うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第二章

第20話 一つの謎かけ

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「それじゃまずわたしが気づいたことね。さっきはざっくりとしか説明しなかったし」
「お願いします」
 無表情でなぜか正座している五月と、お座りしているアポロに対して授業でもするかのように説明を始めた。
「この夢の中では文字がないのよ。ここまでは説明したわよね」
「はい。私も言われて初めて気が付きましたが、確かにどこにも文字が見当たりません」
「で、一般的なギフテッドは文字なら読めるのよね」
「は! 基本的にオーナーと同じく現存する文字ならすべて読解可能ですワン!」
「ありがと。なら動物だから文字が読めないという可能性は削除。オーナーが文字の読めない人間の可能性もあるけどさすがに低いから除外。盲目である可能性も点字が消えてたから除外」
「そうなると、文字がない理由はギフトに関わるということでしょうか」
「そうとしか思えないわね。文字の無い、口伝の神話。口承文学ってやつよ。アフリカ、インカ、アボリジニの神話。日本だとアイヌの文芸も含まれるわね。もちろんこれでも一部よ」
「どうもマイナーな神話が多いように感じます」
「そうね。言い方は悪いけど文明が発達すれば文字が生まれるし、そもそも文字がないと現代まで残らないのよ。ま、わたしが気づいたのはこんなところね」
「では次は私ですね」
 五月がすっくと立ちあがり、入れ替わるように葵もなぜか正座した。それを真似したのかさつまもエジプト座りをした。
「おそらく皆本さんも喉の奥に違和感があったと思います」
「あー、なんかあったわね。あれがギフテッドの正体と関係あるの?」
「はい。あの感覚は生き物を目の前にすると感じる。最初はそう思っていました」
「違ったの?」
「それ自体は正しいのですが、正確には熱のあるものを前にするとつんとするようです。そしてある熱を感知する器官はワサビの辛みを感知する遺伝子と密接に関わっているという研究もあります」
 五月はこの感覚に気づいた後、葵の自宅で一つだけある白熱電灯の光を灯すと、同様に喉の奥がつんとした。
「つまり、ギフテッドは熱を遠くから感じられる生き物ってことね」
 葵はギフテッドの推測はすでに聞いていたが、この説明で納得できたようだった。五月は補足を続けた。
「離れていても熱を感知できる生き物はいくつかいます。それこそ犬でも赤ん坊のころは熱を知覚できると言われています。ですが……」
 ちらりとケージを見る。
「これはもうあのギフテッドしかありえません。温度調整用のヒーターを取り付けるためのコード穴。逃走が難しいように穴を極力あけないように配慮した造り。つまりギフテッドは」
「「蛇」」
 葵と五月が声を合わせる。
 しばしアポロの呼吸音とさつまの鳴き声だけがあった。やがてぴんぽんぴんぽんという安っぽい電子音声が響く。
「正解ってことかしら」
「ええ。これでだいぶギフトは絞れそうです。それと、ラプラス」
 スマホを取り出した五月は得体のしれない自称悪魔を呼び出した。
『ぎ、ひひひ。わあってるよ。ご褒美だろ?』
「そうよ。相手のオーナーでもギフテッドでもなんでもいいから情報を寄こしなさい」
『へいへい。それじゃあ過去の旅にご招待だ』
 葵も五月も何か反論するよりも先に視界が真っ赤になり、そして暗転した。
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