うちの猫は液体です

秋葉夕雲

文字の大きさ
77 / 141
第二章

第16話 おばさん

しおりを挟む
 何故か葵の自宅に自転車がなかったため、路上駐車してあった自転車を拝借し、五月は道をかっとばす。歩行者や車がいないので交通ルールなどは一切気にする必要がない。
 当然ながらアポロはごく普通に走っているだけだったが、自転車の五月に全く遅れる気配がなかった。
 さすがの健脚である。
(……犬脚、なんて思いついてしまったのは心の中にしまっておきましょう)
 今日の昼にも同じようなことがあったが、ここが夢の世界であるからか、それとも気分が落ち着かないせいなのか、自転車で駆け抜ける爽快感はない。
 やがて二人が出会った公園にたどり着いた。普段なら夜中でもない限りほどよい人気があるはずなのだが、今は人どころか鳥や虫の鳴き声さえないため廃墟のような寂しさがある。
 公園の奥まで走り抜け、以前葵と戦った池まで直行する。池のほとりは誰も見当たらない。
「皆本さん! いらっしゃいますか!?」
 密かに緊張しながら叫ぶ。
 同時にアポロが遠吠えをして自分の位置を知らせる。
「でかい声出さなくても聞こえてるわよ。五月」
 ざり、と砂を咬む音と共に葵が姿を現した。
 ハーネスをつけたさつまのリードをしっかりと保持する姿を見てほっとしたことを五月は自覚した。
「ねえ、あんた今までどこにいたの?」
「あなたの家ですが……そちらは?」
「わたしもわたしんちよ。……お互いに見えてなかったってことかしら」
「そうでしょうね。ひとまずこの夢の世界から脱出する方法を探しましょうか」
「っつっても、ギフテッドかオーナーを探すべきなんでしょうけど……手がかりないのよね」
「え? 皆本さんも喉の奥の違和感の正体に気づいたんじゃないんですか?」
「ん? 何それ?」
「ワウン? もしやお互いにラプラスから情報を取得したものが違うのですワン?」
「そういうことですか。ではまず情報交換ですね」
 そしてお互いに気づいたことを話し始めた。



「なるほど。私がギフテッドを特定」
「で、わたしが神話を特定……はできてないけど絞り込むことはできた。いつもの手順ね」
「あと、夢川さんがオーナーの可能性も少し低くなりましたね」
「佳穂の家はわりと近所だしこの公園に来たことはあるはずよ。ま、正直ほっとしたわ」
 もちろんこの池に来たことがない可能性もあるのでゼロではないが、誰だって友人を疑うのは気が滅入るものである。
「そうなると……ラプラス。何か追加の情報はありますか?」
 五月は自分のスマホを取り出し、みょうちきりんな顔の自称悪魔を呼び出した。
『ああ、あるぜ。このギフテッドのオーナーは緑の会に関係している』
「緑の会……? どこかで聞いたことがあるような……」
「え!? それってあのやたら無礼で口やかましいばば、ごほん、おばさんがいるところじゃない!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...