こちら!蟻の王国です!

秋葉夕雲

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第四章

281 不発する戦線

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 後詰め決戦から数日。
 舞台は高原から樹海に移り、戦いの相手は鵺。
 謎の広範囲攻撃と、広範囲盲目デバフを使う厄介な敵。しかし今回はとっておきの秘密兵器がある。
 鵺の弱点は自分自身を守る魔法を使えないこと。硬化能力は結構高いみたいだけど、バリアは張れない。
 その反面攻撃範囲が広く、近づくのは容易じゃない。なら話は簡単だ。オレたちは鵺には近づかない。
 上空からどの魔法も届かない場所からの攻撃――――カッコウの空爆だ!
 今回に関してはケチらない。現段階での最強兵器であるダイナマイトで爆殺する。ユーカリの魔法によって無線爆弾を作り、万が一にも森林火災にならないように数日後には雨になるとの予測をたて、いざ爆撃!
 さあ結果は!?

「不発ぅ!?」
「コッコー。爆発しませんでした」
 カッコウは爆撃した。実際に爆弾は鵺に直撃した。しかし爆弾はうんともすんとも言わなかった。
 前回のラーテル戦とは違って十分に試験を重ねた後だ。ユーカリの魔法と組み合わせた爆弾は実際に爆発することを確認している。それでも爆発しなかったということは間違いなく鵺が何かをしたということ。問題はその何かがわからないということ。
 ユーカリの魔法を発動させた蟻たちに尋ねてもおかしな手順はなかったし、空爆前のチェックも抜かりはなかったはず。そうなるとやっぱり鵺の魔法がユーカリか爆弾に影響を及ぼしたとしか思えない。
「爆弾は回収できそうか?」
 不具合を調べるためには現物を調べるのが一番だ。もっとも鵺がそんなことを許してくれるかはわからないけど……。
「コッコー。可能です」
「え? できるの?」
「はい。すでに鵺は去っています」
「あー、不発だったから爆弾を脅威として認識できなかったのか」
 不幸中の幸いというかなんというか……それでも何か怪しんだりしてもおかしくないと思うけど……鵺の行動は一事が万事こんな感じでちぐはぐだ。
 恐ろしく鋭い策略を見せたかと思えば凡ミスというにはあまりにもずさんな作戦行動を行ったりする。
 こう、うまく言えないけど頭がいいくせに馬鹿というか……外付けの部品で無理矢理性能を上昇させられているような違和感を感じる。
 何よりも鵺は巣を破壊しない。普通に考えればそれはおかしい。巣を残しておけば再利用されるリスクがあるのだからせめて入り口だけでも塞げば面倒なはずなのにそれさえしない。
 おかげで人的被害はともかく物的被害はそれほど多くない。
 鵺は女王蟻に対しては攻撃的になるけれどそれ以外にはあまり関心を示さない。
 また、女王蟻が近くにいても別の遠くにいる女王蟻に向かうこともある。だからかえって行動が読みにくくはあるけど……簡単な作戦で被害を抑えることができる。
 女王蟻を囮にすればいい。
 ひどい言い方になるけど、巣や畑などの施設さえあれば再建は容易だ。もちろん替えの利かない女王蟻もいないわけじゃないけどうまい具合に若い女王蟻を鼻先につらされたニンジンみたいにぶら下げればたいてい引っかかってくれる。
 もちろんなるべく被害は抑えたいけど、高原の状況が全く予断を許さない状況であるからそうもいかない。
 あの銀髪が来た。それだけで高原の戦況はガラリと形を変えた。
 銀髪に対して有効な戦法は逃げる、あるいは誰かが引き付けて被害を少なくするしかない。もちろん銀髪を倒すためのプランはある。ただ、上手くいくかはわからないし、何よりもあいつに全力を投入できるという前提がある。せめてバッタがいなくなってからじゃないと難しい。うまいこと言いくるめればアンティ同盟も駆り出すことはできるはず。
 オレたちの総力を結集させてようやく勝ち目が見えるとかいうひどい戦力差だからな、あの銀髪。
 しかし予想に反して銀髪は全く動かなかった。
 というよりヒトモドキ自体の動きが一切ない。
 あのバーサーカーなヒトモドキがこの数日一切攻める気配どころか野営地から動くことさえない。
 てっきり銀髪はがんがん行こうぜ殺そうぜなテンションで侵略してくると思っていたから拍子抜けだ。
 純粋に戦略的に考えるならおかしくはない。攻めたくても攻められないのかもしれない。
 遊牧民はかろうじて滅亡を免れている状態だ。だから銀髪は遊牧民を守るために野営地に留まっているのかもしれない。
 が、ここで気になるのは遊牧民のクワイにおける立ち位置だ。詳しい事情はわからないけれど遊牧民はクワイで迫害……とまではいかないけれど、白い眼で見られているらしい。
 そんな奴らを必死になって守るよりも魔物を殺しまくった方がポイントは高いはずだ。
 あるいは高原における遊牧民の軍事的重要性を理解しているから守ろうとしているのか。
 そこまで頭が回るとは思いたくないけど……油断するわけにはいかない。
「というかそもそも何でこんなとこにいるんだ……?」
 結局疑問はそこに行きつく。
 心の中が読めない限りわからない疑問だ。銀髪が何を目的として、どういう理由で行動しているのかがわからない。
 スパイでもいればいいんだけどなあ。うーん。スパイかあ。
「……例の計画を実行するしかないかなあ」
 ろくでもないそれこそ冗談のような計画だけど……銀髪の居場所がわかっていて、なおかつあいつが動いていない今こそチャンスかもしれない。
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