という者を僕は、シフィエス以外に知らない。だからそう思ってしまうのかもしれないけど。
それ以外にも突っ込みどころが多すぎる。
「ゴチャゴチャ考えてるようだが、別に俺はお前に剣術を教える義理はないんだ。
嫌なら別にそれでいい」
そう言って、立ち上がろうととする男をシフィエスがあの手この手でなだめる。
珍しく慌てふためくシフィエスの様子を傍観していると、シフィエスから激情の意思が込められた視線が飛んできた。
無視をしても良かったのだけど、後が怖いから謝る事にした。
「すいませんでした」
「別に俺は謝って欲しいわけじゃない」
そんな男の態度に辟易した。なんともめんどくさそうな男だ。
「今、面倒くさそうな男だと思ったろ。……そういう正直な奴は嫌いじゃないがな」
もしやこの男、シフィエスと同じく人の心が読めるのか?
だとすると、高等魔術が使えるというのは嘘では無いのかもしれない。
「ああ。使えるぜ。試しにこの家を爆破してやろうか?」
その言葉を聞いて、シフィエスがガバっと勢いよく立ち上がる。
家が爆破されたら溜まったもんじゃないと、男をなだめにかかる。
「せ、先生それは……」
「冗談だよ。で、お前は剣術を学びたいのか?学びたくないのか?」
シフィエスが立ち上がったタイミングから、僕の足をかかとでギリギリと踏みつけている。
いつもよりかなり強く踏みつけられていた。
もし、このまま男を帰してしまった折には、僕の命はないと悟る。
「ま、学びたいです」
「なんか言わされてる感があるなー」
踏むだけじゃなく、横にグリグリと動かすモーションまで加えてきた。
「い、いえ。そ、そんな事はないです。是非、僕に剣術を教えて下さい」
「ふん。まあいいよ」
安堵したのか、シフィエスは足をどけてくれた。
「じゃあ、実力がどんなもんか見たいから見せてくれるか?
もう一人のガキ。言いつけ通り、折れた剣の柄は持ってきたんだろう?」
「は、ハイ!!」
マリエスは元気よく返事をすると、どこからか木剣の柄を取り出し、男に差し出した。
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