うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第二章

第37話 ある日町の中で

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 ことの経緯はこうだ。
 緑の会に査察を行い、結果として警察の捜査にまで発展したらしい。
 おそらく裁判沙汰になるだろうとのことで、特害対としては厄介ごとに巻き込まれたことになる。それはある意味で予想できたことであり、つまりこの件に関して三人は特害対に借りができている形になる。
 そのため、特害対のトップである委員長から呼び出しがかかってしまい、断ることも難しい状況になってしまった。
 特害対の本部は都心の中心からはやや外れているものの、交通の便はまずまずよく、学生三人でも不都合はなかった。
 五月いわく、公民館を買い取った(それだけでも驚きだが)らしく、さらに隣接するそこそこ大きな公園に池までついているのだから、それだけでも特害対が金回りのいい組織であることは想像できる。
 葵と五月は私服だったが、真子は学生服だった。
 さつまとククニは専用のキャリーバッグに。アポロはいつものようにしっかりと地面を踏みしめている。
 ある意味このあたりの常識の無さがオーナーとしての慣れかもしれない。
「にしても……公園まで敷地なのはどうしてなの?」
「ここに滞在しているギフテッドのためですね。運動が必要な動物もいますし」
「じゃあそこらへんにライオンがうろついてることもありえるの?」
「特害対にライオンはいませんが……似たような状況ならあり得ますね。だから間違ってもギフテッドを怒らせないようにしてください。中には躊躇なく攻撃を仕掛けてくるギフテッドもいますから」
 治安悪いわねー、と愚痴ってから、黙り込んでいる真子を振り返る。
「さっきから黙ってるけどどうしたの? 緊張してるの?」
 話しかけられた真子はびくっとしてから口をもごもごと動かす。
「そ、それもあります、け、けど……か、ふ、二人とも、び、美人……」
「……」
「……美人? わたしたちが?」
 真子の言葉の意味を掴み損ねたためか、解説するかのようにククニが口を開く。
「このお嬢さんはあなた方の美貌にたじろいでいるようですな」
「……あー、そういえばあんた美人なんだっけ」
 葵の言葉は五月に向けられたものだ。
「……皆本さん。やはりあなた私の記憶を……」
「ん、まあね。でもそれはお相子でしょ?」
「まあ、そうですね」
 真子とククニと戦っている最中に二人はお互いの過去を覗き見てしまった。あえてそのことを話題にはしていなかったが、一度話し合うべきかもしれなかった。
 いったん話題を元に戻す。
「ここまで来るときは平気だったじゃない」
「ひ、人に会うと、お、思ったら、い、意識しちゃって……あ、あたし……いろいろだめだし……」
「大げさねえ。顔の美醜なんて気にしなくていいでしょ」
「そ、そういうのって、じ、自信のある人の言葉、で、ですよ」
「そういうもん?」
「……私にもわかりかねますが……真子さんに足りないのは自信だと思います。私から見ると真子さんは可愛らしいと思いますよ」
「ははは。だそうですよお嬢さん。よかったではないですか。久しぶりにまともに会話のできる友人ができて」
 ククニのからかいに真子は顔を赤くしていた。
「ク、ククニ!」
 ばんばんとキャリーバッグを叩く。とりあえず大丈夫そうだと安心した葵は先頭に立ってもともと公民館だった場所の入り口に向かう。
「さ。そろそろ入るわよ」
 何気なく歩を進め……妙に大きな、それこそ小型トラックが通れるくらい巨大な自動ドアが開かれる。
 しかしそこには茶色い壁があった。
 否。
 それは壁ではない。
 のそりと動くそれは生き物だった。視点を上にするとぱちりと目が合ったそれは。



 巨大な熊だった。
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