43 / 46
43フランツ王子の独白
しおりを挟む
カイルは朝方、ドミルトン伯爵領に旅立った。
夏休みの初日、正式にルイーゼ・ドミルトンとの婚約破棄の書類が揃った。これで、晴れてカイルは、アーシャに婚約申込みができる。
私は、伝書鳩の小屋に行き、
『おめでとう』
と書いた紙を鳩の足につけようとしてやめた。
アーシャ嬢には感謝しかない。
冷静に状況や情勢を見てくれる。カイルだけでなく、私も学友だと言ってくれた。
一番駄目だった時、救いあげてくれた。
ピンチの時には颯爽と現れ、消える英雄そのものだ。自分は、表に出ずにいつも日陰にいるような令嬢。
そしてすぐに手を伸ばしてしまいそうになる令嬢。
鳩小屋の鍵を開けぱなしにした。もういいだろう、自由な空を飛んでも。行ったり来たり、君が繋いでくれた道は、とても楽しかったんだ。
だからいつもありがとうしか言えない。
なのに、鳩は飛んでいかない。何故か私と重なるこの鳩を見て、ゆっくり小屋を閉じた。
朝食を食べた後、王妃から、
「本当に良かったのですか?カイルに譲ってしまって、あなたも好きだったのではありませんか?ルイーゼからアーシャに婚約者を変えることだって出来たのですよ。ドミルトン公爵家の責任なんですから」
と言われた。
「いえ、全てアーシャの策のおかげ、これ以上友人の足枷になりたくないのです」
婚約破棄だって、アーシャの案に乗ったから出来たんだ。ルイーゼ嬢が扇子を投げるタイミングに前に出る。私の評判を下げず、ドミルトン家に責任を取らせる方法。王妃から聞いた時驚いた。
「それでは公爵家ばかりが傷がつく」
と書けば、アーシャは、
「ルイーゼ様は、だいぶ評価評判を掘り下げてくれているので、このぐらいは当たり前になった落とし穴です。大丈夫。まだ浅い方だと、それにドミルトン家も早めにルイーゼ様を隠した方が良い」
と書いた紙。何枚も何回もやりとりをした記録は、私の鍵つきの引き出しに入っている。
「これも処分しなければいけないな」
アーシャの描く絵が好きだった。
楽しかった。
見ているだけで温かくなった。
鍵に手をかけて、鍵を差し込めなかった。これは裏切りか?
今日は、出来なかったと誰か笑ってくれないだろうか?
「いかがしましたか?」
とフェルナンドが様子を見に来た。
「いや、何でもないよ。今日は視察に行くんだったな」
「はい」
民の暮らしに笑顔があることの大切さを伯爵領の収穫祭で学んだ。
「何だ、畑の片隅で人集りが出来ているぞ」
と言えば、フェルナンドが
「手押し相撲か腕相撲でしょう。もうすぐお昼ごはんですので、賭けているのでは?騎士団でも腕相撲で、酒一杯は当たり前なんですよ」
と笑って言った。
誰もアーシャが考えたと知らない。勝手にドミルトン伯爵領の収穫祭で盛り上がった競技をあちらこちらで広がった。
「本当に欲がないんだよな」
「はい?」
「いや、何でもない」
いつも思う。たとえ自分の考えや意思だとしても誰かに伝え、誰かに頼り、一歩引いたところでいつも見ている。言ったら言いぱなしで最後はいない。
「だから、君をみんな知らない」
視察から戻ると、エリオンが待っていた。今日から、領地経営を勉強するのではなかったか?
「どうした、エリオン?」
「いえいえ、フランツ王子、今日は、何かゲームでもしませんか?それとも剣術の稽古でもしませんか?こんな時に頼ってくださらないなんて、一番幼き日からの学友として傷つきますよ!」
と少し怒った表情をした。
フゥー、
「せっかくなら、身体を動かしたいな。今日は、馬車に揺られて身体が固まっている。剣術の稽古長くなりそうだが、大丈夫か?」
「そうですね。年月の垢が溜まっておられましょう。全て汗と一緒に流し落としましょう。最後まで学友としてお付き合いさせて下さい」
「そうか…
頼もしいな、エリオン!」
私には、学友がいる。弟がいる。カイルが私を支えてくれた、寄り添ってくれた、カイルが私の本当の気持ちを汲んでくれて、優しく側にいたからこそ、私は笑えるようになった。
学園生活も悪くないじゃないか。アーシャが考えた挨拶運動、面倒くさいが私を守ってくれる鎧になった。第一王子として足固めになった。強力な家柄に後ろについてもらわずとも、自分の足で立てる。
かの令嬢がいなくたって…
私は大丈夫。
私は、大丈夫。
執務に追われる毎日だ。学ぶこと、外交、考えることが多すぎて、暇がないくらいだ。
ある日、ストック国から手紙が届いた。ルイーゼ・ドミルトン。
彼女は、傲慢で高圧的だった。
キツい顔立ちだったのが印象的だ。
私に対しての詫び状から始まった。婚約破棄の件の了承、そして私と過ごせた婚約候補者から婚約に至るまでの期間、自分が、他者を貶める行動をしてきたことや自分の言動の恥ずかしさなどが綴られていた。
最後にありがとうございますと書いてあった。
思えば、ルイーゼ嬢は、いつも真っ青なドレスを着ていた。そして真っ直ぐに私を見ていた。
ルイーゼ嬢は、知っていたんじゃないか?私の気持ちがここにない事を。
それを誰かに当たるのは違うが、もっとも酷い事をしたのは、自分ではないか?
この手紙を読んで初めて気がついた。ルイーゼ嬢をまともに見たことが無かったこと。相談も自分の心を見せたこともなかった。
アーシャには見せても。
顔は分かるのに、寄り添うこともしなかったんだ。ルイーゼ嬢は、手紙には、私への誹謗中傷などなく、私との思い出もなく、この数年をどんな気持ちで過ごしていたのだろう。
ハアー。
自分が今こういう状態になって見えてくる愚かさ。言葉にすれば自分勝手すぎた。
そう言えば、アーシャにも一度自分の気持ちを当ててしまった。気づいたかは別として。
婚約者が決まった。ルイーゼ・ドミルトン
そんな手紙を伝書鳩に乗せる必要はなかった。どうせわかることなのに。あの時、感情を抑えられなかった。あれは、私なりの悔しさだった。本当に恥ずかしい事をした。
「あれじゃ心配してくれって言っているだけだな」
カイルから手紙が届いたのも、少ししてからだ。相談なしの発表に驚いただろうし、アーシャとカイルの婚約も夢になったのだから。
今までカイルは考えないようにしていたのだろう。こんな急に色々動き、自分の思いとは違く進むことに、驚いたのだろうし、流されてしまったことを後悔したんだろう。
カイルは、その後、積極的に国王とやり取りをしているようだった。留学生として学園に来るのもそうだ。今まで、自分の意見を言わなかった。でもそれでは駄目だと気づいたから、情勢を見始めたのだな。まさかお祖父様ではなく国王を頼るところが、カイルの無邪気というか、信じやすいというか。もし国王が側妃に話したら、また命を狙われたかもしれないのに。
今回の婚約申込みの速さは、準備していたのではと思うほどだった。
一度だけ私に確認しにきたが、言葉とは違ってカイル自身、譲らない決意が見えた。弟だが、同じ歳。
あいつの生き方の方がいいなと思った。
思ってしまった。
ある日、学園の理事長が執務室に入ってきた。
「私は、君達の叔父にあたるレイリー・ガレットです。ずっと君には無理をさせていたね。王弟として、近々発表される。君の執務も一部私に動く予定だから」
なんとなく、子供の頃会ったことがあると思っていた。確か、数回一緒に食事をしたことがあるレイリー姫…
お祖父様も国王も何かを守るために犠牲にしている何かがある。それを無情と言うのか。
私にその覚悟があるのだろうか。
カイルとアーシャの事を思い、そしてまだ飲みこめないでいる私に、叔父は、背中を擦り、その温かさに涙が流れた。
「大丈夫だよ。ゆっくりでいい。君は、若いのだから」
と優しく言った。
この思いを言葉にする事は出来ない。そして許されない。
だから私の愛する二人が一番幸せになるんだと言葉を飲み込んだ。
夏休みが終わっても、私はまだ引き出しの鍵を開けれなかった。
夏休みの初日、正式にルイーゼ・ドミルトンとの婚約破棄の書類が揃った。これで、晴れてカイルは、アーシャに婚約申込みができる。
私は、伝書鳩の小屋に行き、
『おめでとう』
と書いた紙を鳩の足につけようとしてやめた。
アーシャ嬢には感謝しかない。
冷静に状況や情勢を見てくれる。カイルだけでなく、私も学友だと言ってくれた。
一番駄目だった時、救いあげてくれた。
ピンチの時には颯爽と現れ、消える英雄そのものだ。自分は、表に出ずにいつも日陰にいるような令嬢。
そしてすぐに手を伸ばしてしまいそうになる令嬢。
鳩小屋の鍵を開けぱなしにした。もういいだろう、自由な空を飛んでも。行ったり来たり、君が繋いでくれた道は、とても楽しかったんだ。
だからいつもありがとうしか言えない。
なのに、鳩は飛んでいかない。何故か私と重なるこの鳩を見て、ゆっくり小屋を閉じた。
朝食を食べた後、王妃から、
「本当に良かったのですか?カイルに譲ってしまって、あなたも好きだったのではありませんか?ルイーゼからアーシャに婚約者を変えることだって出来たのですよ。ドミルトン公爵家の責任なんですから」
と言われた。
「いえ、全てアーシャの策のおかげ、これ以上友人の足枷になりたくないのです」
婚約破棄だって、アーシャの案に乗ったから出来たんだ。ルイーゼ嬢が扇子を投げるタイミングに前に出る。私の評判を下げず、ドミルトン家に責任を取らせる方法。王妃から聞いた時驚いた。
「それでは公爵家ばかりが傷がつく」
と書けば、アーシャは、
「ルイーゼ様は、だいぶ評価評判を掘り下げてくれているので、このぐらいは当たり前になった落とし穴です。大丈夫。まだ浅い方だと、それにドミルトン家も早めにルイーゼ様を隠した方が良い」
と書いた紙。何枚も何回もやりとりをした記録は、私の鍵つきの引き出しに入っている。
「これも処分しなければいけないな」
アーシャの描く絵が好きだった。
楽しかった。
見ているだけで温かくなった。
鍵に手をかけて、鍵を差し込めなかった。これは裏切りか?
今日は、出来なかったと誰か笑ってくれないだろうか?
「いかがしましたか?」
とフェルナンドが様子を見に来た。
「いや、何でもないよ。今日は視察に行くんだったな」
「はい」
民の暮らしに笑顔があることの大切さを伯爵領の収穫祭で学んだ。
「何だ、畑の片隅で人集りが出来ているぞ」
と言えば、フェルナンドが
「手押し相撲か腕相撲でしょう。もうすぐお昼ごはんですので、賭けているのでは?騎士団でも腕相撲で、酒一杯は当たり前なんですよ」
と笑って言った。
誰もアーシャが考えたと知らない。勝手にドミルトン伯爵領の収穫祭で盛り上がった競技をあちらこちらで広がった。
「本当に欲がないんだよな」
「はい?」
「いや、何でもない」
いつも思う。たとえ自分の考えや意思だとしても誰かに伝え、誰かに頼り、一歩引いたところでいつも見ている。言ったら言いぱなしで最後はいない。
「だから、君をみんな知らない」
視察から戻ると、エリオンが待っていた。今日から、領地経営を勉強するのではなかったか?
「どうした、エリオン?」
「いえいえ、フランツ王子、今日は、何かゲームでもしませんか?それとも剣術の稽古でもしませんか?こんな時に頼ってくださらないなんて、一番幼き日からの学友として傷つきますよ!」
と少し怒った表情をした。
フゥー、
「せっかくなら、身体を動かしたいな。今日は、馬車に揺られて身体が固まっている。剣術の稽古長くなりそうだが、大丈夫か?」
「そうですね。年月の垢が溜まっておられましょう。全て汗と一緒に流し落としましょう。最後まで学友としてお付き合いさせて下さい」
「そうか…
頼もしいな、エリオン!」
私には、学友がいる。弟がいる。カイルが私を支えてくれた、寄り添ってくれた、カイルが私の本当の気持ちを汲んでくれて、優しく側にいたからこそ、私は笑えるようになった。
学園生活も悪くないじゃないか。アーシャが考えた挨拶運動、面倒くさいが私を守ってくれる鎧になった。第一王子として足固めになった。強力な家柄に後ろについてもらわずとも、自分の足で立てる。
かの令嬢がいなくたって…
私は大丈夫。
私は、大丈夫。
執務に追われる毎日だ。学ぶこと、外交、考えることが多すぎて、暇がないくらいだ。
ある日、ストック国から手紙が届いた。ルイーゼ・ドミルトン。
彼女は、傲慢で高圧的だった。
キツい顔立ちだったのが印象的だ。
私に対しての詫び状から始まった。婚約破棄の件の了承、そして私と過ごせた婚約候補者から婚約に至るまでの期間、自分が、他者を貶める行動をしてきたことや自分の言動の恥ずかしさなどが綴られていた。
最後にありがとうございますと書いてあった。
思えば、ルイーゼ嬢は、いつも真っ青なドレスを着ていた。そして真っ直ぐに私を見ていた。
ルイーゼ嬢は、知っていたんじゃないか?私の気持ちがここにない事を。
それを誰かに当たるのは違うが、もっとも酷い事をしたのは、自分ではないか?
この手紙を読んで初めて気がついた。ルイーゼ嬢をまともに見たことが無かったこと。相談も自分の心を見せたこともなかった。
アーシャには見せても。
顔は分かるのに、寄り添うこともしなかったんだ。ルイーゼ嬢は、手紙には、私への誹謗中傷などなく、私との思い出もなく、この数年をどんな気持ちで過ごしていたのだろう。
ハアー。
自分が今こういう状態になって見えてくる愚かさ。言葉にすれば自分勝手すぎた。
そう言えば、アーシャにも一度自分の気持ちを当ててしまった。気づいたかは別として。
婚約者が決まった。ルイーゼ・ドミルトン
そんな手紙を伝書鳩に乗せる必要はなかった。どうせわかることなのに。あの時、感情を抑えられなかった。あれは、私なりの悔しさだった。本当に恥ずかしい事をした。
「あれじゃ心配してくれって言っているだけだな」
カイルから手紙が届いたのも、少ししてからだ。相談なしの発表に驚いただろうし、アーシャとカイルの婚約も夢になったのだから。
今までカイルは考えないようにしていたのだろう。こんな急に色々動き、自分の思いとは違く進むことに、驚いたのだろうし、流されてしまったことを後悔したんだろう。
カイルは、その後、積極的に国王とやり取りをしているようだった。留学生として学園に来るのもそうだ。今まで、自分の意見を言わなかった。でもそれでは駄目だと気づいたから、情勢を見始めたのだな。まさかお祖父様ではなく国王を頼るところが、カイルの無邪気というか、信じやすいというか。もし国王が側妃に話したら、また命を狙われたかもしれないのに。
今回の婚約申込みの速さは、準備していたのではと思うほどだった。
一度だけ私に確認しにきたが、言葉とは違ってカイル自身、譲らない決意が見えた。弟だが、同じ歳。
あいつの生き方の方がいいなと思った。
思ってしまった。
ある日、学園の理事長が執務室に入ってきた。
「私は、君達の叔父にあたるレイリー・ガレットです。ずっと君には無理をさせていたね。王弟として、近々発表される。君の執務も一部私に動く予定だから」
なんとなく、子供の頃会ったことがあると思っていた。確か、数回一緒に食事をしたことがあるレイリー姫…
お祖父様も国王も何かを守るために犠牲にしている何かがある。それを無情と言うのか。
私にその覚悟があるのだろうか。
カイルとアーシャの事を思い、そしてまだ飲みこめないでいる私に、叔父は、背中を擦り、その温かさに涙が流れた。
「大丈夫だよ。ゆっくりでいい。君は、若いのだから」
と優しく言った。
この思いを言葉にする事は出来ない。そして許されない。
だから私の愛する二人が一番幸せになるんだと言葉を飲み込んだ。
夏休みが終わっても、私はまだ引き出しの鍵を開けれなかった。
175
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇
夜桜 舞
恋愛
「私がどんなに頑張っても……やっぱり駄目だった」
その日、乙女ゲームの悪役令嬢、「レイナ・ファリアム」は絶望した。転生者である彼女は、前世の記憶を駆使して、なんとか自身の断罪を回避しようとしたが、全て無駄だった。しょせんは悪役令嬢。ゲームの絶対的勝者であるはずのヒロインに勝てるはずがない。自身が断罪する運命は変えられず、婚約者……いや、”元”婚約者である「デイファン・テリアム」に婚約破棄と国外追放を命じられる。みんな、誰一人としてレイナを庇ってはくれず、レイナに冷たい視線を向けていた。そして、国外追放のための馬車に乗り込むと、馬車の中に隠れていた何者かによって……レイナは殺害されてしまった。
「なぜ、レイナが……あの子は何も悪くないのに!!」
彼女の死に唯一嘆いたものは、家族以上にレイナを知る存在……レイナの親友であり、幼馴染でもある、侯爵令嬢、「ヴィル・テイラン」であった。ヴィルは親友のレイナにすら教えていなかったが、自身も前世の記憶を所持しており、自身がゲームのモブであるということも知っていた。
「これまでは物語のモブで、でしゃばるのはよくないと思い、見て見ぬふりをしていましたが……こればかりは見過ごせません!!」
そして、彼女は決意した。レイナの死は、見て見ぬふりをしてきた自身もにも非がある。だからこそ、彼女の代わりに、彼女への罪滅ぼしのために、彼女を虐げてきた者たちに復讐するのだ、と。これは、悪役令嬢の断罪から始まる、モブ令嬢の復讐劇である。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる