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マーガレットとグレン
しおりを挟む「あ、やっと来たわねグレン! 待ちくたびれたんだけど!?」
日が暮れる刻限、公園のベンチでマーガレットはグレンが来るのを首を長くして待っていた。
全力疾走でやってきたグレンは、酷く困憊した様子だ。
「ちょ、マーガレッ…おまっ……人を呼び出しといて、それかよ…! ゲホゲホッ、ゴホッ」
「なぁにあんた、ちょっと走ったくらいで息切れ? 弛んでるんじゃないの? それで自警団所属とか、笑わせんじゃないわよ!」
「前から思って…けど、なんでそんな俺に対してアタリ強ぇんだよ…? はぁ…」
汗を拭い、乱れた呼吸を整えたグレンはマーガレットに物申す。
「つーか、マーガレット! 職場に果たし状を送ってくんじゃねぇ! 軽く脅迫状だったぞ!? 紛らわしいんだよ!! 呼び出すなら普通に呼び出せ!」
「あんた馬鹿なの? 普通に呼び出したら逢引になるでしょうが! そんなの死んでもごめんよ! 私には愛する夫と! 娘が! いるんだから!!」
「誰もそんな勘違いしねぇよ!」
「どーだか。回り回って変な噂がカレンの耳に入らないといいわねぇ?」
「ぐっ…」
マーガレットとグレンの仲はそれほど良くなかった。
けれどマーガレットは知っていた。グレンがカレンの話題に弱いことを___
「時間が惜しいから要件だけ言うわ。頼みがあるの」
「マーガレットが俺に…?」
「何怯えてんのよ、失礼ね。あんた後で私に泣いて感謝することになるんだから…」
「は…?」
「この子を預かって欲しいの」
マーガレットは持参してきたバスケットに被せてあった布を剥ぎ取り、中からもこもことした物体を取り出した。
グレンはそれを見て、目を瞬かせた。
「猫…?」
「この子カレンの飼い猫なんだけど、カレン今、実家に帰省してて」
「え、猫飼ってるとか初耳…てか、帰省…?」
「うちで預かる予定だったんだけど、あんたが面倒見てやって」
「ん??」
「名前はレンちゃんよ」
マーガレットは口早に要件を吐き捨てると、グレンの胸に猫、もといレンちゃんを押し付けた。
押し付けられたら受け取るしかないグレンは猫を抱き上げる。猫は大人しくグレンに抱かれた。
「いい? その子をカレンだと思って接しなさい。いいわね?」
「は…はあ!?」
「じゃ、しばらくよろしく!」
「え、マーガレット、待っ…」
マーガレットは風のように去って行った。
女に背を向けられたことはあれど、猫を置いていかれたことがないグレンは、しばらく立ち尽くしてしまうのだった。
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