花喰いの安珠

プロローグ

　初めて投稿します。拙い文章ですが、どうかお付き合いください。
　

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　刈り取られた後の田んぼの間を、一人の女が歩いている。

　びゅう、と強い風に吹かれて、女は首をすくめ両手を擦り合わせた。しゃがみ込んでため息を吐けば、煙のように白い息が空気に溶けていく。

「私は…」

　しゃがんだまま空を見上げる。灰色で、今にも雪が降ってきそうだ。
　女はうつろな目でそれを見つめた。

「私は、ずっと前から、貴女を、貴女だけのことを…」

　一筋の涙が女の頬を伝う。冷たい風はそれ以上の涙を必要としていなかった。
　

　そうして降り始めた粉雪は、視界を遮るほどに、後からあとから落ちてくる。それは女の行く末さえも遮っているようだった。


。。。


「杏花！おはよう。」

声を掛けると、黒髪の少女が顔を上げて笑う。まるで天の使いのように愛らしい。
　左目の下にほくろが二つ、縦に並んでいる。だがそれは、妖艶さよりも、少女の涙のような儚さを強調していた。

「安珠！」

少女ーー杏花は、私に抱きついてきた。私の肩口に額を押し付け、ぐりぐりと擦る。

「どうしたの？嫌なことでもあったの？」

　心配になって覗き込むと…

「…おはよう、安珠。あ…あのね、安珠に、早く会いたくて…」

　何それ。上目遣いで、そんな、かわいいこと言われたら…

「…うん。私も、会いたかったよ。」

嬉しくて、喉が引きつってしまう。上手く声が出ない。ちゃんと聞こえたかな。

ああ、杏花。すき。大好き。愛してる。
貴女の隣にいるこの時が、私の幸せなんだよ。

　私は杏花の温かな身体が痛くないように気を付けながら、きゅっ、と抱きしめ返した。