アグーと呼ばれた悪役令嬢は、不本意ですが設定崩壊したのでハッピーエンドを迎えます

犬野きらり

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19ゴリラ令嬢脱却計画 王都4

家に着き、母様に詳細を説明(言い訳)した。

「よくやりました」
と言ってもらえた。

そうよね!訓練増やされるのではと、内心ビクビクしていたのは内緒。

あれを許したら、舐められて公爵令嬢の威厳なんてなかったと、でもこれが噂になり婚約者が中々見つからないだろうことも両親の溜息を増量させた。

噂話というよりこういったトラブルは、令嬢の気品や気質を見られて悪く言われるらしい。


そして朝はドリーの起床の声から始まり、ランニングをする。
ただいつもと違うのは…

「ペースを上げてお嬢様!太っていなきゃ言われずに済んだんです。相手に付け入る隙を与えない、これからは完璧令嬢を目指すことになりました。これは、プラント家に関わる者全員が、協力体制の下実践されます」
とドリーが宣言し、御者が私にロープを巻きつけ先頭を走り引っ張るような形になっている今の状況を見て言っているの?

「ペース、早いって」
とゼーハァー言いながら訴えても聞かない、ランニングというより拷問だ。

「お嬢様、ウッホ、ウッホ、言ってません!ゴリラ令嬢脱却も近いと思います」

違うわ!!
早すぎて、息が、タイミングが、余裕もないからだ。

もう、声にならない、というより今どのタイミングで息してる?
死ぬ~

死んでしまう~

これが昨日私がアントレに対し我慢せずにやり返した結果だというのか!?
ウジウジ泣き寝入りした方が良かったのか。

なぜこうなった?

「お嬢様に任せておきますと、ご自分で加減をし成長を止めてしまうこと常に感じていました。だからこそ、これがランニングだと身体に覚えこませ歩き、散歩とは違うことを知ってください、そこから始めましょう」

どこのトレーナーですか?
あなたメイドのドリーさんですよ?チェンジでお願いしますこんな早いペース、心臓が止まるか爆発して死ぬ!

さすがに御者が哀れに思ったのか、彼も疲れたのか、4周目の途中で倒れこんだ。

終わった。
膝がカクカクするよりも倒れた。
限界ですよ、私は!

「はい、お嬢様、次は腹筋背筋です。歩きは最後にしましょう。打倒ディオン侯爵家です!さぁ次は、タスキがけです」
とゼーハァーと死ぬ手前までいっている私をメイド二人で支えロープを両脇に通し背中にバッテンを作りまた両脇から長いロープが垂らされて、今度は庭師の人が、ドリーの掛け声と共に引っ張る。
「痛い~」
これは擦れるような痛さがある。
「無理~」
と言っても聞かないドリーを睨みつける。
「お嬢様二ヶ月立って35回は少なすぎるんです、当初予定100回ですよ、せめて50回を達成しなければ!」

「ふざけないで、ドリー!無理なものは無理よ!痛いって言っているでしょう!急には出来ない、あなたがやりなさいよ!」
とキレた。

辺りは静まり返った。これは本気で怒っている。だって無理なものは無理なんだもの。出来ない人に急にレベルの高い運動を強要しないでほしい。

私は怒って自部屋に帰った。

この乗馬服を脱げば、脇と横腹にロープの擦れた跡があった。
それをドリーに見せた。
「これよ!痛いって言ったじゃない」
と言えばドリーが震えて、
「申し訳ございませんでした、お嬢様。私、とんでもないことをしてしまいました…お嬢様に傷をつけるつもりなんてなかったんです」

そうかもしれないけど、最近のドリーは、メイドの領域を越えていた。昨日も散々デブと言われ、鏡に映る太った姿は醜いけど、せっかく健康になったんだから、毎日を楽しく過ごしたいと思っている。
学園で昨日みたいな悪口や揶揄いがあるのも集団であんな風にされるのも怖かった、だから痩せようとは思っている。公爵令嬢として舐められてはいけないとも昨日のアントレとの応対で感じた…

わかってはいる。
でも無理は違う。
違ってあって欲しい。こんなの全然楽しくないもの…
イライラとかモヤモヤもするけど、明らかにこれは違う。

「お母様には報告させてもらいます。執事長とドリーは話し合って。私は、あなたと距離を置きたいわ」
と言った。
ドリーも私の本気がわかったようで、ずっと土下座をしながら詫びていた。

この朝の出来事があってから、使用人が一人として私と目線を合わせない…
「私が悪いっていうの?」

イライラはいつものように手のひらからポンポンと空気が出るように爆ぜた気がする。身体を抱えながら考えていたのだけど痛みがひいて、スッキリしてきた。

そう、これもとても不思議だと思っていたんだよなと朝食に行く時間だけど、もう一度簡易なワンピースを裾から捲り、横腹を見る。

ロープの擦れた赤さが汗を流した時はあった、でも今は無い。
「痛いと思ったのは、私が大袈裟だったのかしら?確かに血が出たわけではなかった。すぐ治る程度の痛さであんなに私ドリーを怒ってしまったってこと!?」

なんであんなに痛かったのにこんな短時間で治るような赤みの痣。どう説明していいかわからなくなっていた。

でも今は、お母様に説明するべきなのは、無理は嫌だということだ。

朝食は、両親がいなかった。最近めっきり三人で食事をしないことに寂しさもある。
そんな時いつもドリーはプラント公爵家幸せ計画の話をしてくれていた。
「ドリー…」

でも私は悪くない。
だって今朝のトレーニングは完全に私の出来る容量を超えていたし、本当にあの時は痛かった。

「だから私は悪くない」

でも今身体が痛くないがために、何故か私が大袈裟だったのではないかという疑念が生まれてしまった。

「言いすぎてしまったのだろうか?」

朝食を食べ終われば、カリツォーネ先生の用意してくれた教本に合わせた宿題をやる。
とても一週間で終わりそうもない量の紙に途方に暮れながらも、先生自身の手書きの宿題に私の事を考えて作成してくれていることがわかるので、
「頑張ろう」

丁度いい感じの時にいつもドリーがお茶を持ってきてくれるのに、今日は…

「私は悪くない、調子に乗ったドリーが悪いんだから」

休憩もなしにひたすら教本を読み、先生の宿題を解いていく。

メイドがお昼ご飯は、お母様とサロンで食べる予定になったと告げにきた。

「お母様、私話したいことがあります」
と言えば、

執事長が頭を深く下げた。
「お嬢様お許しください、使用人一同お嬢様に怪我をさせるつもりなんてなかったのです。でもそれは言い訳です。お嬢様が『痛い』、『無理』という言葉を発していたのにも関わらず、自分の思いだけで突っ走ったドリーやその場にいた使用人は許されるわけではありませんが、責任者として私も謝罪させてください」
と神妙に言葉を選びながら、話した。

それを聞いてお母様は、
「私も直接ドリーから話は聞いたわ。使用人として最低な行動をしたと思うわ。主人に怪我をさせたんだからね」

そうよね、私は、悪くないわ。
…でも、どうしよう、もう治っているって言えない。

母様の話は続き、
「リサーナが最初の一ヶ月信じられないくらい痩せたでしょう、とってもみんな喜んでいたの。だけどその次の一ヶ月痩せてはいるものの、ドリー達使用人は目にみえる効果が無くなって心配になってきてしまったの。このままでは学園に行く日までに間に合わないって。一度目に見えた効果が成功体験のような勘違いを生み出して倍のメニューをこなせばまた凄い痩せる、そうすれば誰もリサーナを馬鹿にされないと、特に昨日のティーパーティーでの出来事をリサーナから聞いてドリーは間違った方向に奮起してしまったのね。リサーナ、ドリーは怪我を負わせてしまった責任を取って今日限りでこの屋敷を出てメイドの仕事を辞めるって言っているわ、どうする?」

私に答えを託した母様。

憎いなら、ドリーはそのまま辞めてもらえばいい、私付きじゃなくなったとしても何処かで会えば気まずいのだからと付け加えられた。

憎くはない。
調子に乗っているとは思ったけど。

「お母様、ドリーはメイドとして優秀です。ただ今後もう少し私の声も聞くようにしてもらいたい…
やっぱり最初からドリーとは、苦楽を知った仲というか一緒にやってきた仲だから、一緒じゃないなんて寂しい」
と言えば、お母様は笑って私を抱きしめた。


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