アグーと呼ばれた悪役令嬢は、不本意ですが設定崩壊したのでハッピーエンドを迎えます

犬野きらり

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18ゴリラ令嬢脱却計画 王都3

「おい、お前、デブ誰だっけ?ブッハハハハ」
急に知らない男の子が真正面に立った。
もうこの時点でかなりダメージは食らっていたし、イライラしていた。

身体が昔みたいに重く感じる。顔を見るのも相手にするのも嫌だった。

「おい、デブ、無視するな!」
と私の二の腕を掴んだ。
「おい、こいつ握れないぐらい肉あるよ、酷いなぁ、デブ」
とその男の子が言えば、どこからか三人の令息が出てきた。隠れて見ていたんだ。
お腹を抱えて笑っている。

早く帰りたい…

悪意が痛い、視線も耳に残る音もイライラする。

握られた腕が、ギュッと力が入った。
「痛い」
と言えば、
「痛いわけあるか、肉に阻まれて神経までいかないだろう?嘘つくな」
と言った。

私の手の中で空気がパンっと爆ぜた。
弱った私を小突くみたいに。

あぁ、一息つけた。

本当に痛いし、ここまで何でやられなきゃいけないわけ?

「離しなさい、痛いと言っているでしょう。あなたは自分の名前も名乗らず、相手を聞くわけ?」
と怒りが湧き上がる。

「あん?生意気なデブだなぁ、アントレ・ディオン、この国の宰相の息子だ。なんだその目は!」

「私は、プラント公爵家長女、リサーナよ。手を離しなさい!」
「デブのくせに命令するな」
と私を押そうとした。

信じられない、もう限界だ。
意地悪、ウジウジ、イライラ、嘲笑い、揶揄い、ずっしり重くのしかかる嫌な感情。

それらを込めたものが、手から溢れ出るかのように爆発した、と思う。アントレに押されて、手のひらからは確かに大きく空気みたいな何かが爆ぜた。

その証拠に私は、二、三歩、足が動いてふらついたけど、馬鹿令息は、ちゃんと突き飛ばされてくれた。

「何するんだ、このデブ!」
と馬鹿令息は言った。
何が起きたか分からなかった。
辺りに煙が上がっただけ。

でも私の中ですっきりした。
まるでいつものように。

「誰か、誰か来てください~」
と声を張った。
すぐに王宮メイドが駆け寄った。見ていたのかもしれない。
声を上げるまで見ないふりなんて信じられないわ。

状況は、叫ぶ令嬢と倒れている令息だが、
「この者が私の二の腕を掴み、デブデブと言い、私を押そうとして反対にすっ飛ばされたんですわ。すぐにプラント公爵、父をお呼びください」
と言った。

メイドが間を取り直そうとしたが、お前は信じられない!
私は、絶対に一歩も引かない。
「父を呼びなさい」

これは、こいつらに嫌われようが、どうでもいい。こんな状態、状況に負けることが腹立だしかった。

人が集まってきて、まずアントレのまわりにいた令息が逃げた。アントレ・ディオンの顔が真っ青になった。

「やっと自分が何をしたか思い知ったか!デブは認めるが、お前より私は身分が上だ!お前は宰相でもないただの子供」
と言いきれば、ギッと睨みつけてきた。私も睨み返す。

そして私達は、応接室に連れて行かれた。
少し待っていれば、父様が慌てて来た。そこで説明をした。難しそうな顔をした。

たかが子供の喧嘩扱いだ。
これじゃ駄目だ。
こんなの何度でも繰り返される。

最終手段、
「あのアントレが二の腕を掴んだところが今も痛いんです、メイドにも確認していただきたいです。怪我させられていますわ」
と言えば、別室でドレスを脱いだ。メイドに腕を見せれば、しっかり赤く手の指の跡が残っていた。
「ほらやっぱり痛いですもの」
と言い、医師に見せることになり、事が大きくなった。
でも関係ない、しっかりあの馬鹿には謝らせる。

包帯を巻いて再登場の私、リサーナ。
馬鹿令息とその親が立っている。ソファには父様と王妃様がいた。

「このティーパーティーでこんな粗暴なことが起きるとは、私の配慮が足りなかったですわ、ごめんなさいね」
とまず王妃様から謝罪があり、父様は、いやいや、なんて言っている。

「すみませんでした」
と馬鹿令息が言った。
「この愚息が迷惑をかけて、大変申し訳なかった。後ほどお見舞いの品は送らせてもらうよ」

この態度は、なんだ?反省なんてしていないじゃないか。
まさかこれで終わり!?
これを許せばこの馬鹿どもはまた集団で私の前に現れる…
ここは、折れたら負けだ。

「痛いと言っても腕を握り、痣までつけてデブと罵り、それがディオン家の教育なんですか?醜い者は生きている価値がないから何をしてもいいと言っているんですか?」
と聞いた。
父様に、リサーナと止められたが、引かないとさっき決めている。父様は空気読みすぎなのよ、娘がやられているのだから、ガツーンと宰相ごとき怒鳴りなさいよ。
あんなにウジウジしたさっきまでの私は嫌いだ。好きな菓子もこいつらみたいな悪意に負けて取りに行けなかった。

私の菓子が揶揄いや嘲笑う声に負けたんだ。
こんな悔しいことはない。


「教育不足は感じているよ、アントレ謝りなさい」
と宰相は言った。
「親に促されなければ、自分が悪い事も認められず、弱い者を虐める精神、許せません」
と言えば、真っ赤な顔をしたアントレが、
「ハア!なんだその態度お前の方こそ教育不足だろう」
と言った。

フゥ~、深い溜息をついた。

「貴族院に今回の被害届と不敬罪を申請します。10歳から申し立てが出来ますよね、戦いましょう、アントレ・ディオンさん」
と言い、この部屋の空気は、一気に重くなった。

カリツォーネ先生から聞いていた、10歳から審議申し立て出来る事を、調べられて困ることなんて私にはない。

「リサーナ、やめなさい。アントレ君はまだ10歳だ、貴族の籍を抜くかもしれないようなことになる、リサーナだって婚約者が出来ないかもしれない。事を大きくすれば知らなかったで済まされない事情がでてくる」
父様が慌てた。

しかし私は構わない。

「知らなかったから公爵令嬢に傷を負わせていいわけではありませんよね?それに、この方、私が初めて何ですかね?イジメ」
と聞けば、すぐに顔の表情が変わった。真っ青になった。いつもやっていたんだろう。周りの取り巻きと一緒に見せ物だったんだ。

その様子を見てやっと宰相も今まで何人も同じことをやっていることに気づいたようだ。調べられて困るのは、ディオン家。慌て、宰相は、アントレの立っていた足を蹴り、床に這い蹲らせ頭を押さえた。
「謝れ」
と低く声を出した。
「もうしわけありませんでした」
と身体から震えがきているようで声も震えていた。

今頃…か

すると王妃様が、
「リサーナ様、今回は私の顔を立てて引いてくださいませんか?今後何かあれば、私の名前を使ってくださっていいわ」
と言った。
これは凄い譲歩案だけど、王妃様は書面もない口約束だ。
最近よく使用人達に口約束で惑わされ騙されている私…
都合良く子供の喧嘩で処理されるって事だ。

「王妃様にそこまで言われたら引くしかありませんわね。ただ口約束ですから、この和解な印に王妃様の印をいただきたいです。お守りがわりです。また同じ事が起きた時、わからせるためにも。もちろん何もないに越したことはありませんので、本当にお守りですわ」
と言えば、驚きと引き攣る表情を見せ
「では、この扇子を渡すわ」
と下手な笑顔でドレスに挟んだ扇子を差し出された。

嫌々か、やっぱり宰相の息子を庇う口約束のつもりだったか。

「ありがとうございます」
確かに頂戴した。
なら、ここで失礼しよう。

まず王妃様が退出し、父様と私が退出した。
「リサーナ、やりすぎだろう」
と言われた。

「傷をつけられ、それを許したら学園でこれから6年も彼は私をいじめても傷つけても許されると思うのではないですか?公爵家とか聞いても怯んでなかったですし。彼は、単独ではなく集団で揶揄い嘲笑うのです。潰されるか潰すかの戦いだったと私は思います」
と言えば、
「戦いってリサーナ、君は、…
いや、娘を守るのは、家族として当たり前だ。わかった私もきちんとディオン家には、抗議する」
と言ってくれた。優しい父様の顔が凛々しくかっこよかった。

そのあと、帰りの馬車で
「でもリサーナ、令嬢としてマイナスになったことだけは理解して欲しい。これがこの場だけの話になることはない筈だ」
そんな言葉を残した。



王宮、一室

「なんて生意気な公爵令嬢なの。ブラッシュあの令嬢は、醜く太っているだけでなく性格も傲慢、とにかく図々しいなんて最悪ね。学園でも関わってはいけませんよ」
と応接室の一幕を王子達に説明した後、思いついたと手を叩いてから、
「そうだ、フリップ、あなた王族としてフォローしに行きなさい。きっとアントレがもう一度謝罪をしに行くでしょうから、宰相には恩を売りましょう」
と提案していた。
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