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プロローグ
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あれほどに賑わいを見せていた都の市場は、水を打ったようにしんと静まり返っていた。
人々のざわめきや市場を往来する行商人の雑踏音も消え、皆が下を俯いていた。
ある者はフードをかぶり直し、母親は子供を抱き抱えてその場に蹲(うずくま)った。
一体どうしたことなのだろう。
その原因となる人物は舗装された市場の道を悠然と歩いていた。
「今日はめぼしい物は見当たらないな。残念だけど、今日はこれで帰ろうかな」
地獄の悪魔の皮を剥いで作られたと噂されるマントをたなびかせながら、若者が市場へと遠ざかっていく。
若者の姿がすっかり消えると、再び市場は活気を取り戻した。
「ふう、全く肝が冷えますね……」
商人風の男が額に浮かんだ冷や汗を拭いながら言う。
「本当だぜ。あの化物が通ると皆押し黙っちまう。人里に下りてきやがってよ。はん、化物なら化物らしくしろってんだ」
と、商人風の男の言葉に隣にいた戦士風の男が相槌を打ってみせる。
「噂じゃあいつ、生きた赤子の腸を食べるらしいわよ……」
魔術師風の女が声を潜めながら二人に呟くと、商人風の男が顔を青ざめさせ、戦士風の男がぐえっと呻いた。
「死霊術師のセイジロウ……各国の王すら奴には怯えてるって話だな……」
「幽界の法王、地獄の大司教……奴に逆らえばたちまち死神にその魂を刈り取られるとか……」
「先の戦争じゃ、あいつ一人の手でアダー大公国が滅んだって。それも一夜にしてね……
今でも滅びたアダー大公国では、蘇った死人達が領土内を彷徨っているらしいわよ……」
アダー大公国はこのレムリア大陸内で、結構最近まで栄えていた大国のことである。
所がアダー大公国は無数の死者の軍勢に攻め入られ、一夜にして滅び去ったのだった。
三人が再び怯えるように身震いし、互いの顔を見やる。
そして何か勝手に納得したような表情を浮かべ、頷きあった。
セイジロウの住まう城は、鬱蒼たる原生林に囲まれたドブレ山の頂上にあった。
そして人々はその城を地獄の根城だとか魔王の牙城だとか好き勝手に呼んでいた。
セイジロウが戻るとオーガの門番が外門を開き、主を城の中へと迎え入れる。
「お帰りなさいませ、セイジロウ様」
玄関ホールから出迎えたのは、この城のメイド長を務めるジャンヌだ。
白と黒を基調したワンピースのメイド服からは、とても豊かな胸が突き出ている。
ジャンヌはサキュバスだ。
「ただいま、ジャンヌさん。早速だけど今日は疲れたから部屋で休みたいんだけど、いいかな?」
「勿論ですとも。既にベッドの用意はできておりますので」
「それは助かるよ」
セイジロウは寝室のベッドで今日の疲れを癒した。
その寝顔は普段と変わらずとても恐ろしかったという。
そんなセイジロウはベッドの中で夢を見ていた。人も魔物も生ける者も死した者も仲良く暮らす世界を。
そこには何の争いも諍(いさか)いも存在せず、皆が穏やかな表情を浮かべている。
そうだ、これこそがユートピア、人々が思い描く理想郷。
だが、ウートポスと読めばそれはどこにも存在しない場所という意味になる。
ああ、それでも夢現の世界の中であれば、セイジロウが心の中で抱く理想郷が広がっている。
暖かなまどろみの中に抱かれ、セイジロウは眠り続けた。
ちなみにアダー大公国が滅んだ原因は、セイジロウから騙し取ったマジックアイテムを勝手に使った挙句に失敗し、
アンデッドを怒らせたからである。それは要するに自滅したというわけだ。
キャラデータ
モブその1 商人 レベル4
体力6
物理攻撃力4
物理防御力3
魔法攻撃力3
魔法防御力4
精神力5
素早さ3
運15
この世界では商人としては平均的な能力値にある。
モブその2 戦士 レベル5
体力10
物理攻撃力8
物理防御力7
魔法攻撃力2
魔法防御力5
精神力3
素早さ5
運7
この世界では戦士としては平均的な能力値にある。
モブその3 魔術師 レベル4
体力4
物理攻撃力2
物理防御力2
魔法攻撃力9
魔法防御力8
精神力7
素早さ3
運9
この世界では魔術師としては平均的な能力値にある。
セイジロウ ネクロマンサー レベル666
体力5897
物理攻撃力4908
物理防御力5480
魔法攻撃力7850
魔法防御力8132
精神力8399
素早さ5690
運2689
冥府の教皇と呼ばれる死霊術者、その力は古代の魔王や邪神と同等といっても良い。
だが、そんな彼の正体は、顔が怖いことを除けば普通の心優しき若者である。
人々のざわめきや市場を往来する行商人の雑踏音も消え、皆が下を俯いていた。
ある者はフードをかぶり直し、母親は子供を抱き抱えてその場に蹲(うずくま)った。
一体どうしたことなのだろう。
その原因となる人物は舗装された市場の道を悠然と歩いていた。
「今日はめぼしい物は見当たらないな。残念だけど、今日はこれで帰ろうかな」
地獄の悪魔の皮を剥いで作られたと噂されるマントをたなびかせながら、若者が市場へと遠ざかっていく。
若者の姿がすっかり消えると、再び市場は活気を取り戻した。
「ふう、全く肝が冷えますね……」
商人風の男が額に浮かんだ冷や汗を拭いながら言う。
「本当だぜ。あの化物が通ると皆押し黙っちまう。人里に下りてきやがってよ。はん、化物なら化物らしくしろってんだ」
と、商人風の男の言葉に隣にいた戦士風の男が相槌を打ってみせる。
「噂じゃあいつ、生きた赤子の腸を食べるらしいわよ……」
魔術師風の女が声を潜めながら二人に呟くと、商人風の男が顔を青ざめさせ、戦士風の男がぐえっと呻いた。
「死霊術師のセイジロウ……各国の王すら奴には怯えてるって話だな……」
「幽界の法王、地獄の大司教……奴に逆らえばたちまち死神にその魂を刈り取られるとか……」
「先の戦争じゃ、あいつ一人の手でアダー大公国が滅んだって。それも一夜にしてね……
今でも滅びたアダー大公国では、蘇った死人達が領土内を彷徨っているらしいわよ……」
アダー大公国はこのレムリア大陸内で、結構最近まで栄えていた大国のことである。
所がアダー大公国は無数の死者の軍勢に攻め入られ、一夜にして滅び去ったのだった。
三人が再び怯えるように身震いし、互いの顔を見やる。
そして何か勝手に納得したような表情を浮かべ、頷きあった。
セイジロウの住まう城は、鬱蒼たる原生林に囲まれたドブレ山の頂上にあった。
そして人々はその城を地獄の根城だとか魔王の牙城だとか好き勝手に呼んでいた。
セイジロウが戻るとオーガの門番が外門を開き、主を城の中へと迎え入れる。
「お帰りなさいませ、セイジロウ様」
玄関ホールから出迎えたのは、この城のメイド長を務めるジャンヌだ。
白と黒を基調したワンピースのメイド服からは、とても豊かな胸が突き出ている。
ジャンヌはサキュバスだ。
「ただいま、ジャンヌさん。早速だけど今日は疲れたから部屋で休みたいんだけど、いいかな?」
「勿論ですとも。既にベッドの用意はできておりますので」
「それは助かるよ」
セイジロウは寝室のベッドで今日の疲れを癒した。
その寝顔は普段と変わらずとても恐ろしかったという。
そんなセイジロウはベッドの中で夢を見ていた。人も魔物も生ける者も死した者も仲良く暮らす世界を。
そこには何の争いも諍(いさか)いも存在せず、皆が穏やかな表情を浮かべている。
そうだ、これこそがユートピア、人々が思い描く理想郷。
だが、ウートポスと読めばそれはどこにも存在しない場所という意味になる。
ああ、それでも夢現の世界の中であれば、セイジロウが心の中で抱く理想郷が広がっている。
暖かなまどろみの中に抱かれ、セイジロウは眠り続けた。
ちなみにアダー大公国が滅んだ原因は、セイジロウから騙し取ったマジックアイテムを勝手に使った挙句に失敗し、
アンデッドを怒らせたからである。それは要するに自滅したというわけだ。
キャラデータ
モブその1 商人 レベル4
体力6
物理攻撃力4
物理防御力3
魔法攻撃力3
魔法防御力4
精神力5
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この世界では商人としては平均的な能力値にある。
モブその2 戦士 レベル5
体力10
物理攻撃力8
物理防御力7
魔法攻撃力2
魔法防御力5
精神力3
素早さ5
運7
この世界では戦士としては平均的な能力値にある。
モブその3 魔術師 レベル4
体力4
物理攻撃力2
物理防御力2
魔法攻撃力9
魔法防御力8
精神力7
素早さ3
運9
この世界では魔術師としては平均的な能力値にある。
セイジロウ ネクロマンサー レベル666
体力5897
物理攻撃力4908
物理防御力5480
魔法攻撃力7850
魔法防御力8132
精神力8399
素早さ5690
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