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1章
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しおりを挟む客間の扉を前に私は緊張していた。
元の世界の首席をキープするための試験でさえここまで緊張しなかったな。
《コンコン....ガチャ...
『お待たせして申し訳ありません。御足労頂きありがとうございます、皇子』
「ああ.....」
チラッと横目で見たかと思えば直ぐに前に視線を戻した皇子からは、本当はお前になど興味はないと言われているかのようだった。
『まさかおいでくださるとは思わず、感激致しました。』
「怪我などはもういいのか」
『はい、軽い脳震盪だったようで大事無いですわ。』
「そうか、何事もなくてよかった。では私はこれで失礼する。」
私が読んだ小説での皇子のイメージと全く違う。
カリナの事は疎ましく思っていても外面では他の人と変わらず柔らかく対応されていたはずなのに。
何にも期待していない刺々しい皇子の素の表情に近い気がする。
『もうお帰りになるのですか?今日は天気がいいので、うちのお庭を散歩でもしませんか?』
良好な関係を築くには会話をするのが1番早い。
お互いの事を知って、お互いにすれ違っていた部分を擦り合わせて行くことがカリナにとっては最重要だと考えていた。
その時、
「この間言ったことをもう忘れたのか?私はお前が嫌いだと言ったはずだ。見た目、言葉遣いを変えて今更、行儀よくしてご機嫌取りのつもりか?
お前のした事は絶対に許さない。
これ以上俺の中に踏み込んで来るな。」
そう言い強く睨みながら皇子は客間を出ていった。
小説の中で、ここまで嫌われて普段の皇子と真逆の顔をするような場面があっただろうか。
カリナが17歳の冬、皇子から破談を受けるシーン以外で乱暴な言葉を浴びせられることはなかったのに。
階段から落ちる前、一体何があったのだろうか、、。
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