能力を鑑定してもらったら『座敷わらし』だと言われた ~『ざまぁ』や『追放系』の主人公と同じ能力ってなんですか!?~

咲吉 美沙

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9.宿屋のお手伝い

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宿屋『緑の風』を手伝うことになって、頼まれた仕事はまずは受付だった。
仕事は、鑑定士の仕事をしている時やイブキさんが外出している間に、宿泊のお客さんが来たら手続きをする。そして、鍵を渡してお客さんを部屋へ案内する。
他には、洗濯、掃除、料理の下ごしらえ、食材や消耗品の買い出し。
洗濯は、使用済みの寝具を引っぺがして、魔法が入っている『魔法樽』、もとい『洗濯機』とやらに任せる。洗濯から乾燥までしてくれるので、終わったら部屋に戻す。
掃除は、部屋の目立つゴミを回収。あとは『掃除機』というものがしてくれる。自動で動く『魔法樽』がチリや小さなゴミを吸い取り、浄化魔法を各部屋に掛ける仕組み。
これも『魔法樽』を作ったドーメキさんが作ったそうだ。
料理の下ごしらえは、これまたドーメキさんが作った『魔法樽』に材料を載せると、食材の洗浄からカットまでをやってくれる。そして、汚れた食器も『魔法樽』に載せればキレイにしてくれる。

「これは、ある意味『魔法樽』が仕事をこなしているようなものでは……?」

数日が過ぎ、食材や消耗品の買い出しから帰る途中でつぶやく。
仕事の大半は魔法樽がしてくれるので、私が役に立っているものといえば、宿屋の受付と買い出しくらいなような気がする。

「いや、便利なのはいいことですけどね!」

冒険者の仕事に比べたら、平和そのもの。3食昼寝つきでふかふかのベッドの上で寝られる生活に慣れてしまうのがちょっと怖い。
魔法樽に作業をお任せ出来てるおかげで、冒険中に比べるとかなり労力を使わずに済んでいる。それで、ちょっと力を持て余している。
今背負っている買い込んできた食材や調味料が入ったリュックも、冒険中の荷物の重さと比べたら鳥の羽根を詰めてを運んでいるようなものだ。

「なんかこう、重めの荷物を運んでみたいな」

体が鈍らないように、トレーニングがてら何か運ぶ仕事はないだろうか。
例えば、ベッドとか、魔法樽とか……宿の模様替えをする予定はないか、イブキさんに聞いてみよう。
そんなことを思いながら、細い路地のカーブを曲がると、『緑の風』に行く道が大きな荷物によって阻まれていた。

「なにこれ」

細い路地を塞ぐ形で道の真ん中に置かれた押し車と荷物。
大きな荷物はぐるぐる巻きに梱包されていて、中身は分からない。
そして、その荷物の近くには青い顔をしたひょろ長いもじゃもじゃ頭の男の人がいた。

「も、申し訳ありませぬ!!」

私の姿を見るとそのもじゃもじゃ頭の男性は、ワタワタと両手を振り回す。

「これから納入する発明品なのですが、運ぶための押し車の車輪が破損してしまい、動かせなくなってしまった次第で! ハイ!」

ふむふむ、なるほど。そういうことですか。

「拙者が、人を呼ぶまでお待ちいただけますか!?」
「それなら私が持っていきますよ」

と押し車ごと荷物を持ち上げる。

「なっ、なっ、な……」

もじゃもじゃ頭さんは、荷物と押し車を肩に担いだ私を見て目を丸くしている。

「何とパワフルな! 大人2人でやっと持てる重さを軽々と! 小柄な身体のどこにそのような力が!?」
「私、冒険者として『荷物持ち』をしています。ドワーフの血を引いてるので、重いものも持てるんですよ」

私がそういうと、「いやぁ、興味深い」と言いながらもじゃもじゃ頭さんは、私の周りをぐるぐると観察しながら歩く。

「それで、このお荷物はどこへ運べばいいですか?」

声を掛けると、ハッと我に返ったかのような、もじゃもじゃ頭さん。

「そうでした、そうでした! その発明品を宿屋『緑の風』に運んでいけかなればならぬのです!」
「ああ、ちょうど私も……」

『緑の風』に行くところなので、と言いかけて首を捻る。
この荷物を発明品と言ったよね? この人。

「……もしかして、ドーメキさんですか?」
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