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復讐編
ep1 つまらない日々
しおりを挟むこれは夢の中なのだろうか? ………
どう見たって外国人の少女が
必死に自分に向かって何か叫んでいる
しかしそれを搔き消すように響く騒音で
その言葉は聞き取れない
人形のように整った顔立ちに
金色の光沢のある青い目
気を抜けば見惚れそうなほどに美しいから
彼女が必死なのを忘れそうになる
そして
「あなたが、、」
その女性の綺麗な声が
ほんの一瞬だけ聞こえた気がした…
そんななか
自分、岩見 誠士郎(イワミ セイシロウ)
は目を覚ました
いつもの朝だと思いながら
ベットから出て洗面台の蛇口をひねり顔を洗う
そして冷蔵庫の食パンを食べる
あらかじめ伝えると父親は
自分が幼い頃に死んでしまっていて
母親一人で自分を育ててくれたんだけど
あまり迷惑かけたくなかったから
母親に一人で考える場所と時間が欲しい
と伝えると
中学生になったら亡くなった祖母の家に
住むことを許可してくれた
母は週に3回ぐらい来てくれる
そんなだから
朝食はほぼ食パンになるんだよね
わかってるんだけど変えられない
朝食のあと制服に着替えて支度を済まし
外に出たのは良いけど…
まだ7月の初めなのにもう暑い
暑いのは嫌だから学校は行きたくない…
でも学校に行きたくない理由は、、
ほかにもあるんだ
機会があれば話そうと思う
通っている中学の校舎が見え始めたところで
道路の傍に自分の高校と同じ制服を着た 女子 が
立っている
自分の存在に気づいたのか
「誠ちゃーん!!」
と声をあげ元気に手を振っている
彼女は自分と同じ陸上部の 葵 美九(アオイ ミク)
同学年で小学校から友達だ
「おはよう 美九」
そう自分は素っ気なく返すと
「おはよー!」
自分とは真逆なテンションで返してくる
その笑顔が眩しく見えてしまう
美九とは小学生から陸上クラブで一緒なのだ
少ない本音を言い合える友達の一人だが
彼女のことを良く思う男子も多く
さぞクラスの男子達の間で人気なのだろう
( あれだけ明るい性格だから…
自分と見える世界が違ってるんだろうか…… )
適当に美九と話していると中央玄関に着いた
各々の教室に向かうためシューズに履き替える
美九と別れて独り教室へ向かっていると
急に背筋が凍りつくかのような感覚に陥った
なぜかって
教室の入り口に岩見と刺繍の入った体操服が
ズタボロにされてたからだ
嫌なものに立ち会うのを避けたかったので
一度廊下に出ようとすると
「おい………」
低く荒々しい声が聞こえた
振り向くと体格の良い男が立っていて
獲物を狙う虎
と言わんばかりの形相でこちらを睨んでくる
この睨んできているやつの名前は
河島 拓也 (カワシマ タクヤ)
何故か自分に何かと目を付けてくる奴なんだけど
本当に怖い………
「な、何?……」
恐怖に押されしどろもどろにそう応えると河島は
物凄い勢いでタックルしてきた
ドガァッ!!……
ガッチリとした体格に押し飛ばされ
自分は宙で一回転しそうな感覚に襲われる
廊下の壁に背中を強打し激痛が走った
流石の自分でもこの理不尽に怒りが湧き上がる
壁をつたりながら立ち上がり口を開く
「 な、なんで………… 」
しかしそれ以上の言葉は出てこなかった
教室内のほとんどの人が
自分を見てクスクス笑っているのからだ
再度独りであることを実感し悲しくなったのだ
もう皆んなもわかったろ? ………
自分は
虐められているんだ………
前髪をイジりながら河島は自分の方へと歩み寄り
自分も髪の毛を引きちぎるかのように掴み
「次目ぇ合ったら殺"してやるよ…」
そう言い残して廊下を立ち去っていく
抵抗するどころか自分はそんな彼のことを恐怖し
ただまだ立ち尽くしてにいるだけだった
そんななか
「岩見の体操服雑巾みたいだなww
俺が掃除の時使ってやるよw」
理不尽な茶番が終わり情けなくもほっとしていた
しかし次は串間(クシマ)という奴に揶揄われ
その揶揄いにまた呼応するように
クラスのみんなは自分を嗤う…………
ここまでされて何もできない自分が
本当に嫌いだ……
惨めで弱い自分が嫌だと思っても
何も変わらない
そんな事を考えてしまいとうとう涙目になると
串間が水を得た魚のように
「お、泣くか?泣くか?ww 」
顔を歪ませてチンパンジーのように煽ってくる
もう泣いてしまえと決めたその時
「いい加減にしなよっ…!!」
狂騒のなか一人の少女が席を立ちあがった
自分の側に歩んでズタボロの体操服を拾っている
その様子を見て串間が舌打ちした
(た、助かった……の??…………… )
彼女は 藤村 夏夜寧 (フジムラ カヨネ )
背は低いけど行動力があって優しい人だ
髪色は薄い茶髪に髪型は少し長めのボブである
藤村さんは自分に
「大丈夫?? 保健室に行こ?…」
寄り添いながら優しく声をかけてくれた
そして自然と自分の手を引いていく……………
ソレを尻目に串間は床を踏み鳴らし
「調子乗れるのも
今のうちだぞクソアマがァアッッ!………」
癪だったのかかなり激怒した様子で怒鳴った
自分はソレを背後で聞いただけでも飛び跳ねてしまう
それほど怖かったのだ……………
その後藤村さんは
何もなかったかのように自分の手を引き保健室へ
連れて行ってくれた
ドアをノックして保健室の中に先生は不在だった
辺りは静かになるなかお礼を言おうとすると
「じゃぁ……… 行くね 」
「ま、待ってください!…………」
自分は不器用ながらも必死に呼び止めた
それだけでも緊張してしまう自分が憎くて仕方がない
その様子に少し驚いている夏夜寧さんに
「な、なんで自分を助けてくたんですか…?
こんなことされたのは初めてで、、」
そう言いながら劣等感に襲われる
自分よりも背も低く
力もないであろう女子に助けられるまで
何もできなかった自分を思うと
惨めで無力なことを思い知り泣きそうになった
そんな自分の頭を優しくポンポンと撫でたあと
藤村さんは
「君が悲しそうな目をしてたからだよ?」
と伝えて去っていった
自分はただその小さな後ろ姿を眺めていた
未だに恐怖で震える身体に嫌悪を抱きながら………
~ ep1 完 ~
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