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カレンの恋心
しおりを挟む「カレンちゃんは一体いつになったら素直になるんでちゅかねぇ~?」
カレンの親友、マーガレットは、生後数ヵ月の愛娘をあやしながらそんなことを言う。
ママの言葉に「うー」と返事をする親子のやり取りを、カレンは横目で見ていた。
「さっさと告っちゃえばいいのにさ~? 『グレン、あなたのことがずっと好きだったの…!』って。ほら、言ってみ?」
「す……す……す……、~~~言えないっ!」
「あーあー、このカレン、グレンに見せてやりたいわぁ」
___そう、カレンはグレンのことが好きだった。
気付いた時にはもう、落ちていた。それも厄介なことに、後戻りできないところまでずっぷりと。
もちろんカレンだって、グレンが女ったらしで最低なクズ野郎だということは百も承知である。だけど、好きな気持ちはどうしたって止めることができなかった。
「マーガレット……私、どうしたらいいの…?」
グレンはカレンをただの女友達としか見ていない。誰彼構わず、たくさんの女の子と関係を持つ癖して、一番側にいるカレンには絶対に手を出して来ないのがその証拠。そういう素振りを見せたことなど、今まで一ミリたりともなかった。
(こっちはいつそういう雰囲気になっても困らないよう、色々準備してるっていうのに…!)
「『今日の私、すんごい下着付けてるの。見る?』って誘えば?」
「娘の前でなんてこと言ってんの!?」
純真無垢な赤子が、真っ直ぐな瞳でカレンを見つめてくる。居たたまれないことこの上ない。
最初の頃はもっとまともな返しだった(気がする)のに、カレンがいつまでもウジウジしているせいで、最近ではあけすけに揶揄ってくるようになってしまった目の前の親友。
全く持って教育によろしくない。母親としての自覚はあるのだろうか。
「あぁ…私のせいで変な大人になったらごめんね…」
「いやいや、その前に告んなさいよ」
このままではカレンの恋がどうにかなる前に、赤子の成長の方が早いかもしれない。___本気でそう思うほど、カレンの片想い歴は長かった。
いつまでも行動に移せず、足踏みばかり。好きな人が他の女の子と遊び回っている姿を見ていることしかできない自分に嫌気が差す。なのにどうしてもあと一歩が踏み出せないのは、グレンが最後には自分のところへ帰って来ると知ってるからだ。
ただの飲み友達だろうと、このポジションだけはカレンの特別だから。たとえそう思っているのが、自分だけだとしても___
結局のところ、カレンは臆病者なのである。
「ねぇねぇカレン。ちょうど今、この街によく当たるって噂の占い師が来てるそうよ?」
「占い師…?」
突拍子もないマーガレットの発言に、カレンは嫌な予感がした。
「せっかくだから、行ってみましょうよ!」
「それ、マーガレットが行きたいだけじゃ…?」
「ほーら、早く行きましょ!」
赤子を連れているというのに、マーガレットの行動力はすごかった。
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