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「おい、大事な物を忘れてるぞ」
指導係のワイアットから声をかけられ、マシューは振り向いた。
熊のように大きな手からハーフマスクを手渡され、彼は「すみません」と恐縮する。
「本当に現れるんでしょうか」
仮面を胸ポケットにしまいながら、マシューは問いかける。
「現れてくれんと困るな。この日のために準備をしてきたのだから」
そう言ってワイアットが拳を強く握った。
その腕に浮かび上がった太い血管だけで、とてつもない威圧感がある。
優に190はあるであろう身長に、鍛え上げられたワイアットの肉体は、新米騎士のマシューにとって憧れそのものだ。
出生地の辺鄙な田舎では自分が一番大きかったため、首都に来た時はこんなに体格が良い人が存在するのかと驚いた。
「ワシのような男が会場に居れば目立つ。せいぜい外の警備が限界だ。だからもしもの時はお前たちがしっかりするんだぞ」
肩に手を置かれ、マシューは力強く頷く。
今宵、ラウゼン伯爵領にある公共ホールで仮面舞踏会が開かれることになっている。
そしてその会場に、指名手配中のエレノア・ウィルズが、ラウゼン伯爵に会うために現れるだろうと推測されている。
そのため、皇帝の指示により結成された少数部隊が今日、このダンスホールに集まっている。
外を警備する者と参加者に扮して会場内を警備する者に分けられ、マシューは後者の陣営だった。
「今のラウゼン伯爵は魔神教団と何の関わりもないですけど、それでも会いに来る理由は何なんでしょうか?」
五代前のラウゼン伯爵夫人が魔神教団と繋がりを持ち処刑されたことは、社交界では有名な話だ。
もう何十年も前の話になるため、当然だが今の伯爵家には魔神教団と何の繋がりもない。
「どの家門にも代々残されてきた記録はある。数代前の伯爵夫人が犯した罪について最も詳細な記述が残っているのはラウゼン伯爵家だろう」
それを狙っているに違いない、とワイアットは渋い様相で言った。
「そこまでして魔神教団に関わりたいんですね……」
帝国の反逆者になってまで魔神を信仰する理由がマシューには理解できない。
だが、きっと不幸な身の上であったり、心の闇に付け込まれてしまった結果なのだろう。
「エレノア・ウィルズを捕まえて、なんとか正気に戻してやりたいですね」
マシューの言葉に、「前にも言ったが」とワイアットが強い口調で話を続けた。
「世の中にはどうしようもない悪が存在する。お前の直情的なところは長所でもあるが短所でもある」
相手を見誤るなよ。
そう言ったワイアットの瞳は獣のように鋭く、マシューは指導係の言葉を真摯に受け止め頷いた。
「もうそろそろ開場する。念入りに身だしなみをチェックしておけよ」
「はい!」
マシューは去っていく指導係の背中に敬礼し、改めて気を引き締めた。
***
始まりは、とある男からの密告だった。
エレノア・ウィルズの捜索を北西から帝国全土に広げた結果、ルメストロ王国のミラリィーを訪れた隊員が聞いた話だ。
とある男とは、ミラリィーの裏社会に生きる人間で、情報屋のような仕事も時折こなしていたらしい。
どこからかその男の噂を聞きつけた女が、魔神教団についてしつこく彼に聞いてきたそう。
ミラリィーは女神信仰に厚い都市であると同時に、それに相反する魔神についても造詣が深い。
そんな土地の情報屋であれば、魔神教団について詳しく知っていると思ったのだろう。
しかし男は魔神教団について一切情報を持ち合わせておらず、女の質問には答えられなかった。
女は消沈した様子で、最後にラウゼン伯爵家の情報だけを買っていった。
その数日後に、エレノア・ウィルズが帝国全土で指名手配され、男はピンと来た。
“数日前に魔神教団について聞いてきたあの女は、エレノア・ウィルズだったのではないか”
彼女が情報を買ったラウゼン伯爵家には、魔神教団と関わった五代前の伯爵夫人が処刑された過去がある。
女は当時の詳細を知るためにラウゼン伯爵家の情報を買った可能性が高い。
エレノアに懸かっている賞金は莫大であったため、その男は女のことを捜索隊に告発してみることにした。
最初こそ隊員たちも半信半疑だったが、その男の身辺調査をすればでっち上げの身分でないことはすぐにわかる。
さらに、その女が男に報酬として渡した宝石は、エレノアが公爵邸から持ち出した宝石とすべて一致していた。
つまり、男の前に現れたその女は、エレノア・ウィルズであった可能性が非常に高い。
魔神信仰の疑いで追われる孤独な立場の彼女が、仲間を求めて教団に接触しようとすることは自然的だ。
そして密告者によるこの話を元に、捜索隊はこう予測した。
“エレノア・ウィルズは魔神教団と繋がるための手がかりを探している”
逃走者の目的がわかれば、後の行動がずいぶん楽になる。餌を用意して待てば良いだけだ。
だが、その餌をどうやって用意するのかが議題に上がった。
どれもパッとしない案が多い中、一人の隊員が提案した内容が採用された。
「ラウゼン伯爵に協力してもらい、仮面舞踏会を開けば良いのではないでしょうか」
仮面舞踏会は、招待状が必要な格式ばった通常の舞踏会とは違い、ドレスコードさえ守ればどんな者でも参加できる舞踏会だ。
皆が身分を隠し、無礼講で団らんできる場であるため、首都にあるダンスホールでも時折開催されている。
ラウゼン伯爵は領地にあるダンスホールの経営者でもあったため、その案が最善策として採用された。
そして部隊は、『ラウゼン伯爵が伯爵領内にあるダンスホールで初めて仮面舞踏会を開く』という噂を流した。
ラウゼン伯爵家の情報を買ってまで接触を試みようとしたエレノアのことだ。
きっと姿を現すに違いない。
そうした経緯があり、マシューは今、伯爵領にあるダンスホールへ来ている。
マシューは首都で開かれた仮面舞踏会に、友人に連れられ一度だけ参加したことがある。
警護で見た舞踏会とは違って、夜遊びに興じる若者が多く、情熱的な空気が漂っていたのを思い出す。
伯爵領内のホールは首都に比べると参加者や内装の煌びやかさは劣るが、それでも参加者は多かった。
見たところ、領地内に住む裕福な平民や子爵、男爵当たりの令息と令嬢が来ているのだろう。
会場はすでに熱っぽい空気が漂っている。
気を緩めると吞まれてしまいそうだが、マシューは任務を遂行するため、話しかけて来る女性全員をきっぱり断った。
参加者に扮して会場にいる以上、ある程度遊んだ様子を見せなければ悪目立ちしてしまうが、直情径行の彼にはその考えが浮かばなかった。
続々と入場してくる参加者に目を光らせていると、突然会場がどよめく。
マシューも周囲の者たちと同じタイミングで、思わず声を漏らした。
栗色の髪にゴールドの髪飾りをつけ、黒に統一されたドレスと目元のマスクを身に着ける一人の女性。
まるで蝶が舞い降りたかのように会場に現れた彼女に、誰もが目を奪われた。
彼女は入場するや否や、様々な男から声をかけられた。
マシューもしばらく見惚れていたが、「絆されるなよ。誰がエレノア・ウィルズかわからないんだ」と同僚に耳打ちされ、我に返った。
捜索隊の者たちは、エレノア・ウィルズのある程度の背格好は情報として知っていても、実際に会ったことがある訳じゃない。
そのため、参加者の女性全員を注視しなければならないのだ。
「わかってるよ。けど……」
マシューはもう一度彼女の方を見る。
彼女は群がる男性陣に柔らかく微笑んで、適度に往なしている。
マシューの勝手なイメージだが、エレノア・ウィルズはもっと陰気に満ちた女性だと思っている。
魔神信仰なんてものに手を出してしまうほど脆い人間だから。
しかし、あの女性には一挙一動に上品さが溢れており、陰気さなど微塵も感じられない。
「あの人は違うだろ」
「そういう思い込みがミスを招くんだよ。ラウゼン伯爵に接触する女は全員見張っとけよ」
同期の言葉に、マシューは「ああ、そうだな」と頷く。
誰がエレノア・ウィルズなのか確信した時点で拘束したいところだが、他の参加者はこの舞踏会の裏で起こっていることを知らない。
むやみに騒げば混乱を招き、みすみす反逆者を逃がしてしまう恐れがある。
彼女が追われる身であることを自覚している以上、必ずラウゼン伯爵と二人きりになる時がくるはずだ。
その時に魔神教団の話題が出れば、彼女がエレノア・ウィルズであることは確定し、現行犯で捕らえることができる。
(俺が絶対に捕まえてやるぞ。エレノア・ウィルズ……!)
胸の内に宿る闘志を燃やしながら、マシューは再び参加者に目を光らせた。
***
舞踏会が始まって約一時間。
後から後から湧いてくる男性陣の相手を続けるエレノアは、すでに疲労困憊だった。
(どうしてこんなに踊りに誘って来る人が多いのかしら……?)
もしかして自分がエレノア・ウィルズだとバレていて、我先にと懸賞金を貰おうとしている輩の集まりなのだろうか。
しかしここに居るのは伯爵領内の令嬢や令息のはず。エレノアの容姿など見たこともないだろう。
単純に女性と関わりたい男性が多いんだな、とエレノアは考えることを放棄する。
せっかくだから怪しまれないためにも、あと1、2曲ほど踊っておくべきだろうか。
しかしラウゼン伯爵がいつ席を外すかわからない以上、もう控えておいた方が良さそうだ。
エレノアは未だ女性と踊っているラウゼン伯爵の方をちらりと見る。
彼の顔を見たのは前世で一度きりだったため覚えているか不安だったが、杞憂だった。
今回の催しの主催者である彼に、周囲の者たちが恭しく挨拶をしていたのだ。
いくら仮面舞踏会が無礼講だとは言っても、主催者に礼を欠くことはしないらしい。
ラウゼン伯爵から踊りに誘ってもらうことが一番理想的ではあるが、主催者の彼も忙しなくパートナーを変えて踊り続けている。
(少し休憩しながら様子を見ましょう)
小さく息をついて壁の方に向かって歩き出す。
この後エレノアは、ラウゼン伯爵と二人きりになれるタイミングを見計らい、彼に魔神教団について聞く必要がある。
そうすれば近くに控えていた部隊がエレノアを現行犯として拘束しようとするだろう。
その時に活躍するのが魔法道具であるスクロールだ。
魔法道具を使って外に逃げ、その後も狙った通りの展開へ持っていかなければならない。
一つ一つが繊細で綱渡りのような計画で、失敗は許されない。
一歩間違えれば隊員に拘束され、処刑されるだろう。
それでも、大切な人のために、エレノアはどんなことでも成し遂げようと思える。
(それに、私は今一人じゃない)
ここに来るまで、ジルが何度も助けてくれた。
ずっと一人で戦い続けていたエレノアにとって、彼が居てくれることがどれほど心の支えになったか。
力を貸してくれたジルのためにも、この計画は絶対に成功させてみせる。
そんな強い思いを抱いて足を踏み出した時、正面から来た誰かとぶつかってしまった。
「あ、申し訳ありません」
思わず身を引いて謝る。そして、自身とぶつかった人物を見てエレノアは硬直した。
「痛いわねぇ。わざとかしら」
彼女はエレノアを刺々しい口調で非難し、燃えるような赤髪をフン、と後ろに払った。
この女性が誰なのか、エレノアはよく知っている。
仮面で目元が隠れているが、見間違うはずもない。
心臓が嫌な音を立てて、早鐘を打つ。
(アマンダ……どうしてここに?)
実家にいる間ずっとエレノアを冷遇していた異母妹がそこにはいた。
思いもよらない人物との邂逅に思考が停止する。
思い出されるのは、体に刻み込まれた痛みと恐怖。そして強烈な飢餓感。
細胞に刻み込まれた恐れが頭を支配し、まるで当時の自分に戻されたかのように、声が出せなくなってしまう。
「ちょっと、何とか言ったらどうなの?」
異母妹に睨み上げられ、エレノアはハッとした。
仮面越しに互いの視線が合う。
その瞬間、アマンダの表情が訝しげなものに変わる。
「あんた……」
その先を聞くのが怖かった。
氷水を浴びたみたいに背筋が冷えて、エレノアは「失礼します」とその場を後にした。
駆け込んだレストルームで、乱れた息を整える。
エレノアは自惚れていた。
もう昔の自分とは違うから、肉親に会ったとしてもきっと昔のように振り回されることはないと。
だが違った。
幼少期から成人になるまで、十年以上虐げられ続けた記憶はそう簡単に消えない。
彼女の声を聴いただけで頭が真っ黒に塗りつぶされ、何も考えられなくなる。
睨まれただけで、その後に起こる出来事を想像して体が縮み上がる。
実家に居る時に何度も感じた、“死んでしまうかもしれない”という恐怖。
それが冷静さを奪い、呼吸の仕方を忘れさせる。
「はぁっ……はぁっ……」
エレノアはその場に崩れ落ち、何度も息を吸って吐いた。
乾燥した喉が張り付いて気持ち悪い。
(どうしよう。どうしよう。ここでこんなことをしてる場合じゃないのに)
焦りと緊張が、さらにエレノアを追い詰めていく。
ラウゼン伯爵を見失ってしまえば、全ての計画が狂う。
エレノアは自身を奮い立たせ、無理やり立ち上がった。
壁に手を突きながらゆっくり進む。
この状態なら、ラウゼン伯爵に体調が悪いと言って別室に案内してもらう手が使えるだろうか。
働かない頭でなんとか計画を軌道に戻そうと考えながら、エレノアはレストルームの扉を開ける。
「……っ!」
その瞬間、ある人物がレストルームに滑り込んで来た。
仮面を外している彼女は、エレノアを外に出させないよう立ち塞がり、勝ち誇った笑みで仁王立ちしている。
(……アマンダ)
エレノアの頭の中で考えていたことは、音を立てて崩れた。
「あんた、エレノアでしょ?」
腐っても十年以上一緒に過ごした仲だ。
エレノアがすぐにアマンダに気づいたように、彼女も数拍遅れて異母姉のことに気づいたのだろう。
それでも、違う、とエレノアは反射的に返そうとしたが、頭を押さえつけられ、無理やり仮面をはがされた。
ついさっきまで床に這いつくばっていたエレノアに抵抗する力はなかった。
「ははっ、ほら、やっぱりあんたじゃない」
髪もメイクもボロボロになったエレノアを見て、アマンダは心底愉快そうに笑う。
今の衝撃で髪飾りも床に落ちてしまった。
エレノアはもうどうしたら良いのかわからなくなって放心してしまう。
「ねぇ、帝国の指名手配犯がこんなところで何してるの?まさか男漁り?首都じゃなければできると思ったの?」
お腹を抱えて笑うアマンダに、エレノアはただ俯くしかできない。
この笑い声がずっと嫌いだった。
落とした視線の先に落ちている髪飾りを拾おうとしゃがむと、伸ばした手が踏みつけられる。
鋭い痛みに声が漏れた。
「誰の許可取って拾おうとしてんのよ」
エレノアは霞む視界でアマンダを見上げた。
「何よその顔。前はあんなに従順だったのに、もう忘れちゃったの?」
醜く歪んだ表情でアマンダが見下ろしてくる。
かと思えば、「そうだわ」と言ってにっこり笑った。
「今日あなたを誘ってた見る目のない殿方たちに、あなたの正体を教えてあげようじゃない」
その言葉に、エレノアは視界が暗くなった。
ここで正体をバラされてしまえば、本当に計画が狂ってしまう。
やめてくれと言葉にしようとしたが、冷酷に光る目と視線が合ってしまい、エレノアは防衛本能で俯く。
何度も、何度も、何度も見た瞳だ。
この目に抗う術を、エレノアは知らない。
エレノアが震えている間に、アマンダは自分の髪や服装を乱すと、エレノアの腕を引いて立ち上がらせた。
「さ、行くわよ」
痛いくらいに腕を掴まれ、レストルームを出て会場の方へ足早に歩いていく。
前を歩く異母妹の後ろ姿を見ながら、エレノアはぼんやり考えていた。
もうどうしようもできないのだろうか。
変われたと思っていた自分は、こんな風にあっけなく崩れてしまうものだったのだろうか。
こんなことで全部を無駄にしてしまうのだろうか。
──だったら、自分は一体、何のためにここまでやって来たのだろう。
その瞬間、脳裏を過るのは愛しい人の笑顔。そして、義弟と義妹の顔に、協力してくれたパートナーの顔。
かげがえのない人たちの存在が、エレノアの心を温かく包む。
“大丈夫 きっとうまくいくわ”
誰かが、自分にそう囁いてくれた気がした。
その瞬間、エレノアの胸の中で一等輝く星が咲いた。
指導係のワイアットから声をかけられ、マシューは振り向いた。
熊のように大きな手からハーフマスクを手渡され、彼は「すみません」と恐縮する。
「本当に現れるんでしょうか」
仮面を胸ポケットにしまいながら、マシューは問いかける。
「現れてくれんと困るな。この日のために準備をしてきたのだから」
そう言ってワイアットが拳を強く握った。
その腕に浮かび上がった太い血管だけで、とてつもない威圧感がある。
優に190はあるであろう身長に、鍛え上げられたワイアットの肉体は、新米騎士のマシューにとって憧れそのものだ。
出生地の辺鄙な田舎では自分が一番大きかったため、首都に来た時はこんなに体格が良い人が存在するのかと驚いた。
「ワシのような男が会場に居れば目立つ。せいぜい外の警備が限界だ。だからもしもの時はお前たちがしっかりするんだぞ」
肩に手を置かれ、マシューは力強く頷く。
今宵、ラウゼン伯爵領にある公共ホールで仮面舞踏会が開かれることになっている。
そしてその会場に、指名手配中のエレノア・ウィルズが、ラウゼン伯爵に会うために現れるだろうと推測されている。
そのため、皇帝の指示により結成された少数部隊が今日、このダンスホールに集まっている。
外を警備する者と参加者に扮して会場内を警備する者に分けられ、マシューは後者の陣営だった。
「今のラウゼン伯爵は魔神教団と何の関わりもないですけど、それでも会いに来る理由は何なんでしょうか?」
五代前のラウゼン伯爵夫人が魔神教団と繋がりを持ち処刑されたことは、社交界では有名な話だ。
もう何十年も前の話になるため、当然だが今の伯爵家には魔神教団と何の繋がりもない。
「どの家門にも代々残されてきた記録はある。数代前の伯爵夫人が犯した罪について最も詳細な記述が残っているのはラウゼン伯爵家だろう」
それを狙っているに違いない、とワイアットは渋い様相で言った。
「そこまでして魔神教団に関わりたいんですね……」
帝国の反逆者になってまで魔神を信仰する理由がマシューには理解できない。
だが、きっと不幸な身の上であったり、心の闇に付け込まれてしまった結果なのだろう。
「エレノア・ウィルズを捕まえて、なんとか正気に戻してやりたいですね」
マシューの言葉に、「前にも言ったが」とワイアットが強い口調で話を続けた。
「世の中にはどうしようもない悪が存在する。お前の直情的なところは長所でもあるが短所でもある」
相手を見誤るなよ。
そう言ったワイアットの瞳は獣のように鋭く、マシューは指導係の言葉を真摯に受け止め頷いた。
「もうそろそろ開場する。念入りに身だしなみをチェックしておけよ」
「はい!」
マシューは去っていく指導係の背中に敬礼し、改めて気を引き締めた。
***
始まりは、とある男からの密告だった。
エレノア・ウィルズの捜索を北西から帝国全土に広げた結果、ルメストロ王国のミラリィーを訪れた隊員が聞いた話だ。
とある男とは、ミラリィーの裏社会に生きる人間で、情報屋のような仕事も時折こなしていたらしい。
どこからかその男の噂を聞きつけた女が、魔神教団についてしつこく彼に聞いてきたそう。
ミラリィーは女神信仰に厚い都市であると同時に、それに相反する魔神についても造詣が深い。
そんな土地の情報屋であれば、魔神教団について詳しく知っていると思ったのだろう。
しかし男は魔神教団について一切情報を持ち合わせておらず、女の質問には答えられなかった。
女は消沈した様子で、最後にラウゼン伯爵家の情報だけを買っていった。
その数日後に、エレノア・ウィルズが帝国全土で指名手配され、男はピンと来た。
“数日前に魔神教団について聞いてきたあの女は、エレノア・ウィルズだったのではないか”
彼女が情報を買ったラウゼン伯爵家には、魔神教団と関わった五代前の伯爵夫人が処刑された過去がある。
女は当時の詳細を知るためにラウゼン伯爵家の情報を買った可能性が高い。
エレノアに懸かっている賞金は莫大であったため、その男は女のことを捜索隊に告発してみることにした。
最初こそ隊員たちも半信半疑だったが、その男の身辺調査をすればでっち上げの身分でないことはすぐにわかる。
さらに、その女が男に報酬として渡した宝石は、エレノアが公爵邸から持ち出した宝石とすべて一致していた。
つまり、男の前に現れたその女は、エレノア・ウィルズであった可能性が非常に高い。
魔神信仰の疑いで追われる孤独な立場の彼女が、仲間を求めて教団に接触しようとすることは自然的だ。
そして密告者によるこの話を元に、捜索隊はこう予測した。
“エレノア・ウィルズは魔神教団と繋がるための手がかりを探している”
逃走者の目的がわかれば、後の行動がずいぶん楽になる。餌を用意して待てば良いだけだ。
だが、その餌をどうやって用意するのかが議題に上がった。
どれもパッとしない案が多い中、一人の隊員が提案した内容が採用された。
「ラウゼン伯爵に協力してもらい、仮面舞踏会を開けば良いのではないでしょうか」
仮面舞踏会は、招待状が必要な格式ばった通常の舞踏会とは違い、ドレスコードさえ守ればどんな者でも参加できる舞踏会だ。
皆が身分を隠し、無礼講で団らんできる場であるため、首都にあるダンスホールでも時折開催されている。
ラウゼン伯爵は領地にあるダンスホールの経営者でもあったため、その案が最善策として採用された。
そして部隊は、『ラウゼン伯爵が伯爵領内にあるダンスホールで初めて仮面舞踏会を開く』という噂を流した。
ラウゼン伯爵家の情報を買ってまで接触を試みようとしたエレノアのことだ。
きっと姿を現すに違いない。
そうした経緯があり、マシューは今、伯爵領にあるダンスホールへ来ている。
マシューは首都で開かれた仮面舞踏会に、友人に連れられ一度だけ参加したことがある。
警護で見た舞踏会とは違って、夜遊びに興じる若者が多く、情熱的な空気が漂っていたのを思い出す。
伯爵領内のホールは首都に比べると参加者や内装の煌びやかさは劣るが、それでも参加者は多かった。
見たところ、領地内に住む裕福な平民や子爵、男爵当たりの令息と令嬢が来ているのだろう。
会場はすでに熱っぽい空気が漂っている。
気を緩めると吞まれてしまいそうだが、マシューは任務を遂行するため、話しかけて来る女性全員をきっぱり断った。
参加者に扮して会場にいる以上、ある程度遊んだ様子を見せなければ悪目立ちしてしまうが、直情径行の彼にはその考えが浮かばなかった。
続々と入場してくる参加者に目を光らせていると、突然会場がどよめく。
マシューも周囲の者たちと同じタイミングで、思わず声を漏らした。
栗色の髪にゴールドの髪飾りをつけ、黒に統一されたドレスと目元のマスクを身に着ける一人の女性。
まるで蝶が舞い降りたかのように会場に現れた彼女に、誰もが目を奪われた。
彼女は入場するや否や、様々な男から声をかけられた。
マシューもしばらく見惚れていたが、「絆されるなよ。誰がエレノア・ウィルズかわからないんだ」と同僚に耳打ちされ、我に返った。
捜索隊の者たちは、エレノア・ウィルズのある程度の背格好は情報として知っていても、実際に会ったことがある訳じゃない。
そのため、参加者の女性全員を注視しなければならないのだ。
「わかってるよ。けど……」
マシューはもう一度彼女の方を見る。
彼女は群がる男性陣に柔らかく微笑んで、適度に往なしている。
マシューの勝手なイメージだが、エレノア・ウィルズはもっと陰気に満ちた女性だと思っている。
魔神信仰なんてものに手を出してしまうほど脆い人間だから。
しかし、あの女性には一挙一動に上品さが溢れており、陰気さなど微塵も感じられない。
「あの人は違うだろ」
「そういう思い込みがミスを招くんだよ。ラウゼン伯爵に接触する女は全員見張っとけよ」
同期の言葉に、マシューは「ああ、そうだな」と頷く。
誰がエレノア・ウィルズなのか確信した時点で拘束したいところだが、他の参加者はこの舞踏会の裏で起こっていることを知らない。
むやみに騒げば混乱を招き、みすみす反逆者を逃がしてしまう恐れがある。
彼女が追われる身であることを自覚している以上、必ずラウゼン伯爵と二人きりになる時がくるはずだ。
その時に魔神教団の話題が出れば、彼女がエレノア・ウィルズであることは確定し、現行犯で捕らえることができる。
(俺が絶対に捕まえてやるぞ。エレノア・ウィルズ……!)
胸の内に宿る闘志を燃やしながら、マシューは再び参加者に目を光らせた。
***
舞踏会が始まって約一時間。
後から後から湧いてくる男性陣の相手を続けるエレノアは、すでに疲労困憊だった。
(どうしてこんなに踊りに誘って来る人が多いのかしら……?)
もしかして自分がエレノア・ウィルズだとバレていて、我先にと懸賞金を貰おうとしている輩の集まりなのだろうか。
しかしここに居るのは伯爵領内の令嬢や令息のはず。エレノアの容姿など見たこともないだろう。
単純に女性と関わりたい男性が多いんだな、とエレノアは考えることを放棄する。
せっかくだから怪しまれないためにも、あと1、2曲ほど踊っておくべきだろうか。
しかしラウゼン伯爵がいつ席を外すかわからない以上、もう控えておいた方が良さそうだ。
エレノアは未だ女性と踊っているラウゼン伯爵の方をちらりと見る。
彼の顔を見たのは前世で一度きりだったため覚えているか不安だったが、杞憂だった。
今回の催しの主催者である彼に、周囲の者たちが恭しく挨拶をしていたのだ。
いくら仮面舞踏会が無礼講だとは言っても、主催者に礼を欠くことはしないらしい。
ラウゼン伯爵から踊りに誘ってもらうことが一番理想的ではあるが、主催者の彼も忙しなくパートナーを変えて踊り続けている。
(少し休憩しながら様子を見ましょう)
小さく息をついて壁の方に向かって歩き出す。
この後エレノアは、ラウゼン伯爵と二人きりになれるタイミングを見計らい、彼に魔神教団について聞く必要がある。
そうすれば近くに控えていた部隊がエレノアを現行犯として拘束しようとするだろう。
その時に活躍するのが魔法道具であるスクロールだ。
魔法道具を使って外に逃げ、その後も狙った通りの展開へ持っていかなければならない。
一つ一つが繊細で綱渡りのような計画で、失敗は許されない。
一歩間違えれば隊員に拘束され、処刑されるだろう。
それでも、大切な人のために、エレノアはどんなことでも成し遂げようと思える。
(それに、私は今一人じゃない)
ここに来るまで、ジルが何度も助けてくれた。
ずっと一人で戦い続けていたエレノアにとって、彼が居てくれることがどれほど心の支えになったか。
力を貸してくれたジルのためにも、この計画は絶対に成功させてみせる。
そんな強い思いを抱いて足を踏み出した時、正面から来た誰かとぶつかってしまった。
「あ、申し訳ありません」
思わず身を引いて謝る。そして、自身とぶつかった人物を見てエレノアは硬直した。
「痛いわねぇ。わざとかしら」
彼女はエレノアを刺々しい口調で非難し、燃えるような赤髪をフン、と後ろに払った。
この女性が誰なのか、エレノアはよく知っている。
仮面で目元が隠れているが、見間違うはずもない。
心臓が嫌な音を立てて、早鐘を打つ。
(アマンダ……どうしてここに?)
実家にいる間ずっとエレノアを冷遇していた異母妹がそこにはいた。
思いもよらない人物との邂逅に思考が停止する。
思い出されるのは、体に刻み込まれた痛みと恐怖。そして強烈な飢餓感。
細胞に刻み込まれた恐れが頭を支配し、まるで当時の自分に戻されたかのように、声が出せなくなってしまう。
「ちょっと、何とか言ったらどうなの?」
異母妹に睨み上げられ、エレノアはハッとした。
仮面越しに互いの視線が合う。
その瞬間、アマンダの表情が訝しげなものに変わる。
「あんた……」
その先を聞くのが怖かった。
氷水を浴びたみたいに背筋が冷えて、エレノアは「失礼します」とその場を後にした。
駆け込んだレストルームで、乱れた息を整える。
エレノアは自惚れていた。
もう昔の自分とは違うから、肉親に会ったとしてもきっと昔のように振り回されることはないと。
だが違った。
幼少期から成人になるまで、十年以上虐げられ続けた記憶はそう簡単に消えない。
彼女の声を聴いただけで頭が真っ黒に塗りつぶされ、何も考えられなくなる。
睨まれただけで、その後に起こる出来事を想像して体が縮み上がる。
実家に居る時に何度も感じた、“死んでしまうかもしれない”という恐怖。
それが冷静さを奪い、呼吸の仕方を忘れさせる。
「はぁっ……はぁっ……」
エレノアはその場に崩れ落ち、何度も息を吸って吐いた。
乾燥した喉が張り付いて気持ち悪い。
(どうしよう。どうしよう。ここでこんなことをしてる場合じゃないのに)
焦りと緊張が、さらにエレノアを追い詰めていく。
ラウゼン伯爵を見失ってしまえば、全ての計画が狂う。
エレノアは自身を奮い立たせ、無理やり立ち上がった。
壁に手を突きながらゆっくり進む。
この状態なら、ラウゼン伯爵に体調が悪いと言って別室に案内してもらう手が使えるだろうか。
働かない頭でなんとか計画を軌道に戻そうと考えながら、エレノアはレストルームの扉を開ける。
「……っ!」
その瞬間、ある人物がレストルームに滑り込んで来た。
仮面を外している彼女は、エレノアを外に出させないよう立ち塞がり、勝ち誇った笑みで仁王立ちしている。
(……アマンダ)
エレノアの頭の中で考えていたことは、音を立てて崩れた。
「あんた、エレノアでしょ?」
腐っても十年以上一緒に過ごした仲だ。
エレノアがすぐにアマンダに気づいたように、彼女も数拍遅れて異母姉のことに気づいたのだろう。
それでも、違う、とエレノアは反射的に返そうとしたが、頭を押さえつけられ、無理やり仮面をはがされた。
ついさっきまで床に這いつくばっていたエレノアに抵抗する力はなかった。
「ははっ、ほら、やっぱりあんたじゃない」
髪もメイクもボロボロになったエレノアを見て、アマンダは心底愉快そうに笑う。
今の衝撃で髪飾りも床に落ちてしまった。
エレノアはもうどうしたら良いのかわからなくなって放心してしまう。
「ねぇ、帝国の指名手配犯がこんなところで何してるの?まさか男漁り?首都じゃなければできると思ったの?」
お腹を抱えて笑うアマンダに、エレノアはただ俯くしかできない。
この笑い声がずっと嫌いだった。
落とした視線の先に落ちている髪飾りを拾おうとしゃがむと、伸ばした手が踏みつけられる。
鋭い痛みに声が漏れた。
「誰の許可取って拾おうとしてんのよ」
エレノアは霞む視界でアマンダを見上げた。
「何よその顔。前はあんなに従順だったのに、もう忘れちゃったの?」
醜く歪んだ表情でアマンダが見下ろしてくる。
かと思えば、「そうだわ」と言ってにっこり笑った。
「今日あなたを誘ってた見る目のない殿方たちに、あなたの正体を教えてあげようじゃない」
その言葉に、エレノアは視界が暗くなった。
ここで正体をバラされてしまえば、本当に計画が狂ってしまう。
やめてくれと言葉にしようとしたが、冷酷に光る目と視線が合ってしまい、エレノアは防衛本能で俯く。
何度も、何度も、何度も見た瞳だ。
この目に抗う術を、エレノアは知らない。
エレノアが震えている間に、アマンダは自分の髪や服装を乱すと、エレノアの腕を引いて立ち上がらせた。
「さ、行くわよ」
痛いくらいに腕を掴まれ、レストルームを出て会場の方へ足早に歩いていく。
前を歩く異母妹の後ろ姿を見ながら、エレノアはぼんやり考えていた。
もうどうしようもできないのだろうか。
変われたと思っていた自分は、こんな風にあっけなく崩れてしまうものだったのだろうか。
こんなことで全部を無駄にしてしまうのだろうか。
──だったら、自分は一体、何のためにここまでやって来たのだろう。
その瞬間、脳裏を過るのは愛しい人の笑顔。そして、義弟と義妹の顔に、協力してくれたパートナーの顔。
かげがえのない人たちの存在が、エレノアの心を温かく包む。
“大丈夫 きっとうまくいくわ”
誰かが、自分にそう囁いてくれた気がした。
その瞬間、エレノアの胸の中で一等輝く星が咲いた。
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