うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第二章

第3話 猫友

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 かなり遠慮のない言葉をぶつけられた葵は苦笑いしながらさもありなんと納得しかけた複雑な表情を五月に向けた。
「あんたねえ。かなり失礼なこと言ってるのわかってる?」
「失礼しました。ですが正直に言うと友達が多い人間には見えませんでしたので」
「……ほんとに正直ね。いやまあ、確かに友達多くないけどさ……あんたはどうなの?」
「私も少ないですね。国をまたいで移動することも多かったので、そうなるとほとんど人間関係をリセットしますし、それに慣れてしまうとほどほどの付き合いで止まってしまうことが多かったですね」
「それはそれで大変ね……ちなみにどういうところが友達多くなさそうに見えるの?」
「人より猫と遊ぶ方が楽しそうですし……一言でいうなら猫狂い?」
「……ご理解いただいて幸いね。たしかにわたしは猫、っていうかさつまが人生で一番大事。だからまあ、今から呼ぶ友達もそういうこと。いわゆる猫友ってやつよ」



 葵がどこかに通話してからおよそ三十分後。
 葵の自宅のインターホンが鳴った。
 ちなみにもっとも早く反応したのはさつまだ。インターホンが鳴るおよそ十秒前にはすっとたんすの上に退避していた。
 ちなみにさつまは来客があった場合、遠くから様子を窺うタイプだ。そこからずっと遠巻きに見守るか、近づいて反応を確かめるかは人によって違う。
「こういうのってやっぱり音とかするのかしら」
「は! 我々はヒトよりも聴覚が鋭いらしいですワン!」
「やっぱそうなんだ……ねえ、今更だけどアポロちゃんの言葉って普通の人にはどう聞こえるの?」
「動物が鳴いているようにしか聞こえないようです。ですが念のためにあまり会話しないでくださいね」
「は! しばらく静かにしておきますワン!」
 ぴんと背を伸ばしておすわりの姿勢になるアポロ。しっかりしつけのされたドーベルマンにしか見えないだろう。
 ……ぶんぶんと背後でちぎれんばかりに振っている尻尾からも歓迎の気持ちは伝わる。
 インターホンのボタンを押すと画面に友人の顔が映る。
「佳穂。鍵は開いてるから上がって」
『はーい。お邪魔するねー』
 出迎えるために玄関まで向かう。
 ちらりと後ろを向くと背後についてくる五月。その後ろにとてとてとついていくアポロ。
(……ハーメルンの笛吹?)
 なんとなくそんな感想が浮かびそうな光景だった。

 玄関に向かうと、ちょうどドアが開いたところだった。
「葵ちゃんおはよー」
「ん。おはよう、佳穂。こっちは五月」
 少し体を横にずらして後ろにいる五月をよく見えるようにする。
「初めまして。平川五月です」
「これはこれはえーと、ご丁寧に? あたしは夢川佳穂だよー」
 紙袋を提げながらぺこりと頭を下げる。
 夢川は印象としてふわりとした印象を持つ少女だった。
 ショートボブの髪を大き目のヘアピンで留めており、話し方ものんびりしていた。ふっくらとした体も彼女なりの愛嬌がある。
「それと、こちらが……飼い犬のアポロです」
 はっはっはっは、と呼吸しながらアポロがひょっこり顔を出す。
「おおー。ドーベルマンだあ。撫でてもいい?」
「どうぞ。別に私に言わなくても構いませんよ」
「いやいや、そんなわけにはいかないよう。咬む子だったりしたらいけないもん。あ、葵ちゃん。これ、お母さんから」
 紙袋を受け取ると、中身は米菓だった。
「ありがとう。でもわざわざいいのに」
「んー、後で必要になるかと思って……うわあ、本当に大人しいねえ」
 佳穂はわしゃわしゃとアポロを撫でながら返事した。
「佳穂は両親がペット好きでいろいろ飼ってるのよ。たしか犬と猫と、ハムスターだっけ」
「犬三匹。猫一匹。ハムスター二匹。熱帯魚五匹。あと最近亀も飼い始めたよー」
「それはまた……大所帯ですね」
 五月も佳穂を呼んだ理由が納得できた。ペット、それもげっ歯類を複数飼っている人なら良い知見をくれると思ったのだろう。
「だよねー。でも楽しいよー。あ、さつまちゃんだあ。久しぶりー」
 遠くでじっと動かずこちらを見つめるさつまにも挨拶する。返事なのかそれともたまたまなのかわからないが、さつまは麦穂のようなしっぽをぱたりとはためかせた。
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