うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第三章

第7話 密室

 再び家を散策してみた結果。
 窓などは開かず、破壊もできない。
 さつまがギフトを使ってみても元から存在するはずの換気扇などの隙間からも脱出できない。
 つまりこの家は完全な閉鎖環境になっていた。
「脱出は不可能みたいね。あ、トイレは使えるみたいね」
「場合によってはさつまはそこから脱出できるかもしれませんね」
「あんたさつまをトイレに流すつもり!?」
「最悪の場合の話です。あと、ラプラスに確認を取りましたがあのデッシーは嘘をついていないとのことです」
「ってことはやっぱり……」
 葵の視線の先にあるのは当然、数字の並んだ窓。全員がそこを見る。
「ちなみに、あんたたち歌に自信はある?」
「あまり……」
「な、ないです……」
「は! ありませんワン!」
「ははは。もともと蛇は鳴かない動物ですな」
「予想通りね。まあ、私も得意じゃないけど……ひとまずやってみましょう」
 少し思案した葵が選択した曲は……かなり有名なシンガーソングライターにしてはマイナーな曲名だった。
「選曲したらマイクが現れたわね。これで唄えってことかしら」
 くるくるとマイクを手で遊んでから、曲が流れる。そしてやや人を不安にさせる曲調を高いテンションで歌い上げる。
「ふう。はい、終わり。点数はっと」
 だららら、とドラムが鳴り響き、じゃじゃーんと点数が表示される。
「52点。微妙ですね」
「うるさいわよ! そこまで言うなら次あんただからね!」
 葵が投げたマイクを受け取った五月は淡々と曲名を書きこむ。
「イギリスの童謡じゃない」
 それは英語の授業で習うくらいに有名な曲だった。
 外国暮らしの経験が長い五月らしいチョイスだった。
 そうしてまた点数が現れる。
「64点。ぐ。負けた」
「ですが、私の点数の下に116点。と表示されています。おそらく点数が累積されていき、特定の点に達すると封鎖が解除されるのでしょう」
「い、いつかは出られるってことですか? で、でもこの、一番下の数字、4に減ってますよ。さ、さっきは5だったのに……」
「ふむ。0になると何かが起こるのやもしれませぬな。では、お嬢さん真打の登場ですよ」
「う、うん。うん? うん!?」
 ククニに促されると真子はとてつもなく焦り始めた。
「う、うええええ!? あ、あたし!?」
「ククニちゃん。たしかに順番的にはそうだけど無理強いはしないわよ」
 どう考えても人前で歌を歌うのに向いていない性格の真子に強制したくはなかった。が、ククニは意外なことを言い出した。
「いえいえ。お嬢さんはもともと人前で歌うことに慣れていますよ」
「そういえば……緑の会で歌を歌わされていたとか聞いたような……」
 五月が思い出したのは夢の中で真子が母親と口論していた時の記憶だった。
「あー、そういえばあったわね。うーん。じゃあ、真子。一度だけでいいから頼める?」
「う……先輩たちがそう言うなら……」
 五月から手渡されたマイクを受け取った真子は恐る恐る曲名を入力する。
 流れてきた曲はたしか一昔前に流行っていた曲だった。なんとなくだけど、本人が希望していたのではなく、母親に歌わされていた気がする。
 真子は息を大きく吸い込み……歌いだした。
 しばらくだれも口がきけなかった。
 真子は予想よりもはるかに歌が上手かった。
 伸びやかな声に抑揚がくっきりつけられた歌い方がマッチしており、聞いていてほれぼれするようで、思わず葵と五月は目を合わせて茫然としていた。
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