もう一度やりなおせるのなら

かみい

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もう一度やりなおせるのなら、ぼくは・・・

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リオンside



神の加護によって成り立っていたこの国は、神から遣わされた『神に愛された子』を失ったことで未曽有の危機を迎える。

反乱軍の旗頭コンラッドは自らが王位についたことを宣言したが、王都の王城がアンドレアを包み氷に閉ざされ、その周辺は常冬のように人が暮らせぬ極寒の地になった。
貿易に便利な港のある都市に遷都し城を構えようとするが、天候不良により港から船が出せず貿易業が廃れていった。城の建築に必要な資材も、ことごとく災害にあい調達ができない。
さらにクーデターに加わっていた多くの貴族が貿易によって財を成した新興貴族だったこともあり、船が出せず商売ができずに廃業していくものが増え、港町は職を失った浮浪者で溢れかえっていった。
豊かだった国は、見る影もなく。
天候不良による作物の不作が食糧不足を生み、貿易に頼っていた新興貴族は知識がなく代替案を出すことができずにいた。
さらに神の信仰の要であった神殿は、最初は王都を氷に閉ざした神を悪しきざまに言い今の苦しみはすべて神の仕業せいだと流布しようとしたが、それを上回る速さで聖王妃であったアンドレアへの仕打ちと最後が広まった。
聖王女の一番の後ろ盾の神殿は、上層部の者たちが金の亡者に成り下がりアンドレアを寄付金集めの人形のように扱っていた。神の言葉だとアンドレアがいくら言っても聞く耳を持たず、最後には皇太后派からの多額の賄賂によってアンドレアを孤立させた。
それらを知った民たちは、各地で暴動を起こし新王を弾劾した。
どちらつかずであった成り行きで新王についていた貴族たちは、類が及ぶのを恐れて次々と離れていった。

そして、王都が凍り付いた日からちょうど一年目。
コンラッドに王位奪還を宣言するものが現れた。

新しい王都で迎え撃つべく、クーデターで先頭にいた貴族たちは待ち構えていたがそこへ思いもよらぬことが起こった。
晴れ渡っていたというのに、いきなりの暴風雨に加えて予兆もなく津波に襲われ。高台へ避難するとそこへ土砂崩れが起きる。
コンラッドと皇太后は、行く先々で災害にあい敵を迎え撃つどころではなかった。
しかも、生活水準が新王になってから下がったことに不満をためていた多くの民が、暴徒となってそこを襲い掛かった。

ついに時は来た。

逃げ惑う混乱と皇太后ら、あの時のクーデターを企てた面々は、聖王妃の騎士たちと、新たな聖騎士の剣をもった青年に捕えられた。
赤い聖騎士の剣を掲げて完全勝利の声を上げたのは、聖王妃を最後まで慕ったリオンだった。
彼は、アンドレアの残した願いを叶えるべく、地下に潜伏して準備を整え少ない人数だが真に聖王妃を慕う人々で挙兵した。
神官たちの勧めで、聖騎士選定の儀式を行いリオンの手に聖剣が現れた。
聖剣を手に入れ、万人を倒せる力を手に入れたリオンたちの手にかかれば統制を崩し、災害と暴動によって崩れる寸前の新王の軍など子供を相手にするのと大差なく制圧した。
彼らは、アンドレアが氷の城に閉じ込められた時から、反乱軍から隠れ時を待った。準備を進め仲間を増やしてじわじわと、災害に経済的に疲弊していく新王を倒すべく時期を見ていた。
あの日アンドレアからの願いを叶えるため・・・


隠し通路を出た先は、打ち捨てられた古びた神殿。
異変を感じて神殿から外を見ると、王都が一望できる小高い丘から氷に閉ざされた城が目に映った。
その時のリオンたちの絶望は、言葉に出来ないものだった。
すぐさま通路に戻ろうとしたがそこにはもう何もなくなり、代わりにアンドレアの味方をして地方に追放、排除された神官たちが姿を現した。
『貴方たちに聖王女様、いえ、聖女王陛下からこちらを預かっています。』
神官の手からそれぞれに渡された一通の手紙。
そこには謝罪と願いと書かれていた。

『王位をリオンに、─────』

その願いの為に、生きてきた
そう言ってもいいくらいだった。

港町の新王都を制した王位を手にしたリオンと聖騎士たちは、アンドレアの眠る城へ急いだ。

人が立ち入れないほどの極寒の地と化した王都は、リオンたちが着くとそこから吹雪は止み日が差した。
それは、リオンを先頭に一歩前に足を進めるごとに氷は融けていき、まるで急げと言わんばかりに、陽光はリオンと騎士を導いた。

そしてアンドレアを最後に見た王座の間へ急ぐリオンと騎士たちは、氷が解け元の美しく豪奢な広間へと足を踏み入れた。

あの日見た通り、アンドレアは荘厳な王座に座っていた。
瞳は閉ざされて、眠っているかのような姿。
だがあの日と違うのは、王座に座るアンドレアは透き通るような氷に閉じ込められていた。
それは、まるで宝石の中にいるような、窓から入る光を反射してキラキラと輝いていた。

「・・・アン姉様、アン、ドレア、様・・・」

美しも悲しいその姿にリオンの頬には、一筋光るものが流れた。
この一年間、一通の手紙に書かれたことをやってきた。
短く書かれた中にあった謝罪とともにあった気遣い。
生まれた時から放置されて育った第三王子。
愛情をくれたのは、聖王女のアンドレアだけ。
アンドレアだけがリオンの寂しさを分かって寄り添ってくれた。
いつもほしいときにかけられる言葉。
時には厳しくもあったが、すべては愛情から来るのだとわかっていたから、慕う心はいつしか恋へと変わっていった。
恋慕っていたから、愛しい人の瞳に映るのは誰なのか痛いほどわかって弟でいようと我慢をしていた。
その我慢も、あの手紙を受け取った時にもうやめた。
アンドレアからの願いにローレンスのこともあった、それは最低限叶えよう。
だがリオンの想いはもう我慢の必要はない。
何故なら、アンドレアは聖王妃なのだから。
王となる人を選べる王妃なのだ。

つまり・・・・・・

「アン姉様、いや、アンドレア、私は王となって貴女を迎えに来ました。愛する、我が王妃・・・」

そう一段一段、あの日のアンドレアのように王座までの階段を登る。
王座の間の氷は全て融け、あとはアンドレアのいる王座のみ。
宝石のような透明な氷で眠っているアンドレア。
そう、リオンは認識していた。
だから氷が融ければきっとその閉じた瞼は開かれると、信じていた。
確証はない確信だけで愛しい人に手を伸ばす。
ここまでの道はすべてリオンの前に融けていった、この氷も神の御業ならば愛し子のアンドレアを守っていたはず・・・そしてリオンの手によって融けるはず。

そうだと、王座の下で待っている聖騎士たちも見ていた。


「目を開けて、私を見て・・・」

伸ばした指先が氷に触れた・・・・・・途端に氷は光の粒となって融けた。

















アンドレアの体ごと、光の粒に融けてなくなった。



「うぁあぁぁぁぁっ。」

荘厳な王座に残ったのは、神の花を模した聖王妃だけがつけられる閃くティアラだけが残され、王座の間には聖王妃の騎士たちの慟哭が響き渡った。









新王リオンは、反逆者たちを氷から解放された王城前広場で公開処刑とした。


クーデターを先導した、宰相と騎士団長は衆目の中10日間の拷問の上、首を落とし体と首を別々の場所に放置した。
聖王の愛妾でありながら裏切り宰相とクーデターに加わった前男爵令嬢は、絞首刑の後その体が朽ちてなくなるまで木に吊るされた。
どちらも、鳥や獣がその遺体を荒らしたが自業の末路と誰もが憎々しげに思い見向きもしなかった。
他の与した貴族たちや豪商たちも同等に処刑されたり苦役に処された。

そして、今。

王城広場には、邪神を持ち込み神を冒涜してアンドレアを虐げて死に至らしめたという罪状のもと国家反逆罪で主犯の刑が執行されようとしていた。

「─────以上の罪状をもって反逆者コンラッド、反逆者廃皇太后の処刑を行う!」

広場に設えられた台の上に、鞭打ちでボロボロの状態で立たされているコンラッドと皇太后。紺碧の髪と紺碧の瞳の持つ珍しい色をもち、異国美人な皇太后と父王に瓜二つの美しい姿をしていたコンラッドが今は見る影もない。
髪は短く切られ顔にも腕にも見えるところの肌はかさつき汚れ、鞭打ちで赤く腫れあがり血が出た後放置された状態。

「悪いのは、俺を王に選ばなかったアイツだ!神など目に見えないものの言うことなど嘘に決まっている!!!騎士たちを侍らしていただけの阿婆擦れだ!!!!!」

「わらわがなにをしたというのだ!長子継承の理を無視したあの小娘が悪いのであろう!
神の啓示などしんじてなるものかっ!」

処刑台にあげられて民主から暴言を受けても、二人には反省の様子は無かった。
神とアンドレアを冒涜する言葉を吐き続けていた。

「・・・・・・・」

聞くに耐えない侮辱を口にする二人の前に、1年で精悍な顔つきになったリオンが真っ赤な聖剣を手に処刑台へあがる。
その瞳は暗く憎しみにまみれていた。
静かな怒り。
声を掛けるのを躊躇うほどの凍てつく怒りを隠すことなく二人にぶつける。

「あぁ、おまえ、わ、私は、お前の兄だぞ?王だぞ、ギャッ」

「あわわわ、はっ母であるわらわを殺すつもりっ!」

リオンの顔には僅かの情も見えず、台に上がると二人の声に顔を向けることなく自らの手にある聖剣を振るいまずはコンラッドの首を刎ねた。
それを真横でみた皇太后は、顔色を真っ青にして震える声でそれでも強気な言葉を投げかけるがコンラッドの返り血を浴びて、自身が愛した前王に似た容姿に成長したリオンに冷たく見下げられた視線に言葉をなくした。
そして、最後まで告げることのできなかった声が最後の言葉となった。

その後、聖王妃の遺言としてリオンの戴冠式が行われた。
クーデターから苦しい生活を強いられていた、民衆は新しい聖王妃の選んだ王を喜びの声を上げて迎えた。





自らの手で母と兄を断罪処刑し王となったリオンは、崩壊した王都の復興を数年で果たし混乱した国を平定に治めた。
隣国から混乱に生じてちょっかいをかけられたが、聖騎士のテッドが団長として騎士団を立て直し程なく退けた。政務の補佐は、騎士を引退するといったウォルターが宰相としてリオンの側で補佐をした。
神殿も追放の憂き目に合っていた神官たちが中心として、腐敗した神職を更迭した。
見た目には、滞りなく元の日常が戻ってきたようだが、彼らの顔は晴れやかさはみられなかった。

彼らはただ一人の女性を今も思い、彼女の意志に従って生きてきただけ。

「アンドレア・・・・・・、僕は、今も貴女だけを愛しています」

戴冠から数年後リオンは、正妃を取るように勧められたが聖王妃が指名して王になった者の妃は聖王妃ただ一人として王の勤めとして世継ぎを作るために特例の法を敷き側室を娶った。父神と母神の夫婦神を信仰するこの国では一夫一妻制を厳守している。例外は、国王の世継ぎに関するときだけ。
側室との世継ぎを作ると、王として政務に邁進した。
しかし、娶った側室も世継ぎの子もリオンの真の心に寄り添うことはなかった。
幼少期、国の発展しか興味がない父、長子と愛した王しか興味がない母、母と王座のことしか興味がない長兄、次期王として忙しい次兄。王子として生を受け、乳母や侍従、侍女が側にいつもいるが、家族ではない義務で職として側にいるたくさんの人。
物理的に人の手はあるが、本当に欲しい寄り添う手はなかった。
あったのは、ただ一人。

『大丈夫よ、さみしくないわ。わたくしが今日からリオンのお姉様になってあげるから。』

植え込みにしゃがみ込んで隠れて泣いていたリオンを見つけたのは、ローレンスと婚約したばかりのアンドレアだった。
誰にも見つかったことのない、庭園の片隅にやってきたアンドレア。
色味こそこの国に多い薄茶色の髪を太陽の光に輝かせた美しき少女。神に愛された聖王女。
この世で稀有なる存在のアンドレアにリオンは救われた。
ローレンスとの交流の場にも混ぜてもらって仲睦まじい二人を目にして、子供の可愛い嫉妬をしたこともあったが二人が大好きだった。
アンドレアがリオンを見る瞳が家族以上の感情がないことは知っていた。
だがアンドレアがローレンスを見るときの瞳は、金茶色の瞳が蕩けるような蜂蜜色に輝いていた。
あの頃のローレンスは幼いながらも、答えていたように見えていた。
仲睦まじい二人が好きで、二人と家族としていつまでも一緒にいられると思っていた。
それが、いつしか恋になっていた。
自覚をしたのは、二人の結婚式の時。
だがアンドレアの幸せを願い、押し込めた恋心。

一人寂しく城から少しだけ見える塔を無感動に目に映す。。

「最初に選んでもらっていたのが、僕だったなら・・・」

悔しい思いを瞳に込め、僅かに見える塔を睨みつける。
手を伸ばさなくてもいつでも掴めた人。なのにアンドレアの愛情の答えようとしなかった愚か者。
聖王と聖王妃が手を取り合っていれば、あのような者たちに反乱を起こす隙など与えなかっただろうに、為政者としても一人の男としても本当に愚か者である。
神の見定めによるものなのか、他の何か選定基準があるのか・・・
今となっては、わからない。
ただ、アンドレアからの最後の手紙に『王位をリオンに、ローレンスに許しと自由を』とあった。
だから、本来は国を混乱にした力なき王として処罰される予定のローレンスを生かした。
しかし、最後の自由は与えることができない。
一度でも聖王となった彼の血筋がどうなって、今後王家の脅威になるかわからない。
最善の処置として、北の塔への生涯幽閉とさせた。
そこで、元聖王だった人は、これまでの己の行いを悔いて死するまで過ごすだろう。

静かに塔から視線を外し、王座へと上がる。

王座の隣に置かれた、荘厳さよりも優美さのある玉座は王妃の椅子。
そこには、聖王妃のティアラが静かに輝きを放っていた。








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